第13話 娯楽で溢れている街 その1
「ふふーん、どうですかこれ。凄くないですか? 」
次の街へ行く馬車の中、ティアはニコニコしながら拳銃をラックに見せる。その拳銃には可愛らしいウサギが描かれていた。
「ティアのテンションが上がるならいいんだけど拳銃に描くもんじゃないだろ」
「いいんですよー、さっきの塔の街でお金もらえたんですから武器もグレードアップです。えへへ、これ私がデザインしたんですよ、可愛いなー」
ティアは拳銃に頬ずりをしている、彼女のことを知らない人が見たら即危ない人認定をするだろう。
「それにさっきの戦いでも感じたんですけど、この先私はもっと強くならなければいけません。ガイラナイラさんクラスの人達と渡り合うためには頑張らないといけないのです」
「その意欲は素晴らしいな。銃の腕を磨くなら練習あるのみだ、他にも銃がない時のとっさの格闘術も必要だな」
「格闘術はちょっと厳しいかも、魔法ならなんとかなりそうですけど。誰か凄い師匠でもいれば魔法ももうちょっとできるようになるんですけどね……」
ティアは悲しそうな目をして手のひらから水を湧かせる。チョロチョロと出てくる水は、彼女の初級水魔法『アクア』によって生み出されたものである。
「師匠か、残念だが俺は魔法は全然できないな。知り合いの魔法使いだとアクアリーテがいるが……」
「アクアリーテさんは勇者パーティの一人で王都一の魔法使いなんですよ! その人に教えてもらえればきっと私も隕石を落としたり、海を真っ二つに割ったり、昼を夜に変えることができるはずです! 」
「大袈裟だな、アクアリーテは金さえ払えば教えてくれると思うが相当な大金を要求されるだろう。時期を見たら頼んでもいいかな」
「そんなにお金にうるさい人なんですか? 」
「まだ十六歳なのに玉の輿を狙って王都の金持ちの爺さんとどうしたら結婚できるか考えてるほどだからな。あれは相当だぞ」
「ほへー、それはすごいですね。でも逆に考えればお金があればすぐにでもやってくれそうですね。頑張りましょう! 」
ティアは自分の新しい能力強化のための目標ができたようで気合十分な様子だ。
「やる気満々なのはいいけど、ほどほどに力を抜くのも大事だぞ。なんでも完璧にやろうとすると窮屈になってしまうからな」
「そうですね、その方が物事は続きやすいといいますから。毎日継続するように少しずつやってみます」
そう言ってティアは近くに生えていたリンゴの木に向かって銃を発砲するが弾は明後日の方向へと飛んでいってしまった。その結果にティアが不貞腐れていると馬車が急停止する。
「どうかしたんですか? 」
「いや、見慣れないものが見えまして、お客さんはあれなにに見えますか? 」
「……俺には街に見えるな」
ラック達が今まで通っていた道の横には森があるのだが、その森の奥に大きな建物の頭がいくつかとびだしていたのだ。それは多数の住民がそこにいることを示している。
「確かに建物らしきものがありますね。でも何がおかしいのでしょうか? 」
「ティア、あそこは地図上では何もない場所のはずなんだよ」
「えっ!? そうなんですか? 」
「はい、自分は何回もこの道を馬車で通っていますが、あんなものを見たのは初めてです」
御者は自分の目を何回も擦って目を細めてみるが状況に変化はないようだ。彼の瞳には建物の屋根らしきものがいまだに映っている。
「よし、それじゃあ様子を見に行ってみるか。ティアはどうする? 」
「もちろん行きます! こんなワクワクする事件、見過ごすわけには行きませんよ! 」
「わかった、それじゃあ俺達はここで降りるよ。馬車は俺達を置いてそのまま次の街へ行ってくれ」
「いいのですか? 街に戻って兵士を連れてきて一緒に向かってみては? 」
「一番美味しい思いができるのは一番乗りをするやつなんだ。兵士を呼ぶのは勝手にしてくれてもいいが、出来るだけ遅く頼むぜ」
ラックがそう言うと御者は不安そうに頷いてから馬に鞭を入れて道なりに進んでいった。
「えへへっ、森の中に突如現れた謎の建物。これは魔女か何かの仕業に間違いありません。ここで魔女直伝の技を教わって魔法少女ティアが爆誕しますよ」
「ティアは妄想だけは一丁前だよな。とりあえず何が起きるかわからないから俺から離れずについてこいよ」
「おーけーです! 」
ラック達は森の中進んでいく、人通りがないため道というものがないものの、できるだけ草木の成長が遅い場所を選んで一歩一歩前へ行く。
そして森を抜けると彼らの目の前には街が見えた。十メートル程の高さの白い壁に囲まれた街で、壁の向こうには煉瓦造りの家が何軒か建っている、街の入り口には門番らしき兵士が立っているのが見えた。
「こんな森の中に街があるなんていったいどういうことだ? 」
「でもでも見た感じは普通の街ですよ? 」
「普通なのが余計に怪しい、何かありそうな気がする。注意して進もう」
「はーい」
ラック達は街の入り口の門まで行くと、そこにいた兵士が話しかけてくる。
「ようこそ、ここは『娯楽の街 エデン』です。お客様はお二人でよろしいですか? 」
門番の美しいサファイヤ色の瞳がきらりと光るとティアが黄色い歓声をあげる。
「ほへー、かっこいい! 」
「そうか? ティアはこういうやつが好きなのか? 」
「えー、メチャクチャかっこいいじゃないですか! なんか胸がドキドキしてきませんか? 」
「ふーん、ティアの好みに口出しはしないけどさ。それじゃあ二名でお願いします」
ラックがVサインを門番に見せると、門番は規則正しい敬礼をする。
「それでは楽しんでくださいませ、夢と希望と娯楽に溢れた世界が貴方達をお待ちしております」
門番の合図と共に街の入り口が大きく開かれた。ティアは敬礼を続ける門番に手を振りながら街に入っていく。
「よっぽどティアはアイツのことを気に入ってんだな」
「いいじゃないですか! なんか全てがクールで良いですよ! 」
「へー、そーですか」
「……あれ、もしかしてラックさん嫉妬してます? いやー、私ったら罪作りな女の子ですね」
「なぜそんな話になる、別にそんなんじゃないし。なぜ俺があんなのに嫉妬しなきゃいけないんだよ」
「またまたー、照れちゃってますねー」
ニヤニヤするティアを無視するように歩くスピードを早めるラック。彼は入り口の門をくぐり抜けて数歩進むと幽霊でも見たかのように呆然とした表情になる。
「……どういうことだよ一体」
「す、凄すぎます……」
彼らの視界には、それまでの街では見ることができない数々の技術が飛び込んできた。
四つの車輪を持つ空飛ぶ鉄の車、天へ届くかと思うくらい高い建物の壁面には食べ物の映像が美味しそうに自己主張をしている。
そして、空中にはさまざまな矢印が浮かんでいてどこにいけば何があるのかを教えてくれているし、透明なガラスで作られている地面を見るとカラフルな魚達が楽しそうに足元を泳いでいた。魚達は磁石に吸い寄せられるように人懐こくラック達の足を支点に回遊している。
「これが科学の力というやつなのでしょうか? 」
「このレベルになると科学なのか魔法なのかの判断もできない。おそらくは科学がメインだとは思う。街の外からはこれが見えないように妨害システムでも稼働しているんだろう」
生まれてから一度も見たことがない光景を目にしてラック達が辺りを見渡していると、空から一匹の青い鳥が降りてくる。
「ようこそエデンへ、ワタクシお二人をご案内いたします、ハートと申します。どうかワタクシの名前をお間違えないよう、間違えてしまうと誤ハートになっちゃいます、御法度、なんちって」
「鳥が喋りましたよ!? 」
「コイツは機械だな、羽毛もよく表現できているが尻の辺りに空気の噴出口がある」
「いやん、エッチなお方ですね。ワタクシにはよいですが、エデンのキャストへの性的な言動や行動は謹んでいただくようお願いいたします」
「ですって、エッチなラックさん」
「この鳥、うぜえな……」
カワセミのような美しい色をしたその鳥は透き通る声で鳴くと二人掛けのソファーが宙を飛んでラック達の元へやってくる。
「エデン内の移動はこのソファに座っていただければ目的地まで快適に移動いたします。エデンには全ての娯楽がございます、身体を癒す身体的な娯楽や精神のための娯楽。エデンなら日々の社会の重い鎖から貴方様達を解放させることができるのです」
「それじゃあ、とりあえず楽しいのでお願いします」
「ご指示ありがとうございます、美しいマドモワゼル。それではご案内いたしますが、その前にこのネックレスをおつけください」
ハートが合図を出すとソファーの肘掛けからピンク色のネックレスが二人分出てくる。ネックレスの中央には黒いデジタル画面で『0』という数字が表示されていた。
「わー、綺麗なネックレスですね。この数字はなんでしょうか? 」
「それは後のお楽しみでございます。エデン内ではそのネックレスを身につけていただくようお願いいたします。貴方様達がエデンへの来訪者であるということを示す大切な身分証明書なのです」
「爆弾とか仕込んでなきゃいいんだがな。見た感じはそんな感じじゃないけど」
「お客様に爆弾なんてお渡しいたしませんよ。そんなことをしたらワタクシ焼き鳥にされて出荷されてしまいます」
やけに表情豊かにペチャクチャと喋るハートのことをうるさい奴だなと思いながらもラックは渋々ネックレスつけた。
「さてそれでは準備ができたようですので出発いたします。移動中も見どころがたくさんありますので楽しんでくださいね」
ソファが地面から少しだけ浮いて移動を始める。スピードは人が軽くジョギングをするくらいの速さで心地よい風を感じることができた。
「ねえラックさん、あの花すごく綺麗じゃないですか。虹色に光ってますよ」
「虹色の花? あれは青色じゃないか? 」
「説明いたしましょう。あの花は『チェンジンフラワー』、見る人が最も美しいと感じる色に見えるのです。ですから見る人によっても、そしてその時の気分によっても違う色に見えるのです」
「ふぇー、凄い花なんですね。確かにそう言われると少し色が赤っぽく変化して気がします」
「それはマドモワゼルの気持ちが昂ってきたのでしょうね。気分を盛り上げるために赤く見えるのです。そして何を隠そうこのワタクシにも同じ仕組みがあるのです。ワタクシの声はその人が一番安心できる声に聞こえるんですよ。えっへん」
ハートが鳥特有の大きな胸を膨らませるのを見てラックはティアに尋ねる。
「ティアはコイツの声どんな感じに聞こえる? 」
「私は優しい大人の女性の声に聞こえます。ラックさんはどうですか? 」
「なんか胡散臭い男の声だな、なんか腹の中に隠し事を持ってそうな奴」
「ラックさんはそんな声が安心できるんですか!? 」
「まあニコニコして爽やかな聖人みたいな奴よりかはよっぽど信用できるな」
「……ラックさんは変わってますねえ」
ティアは眉を顰めて首を傾げる。そんなこんなしている間に一行は壁に派手なイラストが描かれている高層ビルへと入っていった。
「さて、まずはお二人の情報を元に楽しめそうな遊戯場にやってきました。マドモワゼルは最近射撃に興味をお持ちですよね? 」
「えっ、なんでわかるんですか? 」
「ネックレスのおかげです、そのネックレスはつけている人の好みや趣味などを調べることができるです。これによりエデンの最新技術で計算をして、ピッタリの娯楽を提供いたします」
ビルの中に入ると真っ白で無機質な部屋に出る。部屋の手前では受付をするために、綺麗な服を身につけたキャストが礼儀正しく立っていた。ちなみにキャストの胸には大きな膨らみがある。
「いらっしゃいませ、お客様」
「おー、結構デカいな。どことは言わないけど」
「はん、こんな胸作りものですよ。不自然なくらい大きいですもん」
「ティアは自分が小さいからって僻んでるな」
「ち、ちがいますし」
「お二人ともどうかキャストへのセクハラは慎んでくださいませ」
ハートの注意を受けて頭を下げた二人。受付のキャストはそんなやりとりもさらりと流しつつ、ティアに向かって説明をする。
「こちらは最新式模擬射撃ゲームができます。次々に出てくる敵を倒すストーリーモード、二人で互いに戦うバトルモード、世界中の人と対戦するオンラインモードがあります。残念ながら現在はオンラインモードは使用不可ですが、他の機能は問題なく作動しております」
「どうしよ、ラックさんとバトルしてもいいけど勝てそうにないです」
「ならストーリーをすればいいじゃないか、俺は見てるからさ」
「それだとラックさんはつまんなくないですか? 」
ティアが大丈夫かな? と言った表情でラックを見ると、ハートが室内に響く声で話し出す。
「ラック様の好みは賭け事ですよね。実はこの射撃ゲーム、プレイヤーがどこまで進めるか賭けをすることができるのです。どうでしょうか? 」
「お、なかなかわかってるじゃねえか。俺はそれにさせてもらうか、それじゃ、頑張れよティア」
「ってことは私の活躍によって賭けの勝ち負けがかかっているわけですね。分かりました頑張ります、ドキドキ」
ティアはガッツポーズした後、受付から遊戯用の銃を受けとり白い部屋の中央に立つ。すると地響きと共に壁が移動をして簡単な迷路が作られ、白い壁に映像が映される。こうしてティアはゲーム用の迷宮の中に閉じ込められることとなった。
『第一ステージはドラゴンの迷宮です。手に持っている銃でホログラムのドラゴンを討伐して無事に迷宮を脱出してください』
「よし、やってやりますよ。ドラゴンハンターティアが世界を救います! 」
やる気満々のティアは次々に襲いかかってくるドラゴンを倒していく。時々危ないところもあったが運よく攻撃をかわし、またティアの攻撃は幸運なことにクリティカルヒットという場面が多々あった。
もちろんホログラムであるため命の危険はないものの、その迫力は十分で少女にとってはワクワクの大冒険だった。こうしてなんとかティアは迷宮脱出に成功する。
「やったー! 無事にクリアできましたよ、ラックさん見ててくれましたか? 」
「……なんで成功しちゃうんだよ」
「ラックさん!? まさかダメな方に賭けちゃったんですか!? 」
「だって確率的に考えたらそうじゃないか? 」
「もー、信用してくださいよ。次は私が成功する方にかけてくださいね」
「はいはい、わかったよ」
そして第二ステージの『ゾンビパラダイス』で、ティアはホログラムのゾンビ達に無惨にやられるのであった。
「ふえーん、ダメでした」
「惜しかったな、急に敵が出てきた時に照準を合わせるのはキツいもんな。まあ見てる俺もなかなか楽しめたよ」
「外からは楽しく見えますけど私はかなり怖かったんですよ、だって無駄にリアルなんですもんゾンビ」
ゾンビに迫られる恐怖に半ベソをかいているティアをラックが慰めていると鳥型ロボットのハートがパタパタとやってくる。
「どうでしょう、楽しめましたでしょうか? 」
「はい、とても楽しかったです。銃の練習にもなって一石二鳥ですね」
「それは良かったです、それでは受付で精算をして代金を払ってください」
「えっ、お金取るんですか!? 」
ラック達がビックリしているとハートは明るく丁寧な口調で返答をしてくる。
「もちろんです、お金あっての娯楽でございます。お客様が楽しんだ分の代金を頂くのもワタクシ達の仕事ですので、それでは受付にネックレスをお見せください」
「ネックレスですね、あれ? 私のネックレスの数字が『98』になってます」
「俺は『53』だな、これはどういうことだ? 」
二人はお互いのネックレスに表示されている数字を見合いながらハートに尋ねる。
「それはお客様がどれだけ楽しんだかを数値にしたものでございます。楽しめば楽しむほど数字は上昇し、支払っていただく代金も上がります」
「ってことはつまんないと思ったら払うお金は少なくていいってこと? 」
「マドモワゼル、その通りでございます。つまらないものを提供してお金を得るなど言語道断、面白いと思ったからこそその分だけしっかりお金をいただくのがこのエデンのポリシーなのです」
「なるほど、結構合理的な考えなんだな。楽しんでる人が多く払うというのは納得ができる」
うんうんと頷いているラックとは反対に不安そうな顔をしているティア。
「でもあまり高い金額だと怖いですね、一応お金は金貨100枚あるからなんとかならと思いますが……」
「すまん、そのうちの50枚はさっきの賭けで使っちまった」
「ラックさん!? なにやってるんですか!? 」
「いやー、俺の予想は当たると思ったんだけどなあ。うまくいけば二倍になったんだけど」
「……今度からラックさんが自由にお金を使えないようにお小遣い制にしますからね」
「マジですか? 」
「マジです」
ひょんなことから財布の紐を握られることになってしまったラック。放っておくと全てを賭けで使い果たしてしまうのでこれは仕方がないことなのかもしれない。
「それでは精算を始めます。ティアさんはお手持ちの金貨1枚の半分、ラックさんはさらに半分で大丈夫です」
「ということは合わせて金貨四分の三枚ということですか、細かいのを持ってませんがお釣りとかあるのでしょうか? 」
「大丈夫ですよ、細かくしますので」
受付のキャストは手に持ったレーザー銃でティアが出した金貨を綺麗に四等分した。
「……はは、ビックリしました物理的にやっちゃうんですね」
「そうですね、物理的な支払いですとこうなってしまいます。それではまたのご来店をよろしくお願いします」
ティアが小さくなった金貨をぼんやりと見つめているとハートが呼びかけてくる。
「お支払いありがとうございます。初めての精算で戸惑ってしまったところもあると思いますが無事に終わってなによりです」
「はい、楽しんだ分だけ払うというのは分かりましたが、実際どれだけ払うことになるかわかりやすい目安があるといいかなと思いました」
「それならございますよ。このような感じでございます」
ハートの目が光ると空中に映像が投影される。
模擬射撃ゲーム: 大人銀貨1枚、子供銀貨4枚
宇宙遊泳アドベンチャー: 大人銀貨3枚、子供銀貨10枚
最高な夢体験: 大人銀貨2枚、子供銀貨6枚
贅沢食事フルコース: 大人銀貨4枚、子供銀貨10枚
「こんな感じがおおよその目安でございますね」
「あれ、子供の方が料金が高い気がするのですが? 」
「そうですよ、何かおかしいでしょうか? 」
「いえ、子供は大人より安いのが普通かなと思ってましたので」
ティアがそういうとハートはゲラゲラと笑いながら答える。
「ははは、面白い冗談でございますね。子供の方が大人よりも物事を楽しむことができますよね、なら当然楽しんだ分多く払うのは当然じゃありませんか? なぜ楽しんでない大人が多く払う必要があるのです? 」
「だって子供はお金を稼げないじゃないですか? 」
「それはエデンでは関係ありません。楽しんだら楽しんだ分払う、それがエデンのポリシーです。大人も子供も関係ございません」
「そこんとこ徹底してるよな、この街」
「当然でございます、人に喜んでもらうことを目標にするからこそ良い娯楽は生まれます。つまらないのにお金を頂くなんてことをしたら娯楽は衰退をしていってしまいますからね」
ハートは一通り言いたいことを言うとソファの背もたれの上に止まって呼びかける。
「それでは体を動かしましたので今度は食事はどうでしょうか? 素晴らしいご馳走をご提供しますよ」
その提案を受けてラック達はソファに座ると再び移動が始まる。移動の最中には蝶々の集団が美しいダンスをしつつもその模様を利用して映画の宣伝をしていた。
ラックは自分達以外に誰もいない道路を見てハートに確認をする。
「なあ聞きたいことがあるんだが、俺達以外に人はいないのか? 」
「はい、エデンは昔ある理由で閉鎖してしまっていたのですが、本日から再開をいたしました。お二人は再開からの初めてのお客様です、なんと運が良いことでしょう! 」
「運がいい、ね」
「そんな怪しまなくても、ラックさんだって時にはいいことだってありますよ」
「まあ今はそういうことにしておいてやるよ」
美しい光景に華やかな音楽がなる一方、彼等以外無人の道路をのんびりと進んでいくのであった。
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