第122話 護衛初日の夜
夜は、歓迎の意味も込めてバーベキュー大会をした。今ならお酒や生鮮食品も補充できるし、今日は飲み食い放題だ。
俺と同じテーブルに、ファンデルメーヤさんとサイフォンとベルが座る。
ハルキウ少年は、歳が近いネムやヒリュウ、マルコらと一緒のテーブルで食べている。若者は、若者に任せよう。
「さて、初日ね。お疲れ様」と、ファンデルメーヤさんが言った。行儀よく、小さめのお肉を口に運んでいる。
「そですね。この荷馬車が出来てから初陣です。しかし、よくこんな護衛の素人に頼もうと思いましたよね」と、言ってみる。
この人は、自分の鑑定スキルの結果だと言ったが、その辺りの探りを入れてみる。
ファンデルメーヤさんは少し遠い目をして、「この世界には、ヒトより上位の存在がいる」と返した。
この人は、高レベルの鑑定持ちなのだ。この世界のレベルは10がマックスなので、彼女の8というのは相当な高レベルだ。一体、彼女には、俺はどんな見え方をしているのだろう。ひとまず、すっとぼけることにする。
「七曜の神とか神獣とかのことですかね。契約で人に力を貸し与えているっていう」と、返す。
ファンデルメーヤさんは、俺の腰に付けている短剣を見ながら、「あなた、契約者ね。もうすでに、ヒトではないわ」と言った。
ふむふむ。おそらく、俺が軟体動物であることは見抜いている。だが、俺は契約者ではなくて本人のような気がするのだが、あまりべらべらとしゃべるようなことでもない。契約者というのは彼女の早とちりだろう。
なので、「ご想像にお任せします」と返した。
「この世の中には、個人で戦局を覆すような者達がいる。あなたは、おそらくそう。しかも、水系ね。ララヘイムと親和性があると思ったの。恐ろしいことに、このパーティには、後二人ほど特別な存在がいるようだけどね」と、ファンデルメーヤさんが、ケイティ達のいるテーブルの方を向いて言った。彼女には、あの二人がどのように見えているのだろうか。
この世界に呼ばれた時に、何者かに改造すると言われ、趣味でエロスキルと素手ゴロスキルをゲットした二人だ。だがしかし、見る人が見たら、尋常ではないのだろう。
俺が何も言い出せずにいると、「あなた達って、一体何者なのかしら。まあ、今回は私達の護衛ですから、こんなに安心できることはない。はぁ……我が家に女児がいたら、この機会に情を掴めたかもしれないのに。スイネルに着いたら、父上に相談しようかしら」と言って、お酒をちょこっと口に付ける。この人の父親はララヘイムの国王だったはず。まだ現役なのか。
話が変な流れになりそうだったため、話題を変えることにし、「契約者のことですが、他に結構いらっしゃるので?」と言ってみた。
「そうね。ご存じないかしら。有名どころで言うと、我が国の英雄チータラね。今は対エアスラン戦線で籠城しているわね」
彼女の言う『我が国』とは、ウルカーンのことだ。チータラという名前は、ちょくちょく耳にしている。
「確か、防御系の方とか」
「そうよ? 神獣アナグマとの契約者で、そのスキルは城壁と味方を堅くするという全体バッファーなのよ」
まじかよ。いるのか全体バッファー……
「ノートゥンの聖女は大海原の覇者クラーケンの契約者だし、ララヘイムのとある一族は、代々シードラゴンと契約している。エアスランやティラネディーアにもごろごろいるわ」
聖女はクラーケンだったのか。欠損回復などのチートスキル持ちだったかな。
「うわあ。神獣種がいっぱいだ」と言って、お酒を口にする。
しかし、気が遠くなりそうだな。俺はチートかもしれないが、決して油断はできないということか。
「神獣とは、動物に人の魂が乗り移って魔獣となった存在が、長生きして力を付けたものと言われている。七曜の神や地下迷宮の支配者とされる吸血鬼とは別と考えられているけど、本当のところは分からないのよ。七曜の神も神獣で、彼らが人を使って
ふうむ。宗教というやつは、解釈次第でどうとでもなるところがある。俺は、以前ウルカーンで入った美術館を思い出す。そこには、神話をモチーフにした石堀のレリーフがあった。
「そういえば、山ヒルの巫女は? まさか山ヒルが神獣種で、巫女はその契約者とか?」
「彼女もまた謎ね。あなたが言うように、神獣山ヒルの部下という人もいれば、山ヒルの化身そのもので七曜の神と同格だと言う人もいる。実在はしているらしいけど、本当にたまにしか話を聞かないのよ。それこそ十年に一度とかね」
ふむ。不思議な存在もいたものだ。神敵山ヒルの巫女。
その後、ファンデルメーヤさんから昔話をさんざん聞かされた。この人はお話好きのようだ。学生時代に地下迷宮に潜った話。ウルカーンに嫁いできて、火系の魔術を練習した話などなど。サイフォンとベルがフォローしてくれたこともあって、あっという間に時間が過ぎる。
毎日宴会という分けにはいかないが、今後も、折を見て食事会をしてもいいかもしれない。
周囲を見渡すと、みんなそこそこ飲み食いした感じで、宴もたけなわモードになっていた。
さて、今日はお酒もそこそこ飲んだし、そろそろ寝ますかね。俺達は、みんなで後片付けをすることにした。
・・・・
後片付けがぼちぼち終わり、それぞれの寝床に散っていく。
さて、今日はどうしようかと考えていると、ギランが近づいて来て、「ねえ、今日はどこで寝てるの?」と言った。
後から合流する気なのだろう。
「いや、決めていないけど」と、返した。
ギランは、「あらそう。私これから夜警だから、終わったら体温貰いに忍び込もうと思ってんだけど」と言った。
「今日は15歳男子がいるからなぁ。自重しようか迷ってる。」
なお、俺には、実は小学五年生の男の子がいたりする。もちろん、日本の話。あいつはまだ女性に興味はないようだ。ただ、その昔とあるゲームキャラをずらりと並べて、どの子がいい? と聞いたら、おっぱい大きめの気が強い感じの女性を選んだ。やつはなかなかエロいと思うのだ。
そんなことを考えていると、「ネムがいるのに今更じゃ? あの子もよく覗いているし」と、ギランが言った。
ま、まじかぁ……
俺はネムのお尻を撫でまくっているからお
ネムは15歳くらいだけど、別に生娘じゃない。
本人の思いがどうなのか分からないが、彼女は男性経験があるのだ。少しうかつだったかと思いながらも、この世界はそれが普通なのかとも思った。今悩んでもしょうが無い。
「まあ、ネムならいいや。じゃあ、今日は何処で寝るか……」
俺がそう言うか言わないかで、ギランの先、トイレ付近からギラギラと突き刺さるような視線を感じる……
それは、ムカデ娘のセイロン。今日、俺はあまりトイレに行かなかったからな……
なんやかんやと、俺とセイロンの関係も長い。
セック○に関しては、昼夜問わず、しょっちゅうしてる。だって……めーきは偉大なのだ。
彼女も、俺の事は好いてくれている分けで……これは、WinWin……ではないよなぁ……日本人の貞操観念からすると。
でも、ここは日本ではない。そう、ここには嫁が居ないのだ。
なので、「セイロン、一緒に寝る?」と言った。
すると、セイロンは満面の笑みを浮べる。
どうやらOKのようだ。ベッドのセイロンは情熱的だからなぁ……彼女のクールな見た目からは全く想像出来ないけれど。それでいてあのめーき、おっさん的にはすぐにどこかに行ってしまうので、本当に彼女が満足しているのか不安になっている今日この頃だ。
セイロンは俺の腕を取って、「こっちですよ」と言った。
「じゃね~」
ギランが手を振っている。こいつは、俺が別の女性とセック○しても嫉妬しないようなのだ。
独占欲が欠落しているというか……まあ、その感覚はタケノコのモンスター娘特有のものなのかもしれない。
・・・・
セイロンと一緒に寝床に入る。
彼女の寝床は、モンスタ-娘達の超巨大荷馬車の床下だ。
ここは狭苦しいが、何故だかその狭苦しい空間が安心出来るのだ。それは俺が貝だからか、それとも元々なのか……
一緒に服を脱ぎ捨てながらベッドに入ると、セイロンは無我夢中で俺と体を重ね会わせる。
「す、好き、好きです。お慕い申し上げます。だから、だからください……」
セイロンは高ぶってくると、しきりに愛の言葉を口にする。普段はクールだから、そのギャップがたまらない。
俺がセイロンを正面から抱き締めると、感極まったセイロンが俺の首筋に牙を立てる。そして、どくどくと毒を流し込む。
そうするとセイロンは、小刻みに痙攣を始める。軽く行ったようだ。
「して……してくだざい………………ああ、ああ、きて、きてください……」
俺とセイロンは、激しく絡み合う。
お互いの体が、一番良いと感じる形を求め合う。
『うわぁあ!』
それは、男の声だった。おそらくまだ若い。
セイロンとお互い良い感じになってきて、さあやるぞという瞬間だった。
俺は、その変な声に対し、この辺一帯の何もかもを水で押し流したくなったが、ぐっと我慢する。
というか、今行ってしまった。俺は、セイロンに瞬殺されてしまった。
もはや外の叫び声はどうでも良くなった。
だけど、「行ってくださいまし。何かトラブルです」と、俺のお腹の下にいるセイロンが言った。
俺は、少しだけ冷静になっていたため、徐々に今の現状を把握し出す。
敵襲か? いや、夜を徹しての見張りは立てている。さっきの声は見張りの声ではなく、寝室スペース近くから聞こえた。まるで、
一体、何なのだろうか。まあ、今は重要な護送任務中だ。敵襲だったら目も当てられない。
俺は、取る物も取り敢えず、寝床から這いずり出て、声がした方に駆けて行った。
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