第152話 ホークの長い夜
太陽……そうだ、太陽だ。
あいつの笑顔は、その言葉がぴったりくる。
ティラネディーアのドワーフ女だ。体は小さいのに、積極的だった。
むちゃくちゃな女だったな……ふふ、今思い出しても面白い。
あいつは、何でもやった。いや、何とでもやった。
おっさん、子供、多人数、女、浮浪者、犬、ロバ、魔物、やりたいと思ったら、何とでもやった。
その延長線上に、俺がいた。
あいつは、お腹を空かせて行き倒れになった俺を、レイプした。いや、俺もあいつを美人だと思ったし、結局勃起したのだから、俺はあいつに興奮していたことになる。だから、まあ、WinWinの関係というやつだ。
終わったと、あいつは俺にメシを食わせてくれて、それで俺はそいつの家に入り浸って……
ああ、面白かったなぁ。二人で一緒に、色んなセック○をした。
あるとき、その女は勇者とセック○をしてみたい、と言って、一緒に勇者を襲った。
一瞬で負けた。ティラネディーアの勇者ズゥ。あいつは、今の俺と戦っても、良い勝負をするだろう。そのくらい強かった。
結局、泣きで命だけは助けて貰えた。勇者のフトコロの深さは凄いと思う。ところで、ズゥのやつは未だに現役だ。ドワーフというやつもエルフと一緒で長寿だからな。
そんなこんなで、ティラネディーアには居られなくなったから、俺達は冒険者になりウルカーン行きの行商人の護衛になって、護衛自体はちゃんとやったが、途中でその行商人を性的に襲って、でも、不思議と許してくれて。もうめちゃくちゃだった。だけど、あのドワーフ女は、それをやっても許される何かを持っていたんだと思う。
ウルカーンに渡ってからも、冒険者の仕事をしながら、バカばかりやっていた。
自分の穴の横に『自由⇒』と書いて、酔っ払いが多い区画の裏路地に全裸で立っておいて、何人が自分とするか計測してみたり、男爵令嬢をレイプして追放された元男爵令息をレイプしてみたり……
さらには、悪鬼とやりたいとか言って、迷宮に潜って悪鬼を探して回って、本当に悪鬼が出てきて命からがら地上まで逃げ帰ったはいいけれど、『悪鬼誘導罪』なるもののせいで、クロサマという異常に強いモンスター娘に追いかけられたり。
まあ、その件でウルカーンにも居られなくなって、そのままスイネル方面に逃げて……
そう、そうだな、その時に出会ったのが、俺の頭の中にいるやつだ。名前は未だに無い。こいつは魔獣だ。魔獣というのは、長寿の動物に人の魂が入ったモノというのが学者たちの大多数の見解で、俺もそうだと思っている。
ある時、俺が海の砂浜を歩いていると、そこに少年達からぽかぽかと殴られているウミガメを見つけたんだ。
俺は、なんとなく、本当になんとなくそのカメがかわいそうになり、カメをいぢめていた少年達を、コラァとか言って追い払った。
そうしたら、そのカメ、人の言葉をしゃべりやがるんだ。まあ、助けてくれたお返しに、いいものをあげたいんだと言われた。
だから俺は、そのカメについていって……
ああ、そうしたら、何だが魚や貝が宴会をしていて。
それは、信じられないんだけど、魚が自ら海の中から出てきて、それを不思議な料理人達がさも当然の如く捌いて……でも、俺はそれをなんの疑いも無く食べて、魚とか、イカとかウニとか、何やら変な色んな生き物を食べた。
さらにその時、お酒をたらふく飲んだ気がする。酔い潰れるまで、とても酒精が高いお酒を飲みまくった。
そのくらい、楽しくて豪快な飲み会だった。
そのせいで、次の日はかなりひどかったけど。
頭ががんがん、胃袋がムカムカして、とても生きているのが不思議なくらい気持ちが悪かった。そもそも、俺は何時のまにか砂浜に倒れていた。それくらいひどい飲み方だったのだろう。
その経験後、俺の頭の中で何か声がするようになった。
『犯せ』『力を貸そう』『力の見返りをよこせ』『魔力をよこせ』『人を食え』
あらゆる行動などの節目に、そういった感情が沸き起こった。まるで、洗脳されるかのように。
後々分かった事だが、俺の体に取り憑いたのは、魔獣と呼ばれる特別な存在が、さらに長生きして力をつけたモノ。個体によっては、神獣や亜神と呼ばれるほどのチートな存在。
そいつは、『ホヤ』の魔獣だった。その魔獣は、あるとき意識に目覚め、外の世界を見たいと願い、周りの魚やカメに自分の体の一部を食べさせて憑依し、周りを散策していたらしい。
そんな時に出会ったのが俺で、どうも、俺にも憑依することにしたようだ。このことは、契約だ何だと言っているが、俺にとっては単なる憑依、若しくは寄生だ。そのホヤは、俺が怪我をしたら傷を治してくれる。だがそれは、自分の分身が死ぬのが惜しいからであって、決して俺が大切だからではない。
俺は、そのままの状態で半年間悩み、この寄生虫を取り除くことは不可能だと
俺の一連の出来事をあのドワーフ女に話したら、何故だかとても悲しそうな顔をされた。その夜は、久々に俺と一晩中セック○をしたけれど、その理由は分からなかった。
そして、次の日から、エアスランを目指して移動した。
で、あいつがエアスランに行く理由というのがとてもびっくりした。エアスランの巫女エアを犯しに行くというものだ。はっきり言って、自殺行為だ。
だけど、あの女は無計画に、神殿に忍び込んだ。
そこは、手を出してはいけない所だったんだ。
風竜……
暴風の神が、そこにはいた。その風竜が、まあ怒る怒る。
そして、そのドワーフ女は、その時に死んだ。
俺も風魔術を使うが、その時の俺は歯がたたなかった。あいつを守ってやれなかった。
一撃で真っ二つになって死んでいった。100年近く一緒に連れ添ったのに、別れるのは一瞬だった。
だけど、それで本望だったんだろうな。あいつは、どこか死に場所を求めていたような気がしたし。
いや、ひょっとしたら、本当に殺したかったのは俺だったのかもしれない。寄生虫に憑依されている俺を。でも、俺は死ななかった。ズタズタにされても、その魔獣のせいで生き延びた……
ガハ!
口からボトボトと何かが落ちる。これは……キノコ? 嘘だろ。顔に手をやる。バサバサと何かが落ちる。
これもキノコだ。
ああ、ふふ。あはは……キノコといえば、アレがうまかった。
命からがら風竜から逃げていたら、とある村に拾われたんだ。
よく俺なんか助けようと思ったモノだが、そこで、キノコ汁を食わせてもらったんだ。おいしかったなぁ。
俺は忍者の里に拾われて、忍術を学んだんだ。
来る日も来る日も修行に打ち込んで、何故かそれが新鮮で、セック○も忘れて修行して。
風竜に負けてあいつを守れなかった悔しさもあったけど、純粋に忍術が楽しかった。
数年間はあの村に居たと思う。俺は、あらゆる武器と体術を練習し、そして強くなっていった。
村の畑仕事や土木作業も手伝った。とても感謝されて、嬉しかった。美人な若い女もいたし、俺は、このままここで骨を埋めてもいいとさえ思った。
実は俺は、その時点では、人を殺したことが無かった。殺されそうになったことは何度もあったけど、悪いのはほぼこっちだし、基本逃げていた。犯罪といっても不同意のセック○くらいだったし、あの女がいたら、殆どは、何故だかうやむやになって、最後は許された。本当に不思議な女だった。
カネは冒険者で稼いでいたし、セック○以外の娯楽は不要で、人を殺す必要がなかったのだ。だから、誰かに本気で恨まれているわけでもなかった。
なので俺は、まあ、ここの村の一員になってもいいと思っていた。
あの日までは……
ある日、村の長が娘を連れて来た。
娘といっても実の娘では無い。年齢は、10歳も満たないと言っていたが、大柄な女児だった。
目付きの悪いガキだったなぁ。
長は、俺にそいつと
意味が解らなかった。稽古ではなくて、試合うのだと。
その時、俺は悟った。俺をこの村で引き取って面倒を見ていたのは、このためだったのだと。
殺すために拾ったのだ。デビュー前の忍者の娘に、殺人を覚えさせるために。しかも、弱い人間では駄目だったんだろう。だから、俺に本来は門外不出の忍術を授けたのだろうと理解できた。
だが、簡単には死んでやらないと思った。こんな10歳にも満たない女児、返り討ちにしてやるとも。
だけど、俺の、自身と誇りは打ち砕かれた。その女児に。
全く歯が立たなかった。その女児は、あらゆる属性の忍術を使いこなしていた。風しか使えない俺は、為す術も無く切り刻まれ、燃やされた。
だが、俺の再生能力だけは想定外だったようで、ズタボロになって死んだとでも思ったのだろう。
大量の血を流し、地面に倒れ伏している俺の監視の目が緩む一瞬の隙を突いて、俺は『ヨシノ』を逃げ出した。
・・・・・
そして逃げる途中、野営中の行商人を見つけ、食べ物を恵んで貰った。
すでに負った傷は癒えていたが、服がぼろぼろの俺をかなり警戒していたが、それでも優しく食べ物を分けてくれた。
俺は、その行商人をその日の晩にレイプした。悔しさを紛らわすために。
ぎゃーぎゃーと喚く奥さんをぶん殴り黙らせた後、イケメンの旦那を犯し続けた。
終わった後、のんびりしていると、そいつらは俺に剣を向けてきた。おかしかった。俺は、今までの100年間で、色んなレイプをしてきたけれど、そんなことをされたことは無かった。
大体、あのドワーフ女がいろいろ馬鹿なことをやって、笑って許してくれて……そんなマジカルなことは、その女だけだったのだということを、この時初めて理解した。
だから俺は、その時初めて、人を殺した。
泣きながら剣を向けてきた奥さんに対し、頭の中に響く『コロセ』の言葉に、抗えなかった。
ドサ……
地面に、倒れたんだと思う。ああ、もう、上も下もワカラナイ……何だよこれは。俺は、再生能力が高く、死なないんじゃなかったのかよ。
手足ももう動かない。
『シヌナ』
あの声が聞こえる。あのホヤの声だ。
死ぬなって、無茶言うなよ……
死を意識する。意識すると、何故か昔の記憶が鮮明に蘇る。
俺は、最初の殺しを経験してからというもの、歯止めが利かなくなっていた。気付いたら、100人を越える盗賊団の頭になって、商隊を襲う山賊みたいなことをやった。そして禁断の果実、モンスター娘に手を出して……
そうしたらあいつら、ララヘイムにいた俺達に軍隊を派遣して来やがった。
魔王軍。一人一人が一騎当千の猛者で、俺達の組織はあっという間に狩られた。
そしてウルカーンに逃げ延びて、今度は地下迷宮探査でもしようと思って……
だけど、地下迷宮というのは、ワルの巣窟の様なところだった。クスリ、オンナ、誘拐に殺人、何でも身近にあった。
だけど俺は、回復能力と忍術のお陰で、そのアンダーグラウンドの世界も渡り歩くことができた。
そんなときに出会ったのがレミィだ。
あいつは、ゴミ溜めのようなところで生きていた。
レミィは何かの種族のハーフらしく、スラムのコミュニティにすらも入れてもらえず、娼館で働く事もできず、たった一人で生きて来たらしい。
生計は地下迷宮にソロで潜って立てていたらしいが、俺が出会った時は、地下組織のヤツラに捕まり、性奴隷にされていた。
地下格闘技のリングで、来る日も来る日も観客の前で猟奇的に犯され続けていた。
レミィは見た目子供だが、アレで50歳は越えているし、何よりも回復能力が高かった。地下組織の変態達に猟奇的にもてあそばれても、体が壊れなかったのだ。まるで、俺と同じような能力だ。
俺はレミィが欲しくなり、その地下組織の幹部を全員殺し、そしてレミィを手に入れた。
レミィは、まるであのドワーフ女のように、底抜けで明るかった。孤児でずっと一人で地下迷宮を探索し、そして変態達にレイプされ続けていても、心が壊れていなかった。
ああ、そうだな。俺はとっくに壊れていたけど、自殺しなかったのは、きっとレミィがいたからだ。
あいつ、抱いてやると可愛いんだよなぁ……あいつ、なんで、幸せにならなかったんだろう。
ああ、レミィとのセック○を思い出す。チン○立ちそう……
『シヌコトハユルサヌ』
うるさいなぁ。いつもは、喰らえ、殺せ、犯せとかばかり言うくせに。今回は、絶対に言うこと聞いてやらん。
俺は、今から死ぬ。ざまあみろ……
◇◇◇
「これ、生きているのか?」
「小田原、一応だけど、それ以上近づかない方がいい」と、マジックマッシュルーム娘のシュシュマが言った。
「まさか、自分にもうつるのか?」
「こいつみたいになることは無いけど、胞子を吸い込むと肺炎とかになったりする」と、シュシュマが返す。
「分かった。ふん。こいつ、笑ってやがるぜ」
「腰振ってるし。きっと、エロい夢を見てると思う」
今、シュシュマと小田原亨の足元には、大量のキノコが生えている何かが転がっていた。
その物体は、僅かに動いていたが、もはや、誰が見ても人とは思えない姿になっていた。
やがて、そのキノコの山に、青白い炎が降りてきて、ごうごうと燃やし始める。
「あれは鬼火。多分、千尋藻さんらの後始末」と、シュシュマ。
「戻ろうぜ。ここは、もう大丈夫だろう」と、小田原亨が言った。
「うん」
小さなモンスター娘と、光る空手マンは、この場を後にした。
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