第111話 アリシアとサイフォン
「おう、千尋藻」と、アリシアが言った。
あいかわらずの綺麗な銀髪。がっちりした体。今日はスカートタイルのメイド服だ。
今日のアリシアは、偶然居合わせたという感じではなく、天幕の外で待っていた感じだ。
「おうアリシア。お勤めご苦労さん」と、返す。思えば、俺はほぼ毎日アリシアとは顔を会わせている。
アリシアはゆっくり歩きながら、「輜重隊、安く請け負ってくれたみたいだな」と言った。
俺は、何となくアリシアの歩みに合わせながら、「それでも、ちゃんと儲けているんだぞ?」と返した。
アリシアはさらに歩きながら、「こういう時は、値上がりとかするらしいんだ」と言った。
「ほう。まあ、友情価格と思ってくれ」と、応じる。別にこいつらからがっぽがっぽ儲けようとは思わない。というか、サイフォン達が毎日40から50万くらい稼いでくるし。
アリシアは、すたすたと人気の無い天幕が沢山並んでいるところの裏手に行くと、エリエール子爵の旗が立ててある基礎部分に手を付き、「いいぞ」と言った。
「ん? どうしたんだ?」
「いや、いつぞやの約束事だ。私は、お前が無事に戻ってきたら、お尻を触らせてやると言った」
そんなこともあったかもしれないな。
「触っていいぞ」と、アリシアが斜め上を向いて言った。
アリシアのお尻は魔法のお尻……柔らかさと張りを兼ね備えた奇跡のお尻……きっと、尻の筋肉と食事のバランスがいいのだろう。
俺は、フラフラと柱に手を付くアリシアの後ろに回る。それに合わせ、アリシアはスカートをまくり上げる。パンツははいているが、形の良いお尻が露わになる。
ぐっとくる。こいつは、自分の尻が良い尻だというのが分かっている。そして、俺がそれを好きな事も。
今の俺にはサイフォンやギランやセイロンさんらがいるが、彼女らとは、別に操を立てているわけではない。俺とアリシアのお尻友達歴は長いのだ。触るくらいはいいだろう。
手を伸ばしてするりと尻肉を触る。出会った時から全く衰えていない、すごい尻肉だ。全然飽きない。
「お前、また何か粗相をしたのか?」と、聞いてみる。
アリシアは澄ました顔で、「失礼なヤツだな。そんなことはしていない。ウルカーンでは、剣術以外の仕事をさせて貰っていないからな」と言った。そっか。ようやくそれに気付いたかトマトよ。
「そっか……」
「千尋藻、私のお尻は気持ちいいか?」
「そうだな。凄い尻だ」
「好きだ、千尋藻」
え? そういえば、いつぞやの出来事で、こういうお遊びをやったことがある。冗談でずっと好きだと言われ続けたのだ。
「お前は、またそんなことを……」
「この戦争が終わったら、私と結婚して欲しい」
「おまっ、それはフラグなんだぞ?」
アリシアは俺の言葉を無視し、「結婚がOKなら……そのまま前を触ってくれ」と言った。
………………俺は、柄にもなく固まってしまった。これは、こいつは本気だ。
男女間に、友情なんて存在しない。特に、若いうちは。
そんなこと、分かっているつもりだったのに。子を国で育てるモンスター娘と違って、アリシアは普通の価値観を持っている。それならば、情を交して行き着くところは夫婦なのだ。俺は、そんな単純なことも見落としていた。
アリシアは柱に手を突いたままこちらを振り返り、「どうした? 前を触ってみてくれたら、私の気持ちが分かるはずだ」と言った。
「アリシアよ。俺は……」
「お前は人間では無い。私は、別に子孫が欲しいわけじゃない。重婚も許そう」と、アリシアが言った。
俺は人間では無いが、多分、子供はできるのだ。そういう魔法の体を持っていると思う。それから、この異世界での俺は、未婚だと思っている。だから、今は誰とセック○してもいいと思っていた。多少ノリでセクハラしてもいいと思っていた。だけど、その中で、結婚を希望する女性が現われた場合……俺は……
「ふふん。迷っているな? 即答しないくせに、お前の手は、私の尻から離れていない」と、アリシアが言った。
「これは、魔法の尻だからな……」
「まあいい。私はどうせまだまだ未婚だ。お前の女達から重婚OKを取り付けたら、私を貰いに来い。トマト男爵のことは気にするな」と、アリシアが言った。色々とアリシアの妄想が膨らんでいる気がする。俺はサイフォンらと婚約している訳では無い。まあ、今その辺は些細なことだ。
俺は、「そんなの、何時になるか分からんぞ?」と言った。
俺は、アリシアの事は好きだと思っている。だが、俺は、戦争に参加するつもりは無い。半分軍人のアリシアとやんごとなき関係になれば、俺はこの戦争を無視できなくなる。
トマト男爵のことは気にするなとは言っても……
アリシアは少し口を尖らせて、「返事が遅れても、私は大丈夫だが、この尻の触り心地が悪くなる前の方がいいんじゃないのか?」と言った。
「そ、それもそうだな」
「そっか。嬉しいな。と、いうわけで、前を触ってもいいんだぞ?」と、アリシアが言った。こころなしか、少しだけ足の開きが大きくなった。
「え? お前、それは婚約した事に……」
アリシアは、口を尖らせたまま、「ちっ。変な条件出さずに、普通に誘惑すればよかったな」と言った。
俺が無言でお尻をなでなでしていると、アリシアは、「戦争さえなければなぁ。戦争が無ければ、お前と楽しく、今までの関係で過ごせたのにな」と呟いた。
折れそうだ。
「キスしてくれ。キスしてくれたら、後2年くらいは結婚せずに、お前を待っていてやる」と、アリシアが後ろを振り向いて言った。
ま、まずい。俺は、負けそうだ。
ほぼ毎日他の女性らとやっているというのに……だけど、アリシアと男女の約束をした場合、俺はウルカーン戦に本当に無関係でいられるのだろうか。ウルカーンが負けそうなら、介入してしまいそうだ。俺の力は危険なのだ。このチートは、この世界の国家間の争いに、使っていい力じゃないと思うのだ……
俺が考え事をしていると、アリシアは俺にキスをした。そして、俺の唇をきつく吸った。
俺は、アリシアを拒否しなかった。いや、できなかった。
俺は、この深海の怪物は、この
アリシアは一旦口づけを止め、体をこちらに向けて俺を強く抱きしめる。
そして、もう一度キスをした。
◇◇◇
2年、2年かぁ……
俺は、2年間のうちに、アリシアを迎えに……そうすれば、アリシアは俺の伴侶となる。あの口ぶりからすると、別に排他的に夫婦になるというふうでは無かったが……
でも、キスしてしまったからなぁ。
ぽけぇとしながらロバの飛沫山号の横を歩く。
俺の、これまでの女性遍歴を思い出す。
まずは嫁。日本にいる嫁。子供は二人いる。結婚当初はラブラブだったが、二人目の子供が生まれてからは、セック○レスだ。それは、ごく一般的な日本の夫婦の形……しかもここ数年は無視をされ、口を聞いてくれない。
だけど、義理も情もあるから離婚をしようとは思わないし、お金もないし社会的地位を失うのが怖いから不貞もしない。
日本の俺は、そんなごく一般的なおっさんだった。
そんな俺が異世界に行った。それに伴って、どうも体がチートな化け物になっている。
しかも、この世界には完璧に避妊できる魔術がある。性病の噂も聞かない。だからなのか、こちらの女性は概ね性におおらかだと思う。
そして目の前には無邪気なモンスター娘達……俺はたちまち彼女らの虜になり、セック○しまくった。
アンモナイト娘のピーカブー。ミノタウロス娘のムー。オオサンショウウオ娘のギラン。ムカデ娘のセイロンにトカゲ娘のシスイ。それからライオン娘のナハトにデーモン娘のジーク。
キャラバン隊10人中、なんと7人だ。セック○したこと無い残りは、マジックマッシュルーム娘のシュシュマとデンキウナギ娘のナイン。そしてウマ娘だけだったりする。
極めつけはララヘイム11人衆。なんと11人だ。チートな体でなければ、逆に女性恐怖症になっていてもおかしくない数だ。
それからアイリーン。彼女とは一日限りだった。だけど、彼女の覚悟は忘れない。その後、彼女には色々あったけど、彼女は今も気丈に生きている。これからも是非頑張って欲しい。というか、俺は彼女ではなく、モンスター娘達を選んだのだ。罪悪感が無いことも無いが、後悔はしていない。
それから何気にパイパンともした。当時は
最早日本の貞操観念はないし、異世界に嫁がいる事も完全に棚に上げている。
日本で、俺の行動が知れたとしたら、きっと噴飯する女性団体がいる事だろう。
ほとんどハーレム状態だからな。結婚とか契約はしていないから、単に特定多数異性交遊だけどさ。
「あの、どうなさったんですか? 千尋藻さん」と、俺の隣を歩く女性……マツリが言った。
この子は最初少年と勘違いしていたんだっけ。確かにおっぱいは膨らんでいないし、お尻も小さいけど、女性と認識すると女性にしか見えない。
「いや、少し考えごと」と、応じる。今は仕事中だ。しっかりせねば。
「あの、私、バッタ男爵の娘になっちゃいました」と、マツリが言った。
「そうみたいだな。サクセスストーリーだな」と、返す。こいつは平民の孤児だったのだ。どういう経緯か、バッタ男爵が拾って、身の周りの世話をさせて、そして今は男爵令嬢だ。
「もう、そんなこと聞いているんじゃありません。でも、今はいっか。私はどうせ、アリシアの後だろうし」と、マツリが言った。
俺は、マツリが何を言いたいのか察したが、気付かないふりをした。
ぴゅ~ひょろろろろろ…………
大空を猛禽類が飛んでいる。アレはトンビかな? 普通は海沿いにいるイメージだけど……
バッタの僕っ子改め、マツリ男爵令嬢は、「とても珍しいですけど、アレは魔獣だと思います。戦争では、とても重要な情報は、ああやって伝言を飛ばしているって聞きます」と言った。
そうか。魔獣は人の言葉を解すし、言霊の乗った鳴き声を発するから、優秀なテイマーがいれば、伝言や手紙を託す事ができる。今のタイミングなら、きっと戦争の情報だろう。この世界では、ああやって情報をやり取りしているんだろう。まあ、空飛ぶ魔獣は、ほんの一握りだろうけど。
俺は、「そっか」と言って、飛び行くトンビを目を細めながら眺める。
「そうなんですよ」と、マツリが嬉しそうに返した。
・・・・
「いつも通り。それでいいのではありませんか?」と、俺の上のサイフォンが言った。
サイフォンは、俺が輜重隊から戻った後、俺の様子がおかしいことに気付き、無限セック○の刑に処するとか言って、さっきまで一緒に汗を流していた。そして、今日の件を打ち明けた。今日というか、俺の女性関係もろもろの事を彼女に話し、意見を聞くことにした。その回答がいつも通りでよいというものだ。
「アリシアも、戦争前夜で少し不安になっているのでしょう。心の支えが欲しいのです。あなたは、この戦争を生き抜くための、心のより所なのでしょう」
「そうか。俺は、ハーレムを作る気はないんだけどな」
「貴族でもないあなたが、ハーレムを持つ必要はありません。あれは、正妻とか、第何夫人とか、愛人とか、順位を考えなければなりません。貴族は、子孫の利権の分与を考えないといけませんから。何かと面倒なのです。当面は、今のままでいいではありませんか」
「でも、しまくっているままでいいのかなぁ」
「モンスター娘の大半は、性に興味があるだけ。若干名違うのがいますけど、それは気にしなくていいと思います。彼女らは、ずっとそうして生きて来たのですから」
「モンスター娘たちはそうか」
彼女らは、島外の男から精をもらい、子をなしてその子は国家が育てる。生まれる子供は女性だけだ。そしてその子が歳頃になると、またキャラバンを組んで男を捜す旅にでかける。
そして、タケノコの人達は、実は戦闘民族……強い男がいたら、とりあえず寝てみたいと思うやつもいる。シスイとかムーがその手合いだ。
ピーカブーさんとセイロンは本気で俺の子が欲しそうだけど。ギランなんかはよく分からない。一緒には居たいみたいだけど。
「私達11人も似たようなものです。我達はあなたの騎士。あなたが望めば、自分の体を差し出すこともする。騎士の契りは全員と交しましたし。まあ、私は好きであなたと寝ておりますが」
サイフォンはそう言って、指輪をはめている方の手で俺の胸部を撫でる。
サイフォンの情はどうなんだろう。今はセック○を楽しむだけかもしれないけれど、いずれ子供が欲しくなるのではないか。そうなってくると、やっぱりハーレムに……
「もう一回しましょ? アリシアと、忍者の娘が合流する前に、少しでも多くの情を移しておきませんと」
サイフォンはそう言って、俺の上に跨がってくる。
「俺は、本当に駄目なヤツだな」と言って、目の前にいるサイフォンを抱きしめた。
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