第187話 ロリでごめんなさい
ちゅんちゅん、ちちち……
スズメだ。ここには、スズメがいるのだ。結構緑豊かだからな。首都圏は、公園にかける金が違う。案外樹木が一杯あるのだ。
俺の枕元で、目覚ましモードのスマホがチロチロと鳴っている。俺は、手を伸ばしてそれを消す。カーテンの隙間からは、朝日が入ってきている。
今日の出社は午後からにしよう。うん。そうしよう。後で電話すればいいだろう。
うん、これは、レミィのせいだ。そうだ。あいつとやったせいで俺のロリ耐性が下がったのだ。慣れたと言うべきか。いや、違うな。人のせいにしてはいけない。俺は、ヤツが肉食獣なのを見抜けなかった。できないという嘘を見抜けなかった。
だから、易々と部屋に入れてしまった。それが全くの間違いだったのだ。
「起きたのか?」と、俺の鎖骨辺りで声がする。
俺は、それを無視した。
「もう、またするのか? 堅いぞ?」
俺は、それも無視する。だけど、体は正直なわけで。俺達は、夜にさんざん行った行為を、寝起きに再び開始した。
・・・・・
米の自動炊飯が完了した音が聞こえる。
「もう、起きないか?」
「お前が離してくれないんだろう」
「お前、抱き締めやすいんだ」
「小さいのも良いだろう?」
「いや、俺はロリでは無い」
「何? だからお前はいかんのだ。何でも人のせいにして頑固で譲らん。これはお前の嫁も大変だっただろう」
「お前、俺と嫁の関係壊しつつあるんだけど?」
「だから、人のせいにしてはいかん。お前は私を抱いただろう。自分の意思で。何度も何度も。最初は事故だったかもしれんが、その後ずっとひたすらやり続けたのはお前だ。私で無ければ死んでいたかもしれんぞ? いい加減認めろ」
「う、うぐ。うぐぐ……」
「お前は、私を抱いてる間ずっと私の事を褒めて、何故か行く時はちゃんとそれを私に伝えて、ずっとおでこにキスをして、百回近く全て中に出して。何か言いたいことはないのか?」
「私はロリです。ロリでごめんなさい」
「よしよし。素直は良いことだ。ついでに、私のおでこが大好きなことと、小さな体が大好きなことをちゃんと声に出して言え」
「私はおでこが大好きです。体も小っさいのが大好きです。おっぱいなんていらんのです」
「よしよし。素直に下の方も復活してきた。では、もう一回だけするか。だが、おっぱいは少しだけあるんだぞ?」
俺達は、付き合い立てのバカップルの如く……
・・・・・
「なあ、俺の体って、異世界のままな気がするんだけど、そこはどうなんだろう」と、米を食いながら言った。
洗濯機が頑張って唸っている音が響いている。布団のシーツがベトベトの血みどろになっていたのだ。流石に凹んだ。
テーブルの真向かいでは、神敵が同じように米を箸で食いながら、「流石にあの性欲とこの丈夫さは、この世の生物としては異常だな」と言った。
「いや、冗談では無く、500円玉も曲げてしまえるくらいの腕力があるし」
「化け貝のままだと言いたいのか? 確かに、お前の体力と回復力は尋常では無い。だが、今のお前からは、あの禍々しい波動が感じられん」
「え? 俺、禍々しかったの?」
「そうだ。化け貝と繋がりがあるかどうかは置いておいて、お前のその身体能力は、仮説としては、魔力の影響だな」
「魔力? ここに魔力があるのか?」
「どうやらその様だ。実は私も、ここに転移した最初は魔力が無かった。だが、徐々に回復してきているようだ」
俺は、病院でケイティが雷魔術を使ったことを思い出す。最初は使えなかったと言っておきながら、その後使ってみたら弱々しい静電気クラスの電撃が出たのだ。それは、魔力の回復過程だったからではないのか。
「まさか、この世界にも魔力があって、転移直後はストックがゼロだったけど、また備蓄開始したということなんだろうか」
神敵は少し考え事をしながら、「そういう側面はあるだろう。だが、まだよく分からないこともある」と言った。
「よく分からないこと?」
「この世界の人々は、魔術が使えないということだ。魔術士はいないんだろう?」
「そうだな。俺が知る限り、本物はいなかったはずだけど」
神敵は米を食い終わったようで、箸を置いて「よし、私は少し調べ物をする」と言った。
「そっか。ひとまず、俺は午前中は会社休む。ちょっと、お前の服を買ってこよう」
「服か。私も行く。お前に任せていたら、危険な気がする」
「失礼な。だけど、あんまり高いものは買えないぞ」
俺は貧乏とはいえ、奥の手がある。それは、出張立て替え払い用の口座。全て使うと出張行くときに困るが、少しなら問題ない。
・・・・
神敵にSuikaを買ってあげて、一緒に電車に揺られて商店街に行く。服は昨日のうちに洗濯しておいた異世界産のものを着ていった。この時期にしては少し薄着だが、そこまでおかしくはない服装だ。ユニ○ロやG○などのお店を回る。何度も試着を繰り返して下着と洋服を買っていく。今の下履きはサンダルだったから、靴下を買っておく。後でシューズも買わなければ。あっという間に数万のカネが飛んで行く。
途中ジュエリーショップや大手家具屋さんを覗いたり、何となくウサギ専用ペットショップや登山用品などを物色する。
ドンキ○ーテで安物の腕時計とちっさなリュックサックを買ってあげて、中華料理屋でラーメンを食べて、あっという間にお昼過ぎになる。
街をぷらぷらと歩きながら、神敵と駄弁る。
「ところでお前、仕事に行くとか言っていなかったか?」と、神敵が言った。
今はどこから見ても日本人っぽい感じになっている。よく見たら髪と瞳が深い青だが、それでもぱっと見は黒に見えるから、過度に目立つということはないだろう。両手首に腕輪を付けているが、こんなのは何処にでもあるアクセサリーだ。だけど、体の小ささの割に、異常に目力があって美人だから、ついつい二度見する人が結構数いる。
「そうなんだよなぁ。今から仕事行くか。一人で帰れるか?」
「問題ない。鍵も開けられるしな」
「お前、ひょっとして、黒いヤツ出せる能力で鍵開けてる?」
昨日、俺の体を拘束し、口を塞いだのも黒いヤツだと思う。
「山ヒルの化身のことか? そうだな。小さいヤツなら出せるようだ。大きなヤツはまだ無理だな」
「そっか」
あれ、山ヒルの化身だったんだ。
駄弁っていると、バッグの中のスマホがカチンと音を立てる。これはメールの受信音だ。さっとパスワードを入れてスマホを開く。
内容は小田原さんが退院したという連絡だった。ケイティも今日退院予定だとか。快気祝いの日にちを聞かれていた。
俺は、明日以降ならいつでもいいと書いて返信する。直ぐに、では次の土曜日で、という返事がくる。土曜日といえば、明後日だ。場所は例の『赤城屋』とのことだ。そのお店は、綾子さんがバイトしているお店だ。ご丁寧に、飲み代は小田原さん持ちと書いてあった。俺の懐事情を慮ってくれたのだろう。予約はケイティがしてくれるそうだ。
そういえば、
「おまえさ、お酒って飲めるのか?」
「飲めるぞ。私は幼女に見えるが、幼女ではないからな」
そうだった。こいつは、体がちっさくておっぱいが無いだけだ。
「例の三匹のおっさん連中と飲むんだが、来る?」
神敵は少しあきれた顔をして、「別にいいのだが、私はどう見ても未成年に見えるが、それを否定する書類は何も持っていないぞ?」と返してきた。
こいつは、ここに来て僅かな時間しかなかたっというのに、社会のことを理解しているようだ。俺の方が配慮が足りなかった。こいつには身分証明書的なものがないからな。
「確かにそうだな。居酒屋で飲むのは無理か。まあ、お酒飲めるんなら、今日の仕事帰りお前の分も買ってくる」
「私は殆ど酔わないから、余り意味はないのだがな。だが、お酒は少しだけ気分が楽しくなる」
「買ってくるよ。メシは米と味噌と半額野菜だけど」
神敵は、「そうか。お金があれば、私が料理くらいしてやるのだが」と言った。
「おう。お前料理出来たのか。だが、調味料が味噌と塩しかない。というか、うちは包丁とまな板が無い。次の給料日まで待つべし。その時はちょっと良い物食おう」
なお、炊飯器に電子レンジ、電子ケトル、IHヒーターと鍋はあったりする。便利なのだ。
「無理しなくてもいい。仕事に行ってこい」
俺は、何となく新婚時代を思い出し、少しだけこの東京での生活が楽しくなってしまった。
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