第206話 ロケットおっぱいと禁断の魔王軍
バッタ男爵領『ナナフシ』、この貴族領の防塁に佇むは、ロケットおっぱい。
その立派なおっぱいの持ち主は、防塁の上に仁王立ちしながら、街道をもの凄い勢いで走ってくるスレイプニールを見つめていた。
しばらく経つと、そのスレイプニールに乗っている人物が、女性であることが明らかになる。そのスレイプニールは、その速度のまま、防塁の下まで到達する。
「ゴンベエ! エアスランが勝利。例の要塞を包囲する勢いだよ」と、ヒリュウが叫ぶ。
「そっか」と、ゴンベエが呟く。
「ウルカーン負けたの?」と、同じく防塁に昇ってきていたネムが言った。マルコとマツリも後ろにいる。
これまで幾度となくスイネル・ナナフシ間、若しくはナナフシ・ウルカーン間を交易してきた彼女らは、少しだけ逞しく、そして大人びて見えた。
「ウルカーンは、行儀良く街道を移動してネオ・カーンに迫っていた。対するエアスランは地下迷宮を使ったゲリラ戦法を取った。勝負は見えていた」と、ゴンベエ。
「ローパー伯爵の戦略では、このタイミングで講和して、主戦派の貴族を売り渡して国体を守るってことだったけど」と、マツリ。
ゴンベエは、その言葉を聞きながら、難しい顔をした。そして、「エアスランの軍師はそんなに甘くない。最終的にそれに落ち着いたとしても、戦勝のゴタゴタで取れるだけ取るでしょうね。とりわけ、ウルカーンの南部に築かれた要塞はとても邪魔。講和をのらりくらりと伸ばし、少しでも自国の有利に持って行くと思う」と言った。
「え? でも、あの防塁、今は要塞だけどさ、ノートゥン軍と聖女がいるんだよ?」と、マツリ。
「ノートゥン軍も、ウルカーンのために積極的に出撃はしないでしょう。なので、エアスランが狙うなら、その周辺ね。周辺を押えてあの要塞を無力化させるでしょう。上手くいけば無血開城」と、ゴンベエ。
「それをされると、エアスランが力を付けすぎる。ノートゥンもティラネディーアも黙っていないんじゃない?」と、マツリ。
「その辺は情報戦と外交戦になる。エアスランは情報戦が得意だからね。下手をするとララヘイムやタケノコも介入する。スイネルルートでね。ああ、もう。アイツが居てくれたら、さっさとウルカーン落として平和になっていたかもしれないのに」と、ゴンベエ。
各国はしたたかに、この戦争の行方を見守っていた。
ララヘイムは、そもそもエアスランのウルカーン攻めに兵を出していたが、それはあくまで一部であり、全面戦争の体を取っていなかったが、自国民保護を理由に、スイネルに正規軍を移動させていた。
そしてタケノコに関しては、歴史的に中立を貫いていたが、かの国も自国民保護を理由に、魔王軍をスイネルに移動させていた。だが、こちらはほとんど言いがかりだった。地下迷宮に潜む犯罪組織がモンスター娘を狙っているという理由で、ウルカーンで自由に軍事行動をさせろという要求を突きつけていた。だが、魔王軍の破壊力を知るウルカーン首脳は、このことに頭を悩ませてつつ、回答を先延ばしにしている状況であった。
マツリは、少し渋い顔をして「サイフォンさんが言うには、深海の御貝様は、この大陸の国民は一つになれると言っているみたいだけど」と言った。
「御貝様ね。貝本体にも脳があるから、アイツの意識がある程度残っているっていう説明だったけど、本当かなぁ」と、ゴンベエ。
「ゴンベエ、今は信じるしかないよ。僕も、何故だかそれを目指さないといけないような気がするんだ」と、マツリ。
「あの、ゴンベエさんちょっといい?」と、ネムが言った。
「ん? ネムちゃんどうしたの?」
「この街の先には、廃村がある。僕たちがホークと戦った場所」と、ネムが言った。
「廃村は色々とあるけど、そこって、地下迷宮の近くに造ろうとした街だっけ? そこそこ気合いが入った防塁が残ってるっていう」と、ゴンベエ。
「うん。僕がエアスランだったら、そこを押えに行くと思う。あそこ、良い位置にあるし、防塁も生きているから守り易いと思うんだ」と、ネム。
「貴方が何を言いたいか分かるけど、この街に集まっている兵士と戦略物資の使い道は、まだ確定していない。
「カモメ様の千里眼は今どこに?」と、ネム。
「今はウルカーンを偵察中。あそこ、ちょっと内戦状態になるかもね」と、ゴンベエ。
「内戦か。でも、ココで悩んでいても仕方がない。ゴンベエさん、稽古しよ」と、ネム。
ネムはゴンベエと出会った後、直ぐに特訓の依頼を申し入れ、ゴンベエも本来とあるおっさんの元に行くはずだったため、気前よく彼の部下達に、スカウト、剣術、魔術など、忍術の極意に触れない範囲で教えてあげていた。
「いいよ。今日は、マルコにギラン、ナインも一緒かな?」と、ゴンベエ。
ゴンベエらがいるナナフシの防塁から見下ろす平野には、至る所で訓練の風景が見えた。このナナフシには、すでに数百の騎馬兵や千人近くの歩兵が訓練を続けていた。
そして、忍者の里『ヨシノ』勢力である。『ヨシノ』は、日本人転移者を祖とする武装集団である。地理的にはエアスランであり、エアスランとも良好な関係を築いている連中である。その彼らが、今回は極秘でネム達に力を貸していた。そう、あくまで小規模な冒険者パーティへの加入という形でこの戦線に入り込んでいた。全ては、自分達の生存戦略のために。
◇◇◇
ここは、バッタ男爵領『ナナフシ』から少し離れたスイネルの港街、その一角に泊められている不気味な船のとある一室……
「久しぶりだ姉さん。今回の将軍は姉さんだったんだな」と、ジークが言った。
デーモン娘であるジークの向いには、ジークを一回り大きくしたような女性が座っていた。
ここは船内の、薄暗い部屋のようだった。
「いや、今回の将軍は私じゃねぇ。それはそうとしてジーク。お前まだ男捕まえてねぇのか。修行が足りねぇんじゃねえか? 教えただろうが、男の落とし方は」と、ジークの姉が言った。
「いや、まあな。それなりにヤッてはいるんだけどよ。それより、手紙は読んでくれたのか?」と、ジーク。
大きなデーモン娘の後ろには、それよりも大きな何かがいた。そして、「ジーク坊や。ワタシを攫おうとしたエルフがいたんだって?」と、言った。地の底から響くような、不気味な声だ。
ジークは紫色の顔を若干青くさせて、「ガ、ガシャンボの姉貴、そうだ。人の子を姉貴と間違えてさらったヤツがいたんだ。だが、そいつはシュシュマが倒した」と言った。
ガシャンボの姉貴は、成人男性の頭くらいある肩の筋肉を揺らし、「男エルフは全員レイプでいいんじゃないか? 連帯責任だ。男全員、1人10年ずつ俺達と強制セック○だ」と言って大笑いした。
ガシャンボ娘の隣にいるこれまた大きなモンスター娘が、「ぐわっぐわっぐわっ、あいつらの舐めてもお茶の味しかしないよ。味わうなら、やっぱりドワーフだ」と言った。彼女は、頭から黄色い花が生えているとても太ったカッパのモンスター娘だった。
「ケケケ、最近風竜も飛び回っておる。あのザコが。後で念入りにレイプしてくれるわ」と、鳥頭のモンスター娘が言った。
彼女はとても長身スレンダーな美女だがおっぱいが大きく、身に付けている服の面積がとても少ないモンスター娘だ。エアスランの神獣風竜とは何やら因縁のある人物のようだ。
その時、部屋に一際不気味な声が響き亘る。
「いひひっひひひ……魔王と同じスキルのヒトが出たんだって?」と、まるでサリーち○んのパパのようなヘアスタイルの女性が言った。
「いや、だけど、小豆洗いの姉御、そいつは女だったんだ」と、ジーク。
「ひひひひひ、人体改造で男にすればいいさ。少しは楽しませてくれるだろうよ」と、小豆洗い娘が言った。
「将軍は、アレに小豆を仕込んだ凸凹のブツを挿入するのが好きだからなぁ」と、デーモン娘ジークの姉が言った。
どうやら不思議なヘアスタイルをした小豆洗い娘が今回の将軍のようだ。
「うひゃひゃ、アレは、最初ごりごりと堅いが、徐々にふやけてくるからなぁ。感じ方が変化して色々と楽しめるんだ。まあ、大概の男は、ふやける前までにイッテしまうがな」と、小豆洗娘。
「ひゅひゅっひゅひゅ、私はピーカブーを一発ではらませた男が気になるよ」と、くちばしを生やしたロン毛の女性が言った。
ジークは、こいつらを呼んだことを後悔したような顔をして、「あ、アマビエ姉さん、そいつは、元の世界に帰還してしまったんだ」と言った。
アマビエ姉さんは、「ひゅ? そうなのか? でもさ、何だか出会えるような気がするよ」と言った。
彼女らの後ろにも、得体の知れない何かがぞくぞくと蠢いていた。
異世界最強の軍隊が、今解き放たれる?
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