6
あんなことがあった次の日だから、いつもより遅く公園に向かった。話を聞きたい気持ちは大きい。でも、怖かった。本当のことを知って今までの関係が壊れることも、自分が傷ついてしまうかもしれないことも。公園には彼がいた。私より早く来ていた。
「早かったんだね。」
「いつ来てもいいように待ってたんだ。話をしなくちゃいけないから。」
「昨日のこと……だよね。」
彼は静かに頷いた。覚悟を決めなくてはいけない。今までの関係が壊れたとしても、嘘で塗り固めた関係よりはいいだろう。
「僕はヤマグチさんのことが見えているんだ。はっきりと。」
私の目を見て言っている。本当に見えているんだな。
「やっぱりそうなんだ。」
「今まで黙っていてごめん。こうしなきゃ関われないと思ったんだ。」
「大丈夫だよ。驚いたけどさ。」
でも、なんで隠してたんだろう。見えてると言っても大丈夫なはずなのに。
「実はね、僕も透過症なんだ。」
「え……?」
なんで……お互いに見えてるの?そんな……同じ人がいるなんて。
「僕の親は医者だって話はしたよね。僕が透過症にかかった時色々調べてくれてて、見えなくなるだけで存在がなくなるわけではない僕らは、普通の人には見えない。でも、同じ症状の人同士なら見えるんじゃないかって仮説が立てられたらしくて、実際はどうかなんてわからないから、仮説のまま終わってしまったらしいんだけど。」
「そうなんだ……だから、見えてるってわけか。」
頭が追いついていなかった。見えているというだけで驚いていたのに、今度は同じ病気にかかっていると聞かされて、もう頭がパンクしそうだ。
「でも、シロヤマくん服着てるよ。」
そう、制服を着ている姿も見ている。
「これは、なぜなのかわからないけど、服を脱ぐ前に来ていた服が投影されているみたいなんだ。」
そうか、だからあの日今日はいつもよりかわいいなんて言ったんだ。おしゃれした服が投影されていたから。目が合った気がしたのも全部繋がっていく。頭が整理されてきた。
「私が同じ透過症だってなんで気付いたの?」
「それは……」
答えにくいことだったのか少し止まってしまう。
「僕は前に、透過症の人と会っているんだ。」
「え……あ、前に言ってた友だちのこと?」
「そう。今はいないその友だち。」
会ったことがあったから、透過症の人がどんな動きをしているか知っているから、私に気付いたんだ。歩き方とか人を避ける動きとかで。
「全部話すよ。僕の隠していた過去の話を全部。」
「聞きたい。」
知りたい。全部を知って理解したい。なんで同じ透過症かを隠していた理由も。
「少し長くなるんだけど。」
彼がゆっくりと話し始めた。
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