第二章 また動き始める
第9話 また近づき始める
【また歌の練習付き合って】
朝起きるとそんなメッセージが届いてた。無論差出人は沙奈だ。
【了解。また日曜日でいい?】
大体空いてる日なんてそのくらいしかない。
【オッケー。前と同じ時間で今度は服装、髪型ちゃんとしてよ】
マジか………。時間指定そのままに今度は服装指定までしてきやがった。俺がファッションセンスの欠片もないっているのに。まぁ前回はたしかに暴挙に出たが…でもしょうがない。あのときは寝起きで時間もヤバかった。だからそのへんの服を着たって訳だ。ついでに髪型も直してなかった。
【善処する】
嘘はつけない性格だから、これはしょうがない。
沙奈がゆにと知ってしばらくが経った。俺がゆにさんのリスナーであることも沙奈は知っている。
それでいて尚このメッセージを送ってくるということは「ゆに」ではなく「沙奈」として扱ってくれと言うことなのだろう。だから俺は「沙奈」に今までどおりの返信を送った。
リスナーである前に俺は沙奈の幼馴染だ。だからこのくらいのことは当然だ。
と、また返って来てた。
【服装、髪型】
恐ろしきかな…。
【はい】
その威圧の前に俺はその一言を述べる他なかった。どうしようか。まともに外に行ける服ならある。じゃあそうだな…うん、俺が早起きすればいいだけの話じゃない?
じゃあその方向性で行こうか。よし、決まり。で、今日も頑張ろう!
朝一で私は亮太にメッセージを送った。もちろん亮太が私のリスナーであることはわかってる。でもまぁ、これは亮太の仕事ではと思ってそれを送った。
【また歌の練習付き合って】
あれから練習したんだし、なんとか見返してやりたかったからだ。決して亮太の他に頼れる人が居なかったわけではない。
ただ、自分の中での1番の回答が亮太だっただけだ。
【了解。また日曜日でいい?】
まぁ大体空いてる日ってそのくらいしかないもんね。
【オッケー。前と同じ時間で今度は服装、髪型ちゃんとしてよ】
流石に服装くらい…いや、あのときの状況全てを含めせめて髪型だけでもなんとかしてほしい。と、言うか亮太は恥ずかしくないのだろうか?
【善処する】
善処って………。多分あれだね、前あったときも時間がどうこうって言ってたしそれなんだろうね。でもそんなの早起きすればいいじゃん!なんでそうならないのさ?そういう威圧の念を込め一言。
【服装、髪型】
全くもう…でもそういうところが亮太らしいといえばらしい。時間はきっちり守ってくれるんだけどなぁ。なんで服装まで手が回らないのかな?と、言うより早起きの週間くらい身につければいいのに。時間ギリギリだからあんなことになるんだよ。と、返信来てた。
【はい】
…こういう威圧したら肯定的になるところ、ちょっと可愛いと思ってしまう自分がいた。
そうして日曜日。配信は何度か挟んだ。そこでは歌枠のことは話さなかった。まぁ予定にすら入ってないのでいいかと思っての判断だ。
そして今、8:30。私は約束の場所で亮太を探していた。
「どこだろ?」
「お、沙奈!」
「あぁ、亮太。」
ほう………前よりかはちゃんとしている。ちゃんと外行き用の服あるんじゃん。髪もちゃんと整えてるしさ。…まぁもさいことに変わりはないけど。
「それじゃ、行くか。」
「う、うん!」
直接あっても亮太は「夜空ゆに」について聞くことはなかった。まぁこちらとしてもやりにくくなるのでそうしてもらえたほうが有り難い。
以前の同じように慣れた道を歩く。高校生の頃の思い出にも浸れるので個人的にはかなり好きだ。まぁ、高校生の頃と言ってもたった半年ほど前のことなのだけれど…。
また沙奈とここに来るとは思っても見なかった。まぁ練習ならしょうがない。俺もそのくらい付き合ってやる。頼られた側の人としては当然のことだろう。
にしてもやっぱり沙奈は努力家だ。まぁ高みを目指すのであれば、凡人にとって努力は欠かせない。俺は沙奈の努力する姿を今までも見てきた。そしてなによりこれから先だって見続けていたい。今の俺の夢…じゃなく欲しているものがそれだ。夢は…まだわからないからがむしゃらに頑張るしかない…。
そうしてそれほど立たぬ間に目的地についた。時間は以前と同じ4時間だ。
今回も今回とて俺はアドバイス係で呼ばれている。歌うつもりは無い。そしてまず沙奈が一曲歌い終わる。以前よりだいぶマシ。と、言うより「沙奈」として歌うのであれば全然アリ。今までを知っているのですげー頑張ったなってなる。ただ問題もある。
「ゆにとしてはまだキツイ。」
「やっぱり…?」
「あぁ、ちゃんとキャラに入り込んで歌う…って言っても俺もやったことないからわかんないけど、自分の思い描くゆにを具現化させて歌う感じかな…?」
「…?」
「うーん…あぁ、自分をゆににする。」
「亮太、凡人にもわかるように。」
「うちに秘めるゆにに語りかけて出てきてもらう…?」
「はぁ、馬鹿。」
え?なんか悪いこと言った?
第10話 彼女みたいな
「沙奈…何を思ったんだ?」
待機画面を見ながら独り、そう呟いた。彼女配信なんて。俺が見ていることはわかっているはずだろ?まぁ…聞くけどさ。
『はい、今日もお疲れ様。』
あ…敬語じゃなくなってる。まあでもまだ彼女というより沙奈っぽい。素に近い感じだ…。
『それじゃあ今日は1日あなたの彼女なので………おいで?』
ぁ………。
『いつも頑張ってて偉いね。でも今は頑張らなくていいよ?いっぱい甘えていいからね?』
あ、そうだ…あくまでも台詞だ……。危うく真に受けそうだった。そうだ今の沙奈は「ゆに」なのだ。
これはあくまでも台詞だ。
そんなことを考えていては楽しめないのだが………ゆにと沙奈が入り混じって頭の中で収集がつかなくなる…。だから自我を保て俺…。
『いつ寝ちゃってもいいけどさ…私はもっといちゃいちゃしてたいな?』
待って!タイム!反則!………何がヤバいって…もう一度言うが沙奈は俺が見ていることを知っている…。それがなんというかこう…複雑な今の心境を生んでいるのだ。
気を抜いたら多分…堕ちる。
『ねぇ、今日はどんな日だった?』
そんな沙奈の囁き声がイヤホンから聞こえてきた。語りかけるような感じて………なんか本当に今この場に沙奈がいて、俺に語りかけてるみたいな………じゃない!今喋ってるのはゆにとしての沙奈だ!
本当に危ない…次会うときの空気があまりにも気まずすぎる。流石にそれは回避しなければいけない。
『そっか…ちょっと落ち込んじゃうことがあったんだ…。そういう日もあるよね。あぁ、うまく行かないなぁとか思ったりしてさ。でもそう思えるのって頑張っている証拠じゃない?』
にしても沙奈…ポジティブ思考うまいな…。確かに何かに打ち込んでないと悔しがることなんてないもんな。いつも間にそんな技術を身に着けたのやら…。こうやって元気づけられる人もいるのだろう。俺だって…その1人だ。
『よく頑張ったよ。偉い偉い。』
そう言って頭をヨシヨシされるような音も聞こえてくる…。小さいときにもされたことあったっけ?懐かしいな。たしかあのときは…………あれ?あのとき何がどうなって頭を撫でられたんだっけ?うーん…忘れた。しょうがない保留。
『もう大丈夫だからね。いつも側にいてくれてありがとうね。』
そうして背中を優しくトントンと叩く音も聞こえてきた。
「もう大丈夫…か…。」
そのセリフに俺は懐かしさを覚えていた。いや、懐かしさというよりも既視感といったほうがいい。それこそ頭を撫でてもらったときに一緒にその言葉をかけてもらった気がする………。
亮太は覚えているかどうかはわからない。
「もう大丈夫だからね。いつも側にいてくれてありがとうね。」
私はあの時のことを思い出しながらその言葉を囁いた。あの時に亮太にかけた言葉にかぶせた言い回しをしているが…亮太が思い出すかどうかはわからない。
「まだ、眠くない?でもそろそろ寝なきゃだめだよ?私もまだまだいちゃついてたいけどさ…。」
シチュエーションは大体台本どおりに進んでいく。時間が立つに連れ私はあの時のことを鮮明に思い出していった。
よくあること…かどうかはわからないが、小さい頃、正確には幼稚園くらいのときかな?私がイジメっ子にイジメられてた時だ。イジメられてた…いや心意気は喧嘩だった。あの時から私は負けず嫌いだったからなぁ…それでも力は弱かったけど。
それでほぼ一方的だった私対イジメっ子の喧嘩。そこに止めて入ったのが亮太だった。その時からすでに亮太とは面識があった。まぁ親が友達同士だしね。で、その亮太がイジメっ子から私を助けてくれた。実力はトントンくらいだったけど亮太はあくまでも私を助けるためにそのイジメっ子と戦ってくれた。
そして私は助けられた。そのときにやったのがさっきのシチュエーション。亮太の頭を撫でてそれから「私はもう大丈夫だから…その…ありがと!」って言った記憶がある。
実際心の中は全然大丈夫じゃなかった。だってなんで大切な人が私の為に殴られなきゃいけないの?正直、心が痛かった。
亮太も見ているということでとりあえずこのシチュエーションを入れてみたんだけど………流石にオブラートに包みすぎたかな?普通に聞き流されているかもしてないけどこれは完全な自己満足だからいいの。
「ねぇ…抱きついてもいい?」
甘えた添い寝シチュ(彼女ver)。そこまで難しくはない。何なら今の私なら1番簡単まである。ちゃんと亮太には声が届いてる…それだけでも私は安心なんだ。
「いいの?じゃあいくよ?ぎゅぅっ………。」
私は少し微笑んでいた。
第11話 ぎゅぅっ
『じゃあいくよ?ぎゅぅっ………。』
あ…可愛い。なんか本当に抱きつかれてるみたいで………いや本当に抱きつかれたことあるけどさ。その時みたい。シンプルに可愛い。
『まだ眠れないの?悪い子だなぁ。』
誰のせいだと思ってるんだか…。こっちは多分ガチ恋勢よりもドキドキしてるんだ。だって俺が見てるってわかってるのにこんなことされたら…勘違いしてしまう。
流石にそれはどうなの?ってことで耐えている。じゃあそんなになるので見なければいいじゃないって話になるかもしれないが…見たい、と言うより聞いてたいんだよ。沙奈の声を。
『私は君が眠るまで付き合ってあげるよ?』
しかしまぁこう言うセリフを聞くと少し落ち着く。シチュエーション的にも俺の心境的にもだ。と、言うのも献身的な沙奈と言うのは俺の中では解釈違いもいいところなのだ。まぁお互い気の置けないような存在だったからな。
だからまぁゆにさんだと思うことができる。因みに今さっきの台詞を沙奈が言うと「まだ寝れないの?私も寝れないし付き合ってあげるよ。」みたいな言い回しに…なる。
「…あれ?」
なにかこうおかしい。今さっき自分の首絞めなかったか?おかげで今俺は顔が熱いんだが?はっきりとその情景が思い浮かんでしまったんだが?ちょっと恥らったような沙奈か布団の中でうずくまってこっちを上目遣いで見ながらあの台詞を言うところが瞬発的に思い浮かんだ。本当にどうしたんだか…。あと、なんで頭の中の沙奈もちょっと恥ずかしがってんだよ。
俺は一体…何を求めているんだよ?
『不安で眠れないの?…やっぱり大変だもんね。私が側にいてあげるから、なんでも相談してよ?1人で抱え込んじゃだめ。私が居るから。』
今のは「ゆに」として言った台詞なのか「沙奈」の言葉なのか…どっちなんだろう。今の俺は不安とか心配事とかそういうのでは無くゆにさんの…違う沙奈のことで頭がいっぱいで眠れない。
「いや、恋する乙女かよ。」
独り嘲笑気味に自分に突っ込んだ。しかし今日の俺はなんというか…調子が出ない。というかいつもよりおかしい。原因はもちろん沙奈なのだが、こんな事にはなったことがない。沙奈に振り回されたことなら幾度がある。しかし自発的に沙奈の事を考えるなんてそんなに無かった。あったとしても小学生のとき明日何して遊ぼっかなとかそんなことしか考えてなかった。でも今はそんなことじゃない。
「俺って沙奈のこと―――――。」
『私は君のこと好きだからね。』
ゆにさんの台詞と被ってしまった。ゆにさんの「好き」の言葉はしばらくの間俺の耳に残っていた。
私の言葉は亮太に届いたのだろうか?届いていたとしても亮太のことだ。「ゆに」としての台詞としか思われていないだろう。それでも構わない。いつかちゃんと伝えるその日のための練習だ。練習だが…すでに私の顔は真っ赤にになっているだろう。恐らくは耳元まで真っ赤に。しょうがないじゃん…練習とはいえ本人は聞いているんだから。恥ずかしいよそりゃ。告白したことのある人なら絶対共感してくれる。どういう状況でも本人に「好き」と伝えるのは恥ずかしいんだよ!
実際今はほぼ電話越しみたいなものじゃん。電話越しに好きな相手に「好きです。」って伝えたようなものじゃん!
違うのはまぁ不特定多数が見ていることとシチュエーションがついていることくらいかな。………どう考えても告白できる状況じゃない。
ま、まぁ好きな人に好きって2次元の壁を挟んだけど伝えることはできた。心臓バックバク。到底心音を聞かせられるような状態ではない。だから今日は流石にやらない予定に変更したい。何を思ったのか過去の私、『ここで心音を聞かせる』とか台本に書いてある。まぁ確かにこの台本を書き上げたとき、ここの好きって言うシーンを乗り越えたら行ける!みたいなノリで書いてた記憶がある。あぁ…自分で自分の首絞めちゃった…。
「今ね、私すっごくドキドキしてるの……そりゃあするよ。聞く?……いいよ…。」
な、なんとかなってくれ…!
ばっくんばっくん…と前よりも速い鼓動。収まって収まってと願うがそれも虚しく焦りも相まって加速していく。
「そ、そりゃあ好きな人と一緒にいるんだよ?こんなに速くなったってしょうがないじゃん。」
ちょっと固くなってきてる。でももし本当に亮太とこういうシチュエーションになったときに私って似たような反応するのかな?
多分するんだろうな。
第12話 大切なお知らせ
それはある日の雑談枠でのことだった。サムネイルには「大切なお知らせ」と黒背景に白い字で書かれていた。よくある煽りだ。しかしまぁ…どっちにせよ見ない訳にはいかない。と、言うことで今は、その雑談枠を見ているという訳だ。
『はい、大丈夫です………ね、聞こえてますね。はいお疲れ様です。夜空ゆにです。』
配信はいつもどおりに進んでいく。変わったことは特にない。
『で、ですね早速本題なのですが。私が多分やらないと言っていた歌枠、なんと、解禁いたします!』
まぁ確かにそろそろ大丈夫…くらいにはなってきている。さすがは努力かな沙奈といったところ。しかしこの前までの有様を見てきた俺からしたら心配だ。本当に大丈夫なのかどうか…。
『まぁ、歌枠解禁と言いましても、練習です練習。こないだ前よりかはマシになったって言われたのでそろそろ実践練習をしてもいいかなと思いまして。』
なるほど、練習か…確かにそれならまぁ納得できる。少し俺の心配が和らいだ瞬間であった。沙奈も考えたな。
『[練習してたんだ]当たり前です。言われっぱなしじゃ悔しいですからね。言い返せないくらい上手くなってやりますよ!』
宣戦布告…か…。まぁ頑張ってみてくれ。俺は楽しみにしている。……何処の強者だよ。
『そうですね…近いうちに出来たらいいんですけど…明日やりますか…?やりましょう。』
明日か…。
『時間はきょうと同じ21:00から。あとあまり期待しないでくださいね?本当に…散々言われたので。』
まて…それは待ってくれ語弊が生まれないか?あたかも俺がボロクソ言ったみたいに………いや、あながち間違っては無いけどそこまで言わなくたって………ワンチャン俺が燃えるよ?名前も顔も出たことのない俺が燃えるよ?
『ま、散々言われたっていうのは半分嘘です。ホントはちゃんとアドバイスしてくれたんですよ?根は優しいんですよ。[幼馴染はゆにさんのこと知ってるの?]あぁ…知られてました。リスナーです。』
あ、言っちゃうんだまぁいいけど。名前が出ないんだったら。
『[それって前の質問の時に出た例の幼馴染?]そうだね…そうだってことは多分見られてますね…。と、言うことは………!』
「あ!」
2人がほぼ同時に気がついた。あぁ馬鹿だね2人とも…。
『いや待って違う!わかった今この場で訂正させてください!今はただの友達です!』
ま、まぁその訂正の仕方が1番正しい。あのときにはもう既に初恋の相手として紹介されてしまっているからな…。と、いうかなんだよこの2人の慌て方は。付き合っていることがバレた中学生の反応じゃん。
『待って違うの!誤解!本当に今は友達!』
あぁすごいコメント欄が[好きなんですねわかります][で、本当のところは?][反応中学生じゃん。可愛い]とか………なんか思ってたより平和だな!おい!
あれ?燃えないの?これ?本来燃えるネタじゃんこんなの?なんで皆こんなに冷静なの?
『だから違うってぇ………。』
あ、わかった。恥ずかしがってるゆに、もとい沙奈の声がすごい可愛い。確かにこれは平和になるかもしれん。
ヤバいヤバい収集がつかない!どうしよう!今の私はかつてないほどに焦っている。いろんな感情が入り混じってほんとに……熱い。
「待って…本当に今日のことは忘れて!はい!幼馴染は禁句です!」
もう適当になってきてる…こんなの好きって言ってるようなものなのに…。ほらもうこんなこと言っちゃうから[じゃあ恋人で]ってなるんだよ…。一応まぁ運良く炎上はしなかったからその分はマシかな…。
「わかりました、
私が幼馴染のことをどう思っているのかについては………今これを見ているリスナーさん達に任せます。」
ヤケクソだった。収集はもうつかない。じゃあいっそ起点にしようか?というのが私の結論だ。
「いったんこの話は保留にさせてください。あの………私の頭の整理がついてないです…。」
どんな公開処刑ですか?数千人の前で告白ですか?恥ずかしいですよ。いま心臓バックバクで汗ばんできているんですもん…。
「あぁ…熱い…。もう誰のせいだと思ってるんですか?」
総じて全部亮太のせいだ!亮太が居たから私は亮太のこと好きになったんだ!じゃあ亮太のせいだ!
無理矢理がすぎるけどもう考えてなんていられない。今の私の頭の中は真っ白だった。
第13話 歌枠解禁
さぁ今日は昨日告知していた歌枠解禁初日。正直今、私はものすごく緊張している。結局亮太の言っていた「内に秘めるゆにに語りかけて出てきてもらう」なんて習得できなかった。逆にあの説明で「うん分かった!」となるような事があるのだろうか?私は恐らくないと思っている。まぁとりあえず…うん、ゆにを意識して歌う。詳しいことはまた今度聞こう。
そうして私は時計を見る。21:00ちょうどを指している。配信開始ボタンを押す。いつもどおりで………大丈夫。
「はい、皆様お疲れ様です。夜空ゆにです。聞こえてますか?大丈夫ですか?…はい、今回歌枠解禁です!初めてってことなのでね調子に乗って今、エコーかけてますけど正直物凄く緊張してます。」
大丈夫大丈夫。落ち着け私。
「今日のラインナップこんな感じです。」
基本はJ-POP、アニソンとかも混ぜつつって感じ。あまり難しいものは持っていていない。さてと…頑張るか。
「じゃあまずどれから行きますか?」
私はそう質問する。そうして一曲目に歌うことになったのはJ-POPの中でも新し目のやつ、最近流行っていて亮太との練習でも歌った歌だ。まぁ今回持ってきたものの殆どが亮太との練習で使った物だが。
イントロが流れ始める。この曲は基本激し目な曲調、穏やかなイメージを意識して作っているゆにの声とはまるで正反対だ。ではなぜ他にもあったリクエストの中からこの歌を選んだのか。理由は簡単、地声との相性がいいからである。ゆにの声で歌うのにそれどうなのって思うかもしれないけど実際声を作りながら歌うっていうのは楽ではない。と言うよりハチャメチャに難しい。それにまず地声でリズムを作っておかないと次に続けることはできない。
そうして私は歌い始める。限りなく私、沙奈に近いゆにの声で。練習の甲斐もあってかなりスムーズに歌えた。因みにこの曲、本来がなり声やミックスボイスを多用する歌なのだが今回私はそういうの全てを取っ払って歌っている。初心者には荷が重すぎるからね。あと亮太に無理にそういう事するなって言われた。
そうしてまず一曲目を歌い終わる。とりあえずコメントチェック。これが1番怖い。[思ってたより下手じゃないじゃん][別に下手というわけじゃない]と言うコメント。よかった………亮太との練習との他にも1人で練習したのも相まってようやくここまで仕上げる事ができた。亮太はどう思っているんだろう?どのコメントかもわかんないけどきっとそれなりに見返す事はできたはず。
[あぁ頑張ったじゃん。]
とりあえず俺は一言そうコメントした。他のコメントの数が多すぎてどれか判断はついてないだろうな。でもちゃんと俺には伝わっていた。いや、こんな短期間でよく詰めることができたよな。本当に頑張ったと思っている。
『じゃあこのまま2曲目行きたいと思います。なにかリクエストはありますか?』
曲一覧は大体俺と沙奈がカラオケに行ったときに練習した曲になっている。ただ1曲、俺との練習で使われなかった曲が1つ。その曲は少し前に流行ったラブコメアニメのエンディングだった。
「如何程のものか見せていただこう…。」
何処ぞの強者感を出しつつその曲名をコメントする。そしてその俺のリクエストは無論通らなかった。ま、こんなコメントの数あるんだ案の定というわけか。まぁいずれやるんだしいいや。
そうして時間は過ぎていく。こうして聞いた限りだとどの曲も以前より大分上手くなっていた。
「やっぱり努力家だな。沙奈って。」
そうして最後まで残ったのは俺が2曲目にリクエストしたあの曲だった。歌詞の内容はヒロイン目線で書かれていて1番では自分から告白できない心の弱さを逃避するような描写が、2番ではそれじゃあ駄目だと前をむこうとする気持ちがそれぞれ書かれている。
因みに個人的には1番の「君が『好き』って言ってくれたら楽になるのにな」という歌詞が2番では「君が好きって言えないワタシが私を苦しめる。」と言う歌詞になっているところが印象に残っている曲だ。
『じゃあ最後これですね。行きます。』
そうして沙奈は前置きはなく歌い始める。その声の出し方や感情の入れ方なんかも本当にリアルで………まるで本当に誰かを想って歌っているようだった。音程なども問題ない。練習量がこれだけ別格なのかと思わせるほど今日聞いた中で1番上手かった。
第14話 いつも通りの生活
歌枠から数日がたった。今から大学だ。沙奈の歌枠配信はすっかり俺の登校用BGMと化していた。なんというかこの安心する感じ。好きだな。
見慣れた道だ。いつも通ってる。バイトに行くときもこの道を通ってるからな。まぁ…もっと前から知っている道でもある。そうして俺は駅へと向かう。その間にも沙奈の配信は進み、3曲目に差し掛かっていた。
いつも聞いている沙奈の声を今日も聞きいつも通ってる道を今日も歩く。そしてたまに昔のことを思い出す。懐かしい…。
いつからだろうか、沙奈と本格的に離れ離れになったのは?中学生の時からか?………どうして俺たちはこんなに離れてしまったのだろうか?沙奈曰く、沙奈はあのとき俺のことが好きだった。当の俺はどうだっただろうか?
何も思っちゃいなかった。幼馴染としか。今になってこんなにも求めてしまうとは一切思わなかった。これがすれ違いってやつなのかな…。痛々しいな大学生にもなってそんなセリフ思いつくなんて。
そうして自分を嘲る。惨めだ無様だとは思ってない。ただ今の俺は寂しい。実家は確かに近くにあるが色々あって一人暮らし、全くと言っていいほど帰っていない。そういうのも相まって俺の寂しさに拍車をかける。そもそも帰ったところで寂しさが和らぐようなところじゃ無い…。物理的にも心理的にも今の俺は孤独だ。結果としてゆに…いや、沙奈を求めている。
大学もバイトも………正直に言って楽しくなんてない。俺にはこれと言って夢がなかった。夢がなかったから進学した。最低限の生活を送るためにバイトを始めた。そんなとりあえずな生活だ。目的も何もないのに楽しいと思えるはずない。でも何かのために頑張ろうとすると、不思議と苦ではなくなる。それはその先に明確な何かがあるからだ。じゃあ俺は何の為に1日頑張る?今の俺にとって答えは一択だ。沙奈の為にできることをする。
大まかな目的は見つかった。じゃあ沙奈の為にできることとは何なのか。赤スパを投げることか?いいや違う俺にしかできないことがあるはずだ。幼馴染でありリスナーである俺にしかできないこと。それが何なのかは………今は全然わからない。いつか分かるときが来るのだろうか?とにかく今は頑張れ。何もかもがつまらなかろうと、辛かろうと頑張れ。
わかってるさ無理やりなモチベーションの保ち方だなんて。でも今の俺にはこうするしかない。家も飛び出して、仕送りはもらっているがそれでも頑張らなきゃならないくらいには厳しい。そんな現状だ。がむしゃらに頑張らずしてこの人生を歩むのは難しい。
「……よし…。」
駅のホームで俺は1人そう呟く。雑多にかき消されたその声は俺の決意の一言だった。
昼間は大学夕方からはバイト。意識は虚無だ。特に何を考えるわけでもなく作業のように毎日をこなす。そしてそれが終わればいつものだ。それが楽しみで案外時間が進むのは早く感じられるようになった。
そうしていつもの時間。スマホを開く今日はなんの枠だったかとコミュニティーを開くと新しいコミュニティーが投稿されていた。そこにはこう書かれていた。
[ごめんなさい。体調不良のため今日の配信は延期させていただきます。]
「沙奈………そう言えばそうか。」
最近配信続きだった。それに沙奈だってやることが沢山ある。沙奈のことだ。頑張り過ぎたんだろう。すぐに沙奈に連絡を入れる。
【あんまり無理するなよ。】
そうして返ってきたのは返信では無く電話の呼び出し音だった。反射的に通話ボタンを押す。
「もしもし、沙奈…今は楽なのか?」
『亮太…今、会える?』
沙奈の弱々しい声が聞こえる。
「今?流石に迷惑じゃないか?」
『大丈夫………会える?』
「あ、あぁ…沙奈は今…何処だ?」
『まだ実家ぐらしだよ…。』
俺って…こんなことも知らないんだな。
「わかった、途中コンビニ行ってなんか買ってきてやる。」
『じゃあ…スポーツドリンク。』
「了解。すぐ行く。」
『ありがと…待ってる。』
そうして通話終了。さっきまで働いていたコンビニに駆け込みスポーツドリンクを買う。その足で沙奈の家まで駆けていった。
そうして沙奈の家の玄関にたどり着く。何年ぶりだろうか?まぁ、今はどうだっていいや。インターホンを押し、しばらくして沙奈のお父さんが出迎えてくれた。
「やぁ、久しぶりだね亮太君。」
「お久しぶりです。」
「沙奈から聞いてるよ。さ、行ってあげて。」
「…はい。」
そうして俺は沙奈の部屋へと向かった。
第15話 らしくない
暗い私の部屋にノックが響く。
「亮太…?」
「あぁ…来たよ。」
「入ってきていいよ。」
私がそう言うとドアが開いた。
「お疲れ様。」
亮太は私の部屋に入ってきて一言そう言った。
「亮太に言われるとは思わなかったな…。」
「こういうときくらい言うよ。で、体調の方は?」
「まだちょっと熱がある。」
「そっか…あ、はいこれ。頼まれてたやつ。ここ置いとくな。」
そう言って亮太が枕元にスポーツドリンクを置いてくれた。
「ありがとね。」
「いいって………それにしても沙奈の部屋、だいぶ変わったな。」
「何年も来てないもんね。」
「それもそうだけどさ、機材とかさ。かなりしたんじゃないのか?」
「総額数十万円なり。」
「高っ!?」
「これでも安く済んだほうだよ。」
「まぁ、そうか…。バイノーラルマイクやら編集ソフトやら………本当、沙奈は凄いよな。」
「そんなまだまだだよ。」
「素直に喜んでくれたら嬉しいな。」
「じゃあありがと…。」
その後しばらくの沈黙が訪れた。それでも亮太は側にいてくれた。
「亮太、今夜一緒に居てくれる?」
「いいよ。そのくらい。幼馴染だろ?」
幼馴染…か…。なんか寂しいな…。
「………ありがと。」
「まぁその代わり朝までには帰らないとな。」
「仕事?」
「これでも学生やってる。あとまだバイト。」
「そっか………亮太も頑張ってるね。」
亮太…大学行ってたんだ。バイトもしてるし………そんなことも知らなかった。いつの間にこんなにも離れてしまったのだろう。
「沙奈ほどじゃ無いよ。毎日ネタ考えて…バイトはしてるのか?」
「うん…お母さん達に迷惑かけられないから。」
「そっか。やっぱり沙奈は凄いよな…。」
「どうして?」
「いや………ちょっと考え込んじゃってな。そんなに深い意味はない。」
「そう…。」
お互いがお互いのことをあまり知ることができてない…。高校に上がって以降関わり合いは加速度的に減って行っていた。結果が今だ。
きっとそれぞれ目指すところが違った。だから今みたいなことになったのだと思う。
「沙奈…どうして俺を呼んだんだ?」
「…会いたかったからじゃ駄目?」
「からかってんのか本気なのかわかんない。あとあんまそういうこと言うなよ?俺本気にするぞ?」
「いいよ別に。本心だし。」
今の私は自分でもびっくりするくらい落ち着いていた。………違う、正確には上手く物事を考えることが難しい状態にあった。
「…なぁ聞いても大丈夫か?」
「答えられる範疇なら…。」
「沙奈はまだ俺のこと好きなのか?」
「鈍感。」
亮太はこういうところがある。どうして私の気持ちを汲み取ってくれないかな?中学生のときだってそうだった。
「え?」
「やっぱり気がついてない。」
「??」
「いいよ本気にして。好きだよ、亮太。」
「ぇ………。」
ありゃ言葉失っちゃってる?
「だから好きだよ。」
「沙…奈…。」
その後、無意味な沈黙が訪れた。亮太の思考回路がショートしたことが主な原因だ。そうして数分が経過した。ようやく亮太が続きを口にした。
「俺………正直まだよくわかんない。沙奈のことが好きなのかどうか。」
「そっか。」
「でも最近ずっと沙奈のこと考えてる。これって好き…なのかな?」
「ふふ……。」
不覚にも吹き出してしまった…。だってなんかいきなり女々しいこと言うんだもん。
「な、なんで今笑ったんだよ!」
「ごめんごめん…亮太がちょっと…ふふ。」
「ちょっと…なんだよ。」
「女子っぽいこと言うなぁって。」
「ちょっ!酷くない!」
「ごめんごめん………それでさっきの質問、真面目に答えると亮太が私のこと好きなのかどうか。私には分からない。でもさ今、亮太が私のこと気になっているんだったら私は亮太のこと堕とす為に頑張るよ?」
「お、おう。」
その会話をしたあとまた沈黙。私は亮太の存在に安心感を覚え次第に意識を落としていく。気がつけば具合もだいぶよくなっていた。明日からまた色々と頑張らなきゃ。
「亮太…おやすみ。」
「お、おう。」
そう言って。沙奈は眠りについた。
「沙奈…。」
自分でも分かる。今、俺の顔は真っ赤だ。体温も上がっている。別に体調不良が写ったわけではないだろう。純粋に恥じらいの気持ちだ。
俺のこと好きって沙奈は言っていた。熱でおかしくなったのか?考えにくいだろう。
「真に受けて………大丈夫なのか…。」
そう言って沙奈の顔を見る。だいぶ顔色は良くなっていた。
「もう大丈夫かな。」
時計を見ると0:00を回っていた。
「帰ろうか。」
俺にしかできないこと…か…。
第16話 勘違いしてもいいのなら
翌日のことだ。夜は遅かったが大学やバイトに特に支障はなかった。沙奈の方も今日は問題なく配信をするようだ。本当に頑張り屋だが…馬鹿だよな。少し心配ではあるが今日重要なのはそれではない。昨日の夜の言葉が頭から離れないのだ。
しかしそれでも俺は今、沙奈のチャンネルで待機している。
「勘違いしてても…いいんだよな…。」
独り呟く。そうして23:30配信はスタートした。
『はい、皆様お疲れ様です。夜空ゆにです。もう大丈夫です!完全復活です!昨日はご心配駆けてすみませんでした。また、今日から頑張って行きますので応援よろしくお願いします!』
コメント欄を見ると[おかえり]や[あんまり無理しないで]というもので溢れていた。
『じゃあ完全復活とげたので、今日もASMR頑張っていきますね。』
そうしてシチュエーションに入っていく。本当に沙奈は頑張り屋だ。体壊すくらいにはもう頑張っているのにまだ頑張ろうとしている。俺も…まだまだ頑張らなきゃな。
『昨日体調崩したときに「頑張りすぎだ」って言われたんです。たしかに思い返してみればバイトもして、配信もして…ちょっと疲れてたのかもしれません。だから体調崩しちゃいけないので私の言えたことじゃないですけどあんまり頑張りすぎないでくださいよ?疲れは私がとってあげますから。』
じゃあ…沙奈の疲れをとるのは誰だ?心の支えになってあげるのは?
俺か?だったとしたら俺に何ができるっていうんだ?
「何もできないだろうが…。」
悔しい。その感情のまま呟いた一言だった。沙奈と直接会える立場のクセしてしてやれることが何もない。無力感とはこのことか…。
『大丈夫大丈夫。今は何も考えなくていいからね。』
全然…だいじょばってない。このまま勘違いしてていいのなら…俺は…。
『君は私に甘えてくれるだけでいいんだよ?』
俺は………どうしたいんだろう…。もどかしい。自分の気持ちがよくわからない。どういう感覚なのだろうか。ソワソワしている。
まぁまだ配信中だ。詳しいことは終わってから…明日、伝えよう。
結局俺の意識は落ちていった。忘れないであろう無力感を抱きながら。
「君は安心してていいからね。」
彼我を思い私はその台詞を口に出す。しかし自分で考えた台詞ながら今になり少し考え込んでしまう。『君は』その一言が引っかかってしまった。
私はどうなのだろうか?大丈夫なのだろうか?多分大丈夫ではないだろう。お母さんにも言われた、頑張りすぎだって。少し我儘になると、しんどい。体調面ではなく心が。どうしたらいいのだろうか?
亮太には凄いと言われた。その言葉の中にここまで頑張ってて偉いという意味が含まれるのか、倒れるまで気が付かないなんて馬鹿という意味が含まれるのか、私はわからない。ただ亮太のことだ。きっと両方だと私は思っている。
「心配してくれてありがとうね。」
本心からの言葉。台本にはない言葉。アドリブで少し入れることはある。亮太もそうだが心配してくださったリスナーさんたちに向けての言葉だ。
今の私には続ける理由がある。だから頑張らなくちゃいけない。がむしゃらに…独りで。
そうしてシチュエーションは予定通りに続いていく。時間が早く進んでいっているような感覚になってしまったのは慣れなのだろうか?わからない。しかし物足りなさも感じていない。
私はどうしたのだろうか…。
次の日の朝、私は着信音で目が覚めた。
「ん………?亮太………?」
かけてきていたのは亮太だった。
「もしもし亮太…?」
『あぁ、おはよ沙奈。寝てたか?ごめんな。』
「いいよもう起きる時間だし。」
『そうか…。なぁ沙奈。』
「どうしたの?」
『今の俺にできることってあるか?』
「…?」
最初はどういう意味で言っているのかわからなかった。
「それはどういう意味で?」
『沙奈の手助け…支えになりたい。』
「…アシスタントってこと?」
『まぁそんな感じだ。』
確かに…アシスタントは欲しい。でもそれは亮太は大丈夫なのだろうか?金銭的にも厳しそうだが?
「亮太は大丈夫なの?」
『あぁ…大丈夫。たまに時間が避けないときもあるかもしれないけど基本大丈夫だ。』
「わ、私としても嬉しいけどさ…。」
『手伝わせてくれ。本当のことを言うと今の沙奈が心配なんだよ。』
「心配…?」
『体調崩すまで頑張って自分のこと考えきれてないだろ?だから、サポートさせてくれ…。』
こういうときの亮太は頑固だ。私みたいに自分のことを考えきれてないときだってある。でも今日は…大丈夫そうだ。
「わかった。じゃあこれからお願いします。」
『あぁ…お願いします。』
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