第48話 ウォーターベッド
姦しい11人組の処遇に関しては、サイフォンを信じることにした。殺処分も忍びないし、こいつらは国家の意思で戦争に参加していたのであって、別に犯罪者ではないのだ。そもそも、こいつらは俺がネオカーンに乱入した所にたまたま居合わせただけで、別に個人的な恨みがあるわけでもない。
それに、このサイフォンという女性、少しギャグっぽい所はあるが、カリスマ性がありそうな気がするのだ。俺が彼女にマスターキーを振るおうとした時、他のメンバーが自然に体を壁にしてきた。サイフォンを助けるために。そんなこと、咄嗟に出来るなんて凄い。その点で、俺はサイフォンというか、サイフォン一味に少し一目置いていた。
ここは、サイフォンという人物を信じることにする。
もちろん、他組織、特に貴族連中にも事情を説明し、意外にもすんなり理解を得て、ウン○水漬けの11人を開放することにした。
一気にぶちまけると辺りが臭くなるので、人だけ取り出し、ウン○水の壁はとりあえず放置することにした。
・・・・
一人づつ、俺が手を握り、ずるんとウン○水壁から引き抜く。まるで、○ンコのように……
開放された11人は、即座にお互いに洗浄魔術を掛け合った。水魔術士だから、洗浄魔術は得意なのだと思われる。
その点では、便利な集団なのかもしれない。洗浄は毎日色んなところで使うからだ。
その後、衣類と寝具は行商人から買った。というか、ナナセ子爵達が、彼女らに服を返して、自分達の分を軍票を出して買った。衣類や靴で足りない分と、サイフォン達の寝具は救出作戦のお礼の一部として、ナナセ子爵に買って貰った。換えの下着はシラサギまでお預けらしいが、洗浄の魔術が使える彼女らだったら、当面大丈夫だろう。
・・・・
その後は、今日はもう遅いし、明日も移動があるため寝ることにしたのだが……
だが、ここに来て問題が発生する。彼女らの寝床だ。毛布は買ったが、寝床が無い。
しばらく、こいつらの寝床は地面か、などと思いながら、自分の寝床に行く。
俺の寝床は、小田原さんとジェイクが組み立てたテントの中にある。幅1メートルくらいしかないが、野営だし十分だ。
なのだが……俺スペースには、とんでもないものが横たわっていた。
今、俺の目の前には、11人全員が眠れるだけの大きさのベッドがある……
それは、水のベッド。11人分のベッドにしたらしく、ベッドがテントの屋根から余裕ではみ出している。どこかが凹むとどこかが凸るという仕様の水ベッド。凄い。
立て幅は2メートルも無いが、横幅が10メートル近くある。あの水壁より少し劣る程度の水量だ。どうせなら直径2メートルほどの円形にしてもらったら楽しかったかもしれないが、効率を考えるとこの形がいいのだろう。
「どう? 私達の水魔術ベッド。慣れると癖になるわよ」と、サイフォンさん。ドヤ顔だ。清楚な顔をしているくせに、どこか俗っぽい人だ。
それに、彼女は全裸だ。まったく恥ずかしがっていない。水色髪の長い髪を、邪魔にならないように、後ろで束ねている。
というか、このベッドの上にいる女性らは、全員全裸だ。一体どういう状況だ?
その全裸集団の中心に、何故か正座している娘が3人ほどいた。彼女らは、赤面しながらも、もじもじと嬉しそうな顔をしている。
「どんな状態だ? これは」と、サイフォンの方を見て言った。
サイフォンは、正座女性の胸を揉みながら、「え? 今から初夜でしょ。あなたが私達を選んでくれたお礼。この子らは処女だから、最初に貫通させてあげて」と言った。
「アナタ達、よかったわねぇ」「うん、頑張る」「見ていてあげるから。頑張って」「全員に回ってくるかな」「我慢我慢我慢……」
この狭いスペースで、全員が全裸で動き回る。女という生き物は、ある一定数集まると、恥ずかしさが無くなるのだろうか。
俺は、この集団の中に入るべきか否か葛藤する。とても葛藤する。やっても、結構楽しいような気がしているが……
だがしかし、俺は別に処女だからと言って喜ばない。というか、11人と一緒にするなんて、なんか嫌だ。ベッドが大きいせいで衝立が足りず、覗かれ放題だし。
「……酔っ払って知らないおっさん10人と11Pする女は嫌だ。これは、俺が貰っていく」と言って、水魔術製ベッドをズルリと抜く。
ベッドの上にいた裸族11人が地面に滑り落ちる。
「え? マジで? ひっど。ひどくない?」「ぎゃあ、サイフォン様のせいで処女消失の機会が飛んだ! どうしてくれやがりなさるんですかぁ」「サイフォン様のせいでベッドがぁ。せっかく暖めていたのに」「もう一度造りましょう。きっと体を許してくれる日が来ますって」「やった。まだ処女だ」
こいつらは元気だなぁ。まあ、放っておいても、また水魔術ベッドを造って元気に眠るだろう。
ところで、先ほどトイレ付近で俺を待ち伏せしていたムカデ娘のセイロンが、斜め下を向きながら、とても恥ずかしそうに、『噛ませてください』と言って来た。
彼女は毒噛みつきをすると、もの凄い快楽が来て絶頂を迎えるので、『噛ませてください』というのは、すなわち、『わたしをあなたでいかせてください』と言っていることに等しい。
俺は、水魔術製のベッドをズリズリと引きずりながら、彼女の寝床である荷馬車の床下に向かっていった。
あの床下の狭い寝床は、案外居心地が良かったりするのだ。
狭いスペースで、今晩は彼女とぎゅうぎゅうになって楽しむのだ。この、超巨大水魔術ベッドで。きっと楽しいはずだ。微妙に暖められていて気持ちいいし。
俺は、仲間にした姦しい11人の事は一旦棚に上げて、ムカデ娘の寝床に歩いて行った。
・・・・
朝、太陽の光で目が覚める。
ここには遮光カーテンなんて無いから当然だ。
朝は少し肌寒いが、今は結構ぽかぽかだ。水のベッドがいい感じに保温してくれているし、俺の腕の中には、クールビューティがいるから。
それは、ムカデ娘のセイロン。所々に黒い外骨格に包まれた彼女。昨日も散々噛まれて毒を注入された。彼女は、俺に噛みついて毒を大量に俺の体に注入しながら、何度も何度も絶頂を迎えた。
クールビューティの彼女が破顔するのは何とも言えない満足感があり、ついつい痛さを忘れてしまう。彼女も満足したようで、とても幸せそうな寝顔を見せてくれる。
などと思いながら、セイロンの寝顔を見つめる。
セイロンの顔を見ていたら、視線に気付いたのか、彼女が眼を開けてしまう。
彼女はにこりと笑って、「昨日は、私の所に来てくれてありがとう」と言った。クールビューティさ全開の良い笑顔だ。
俺が気さくな返答を出来ないでいると、彼女はクスリと笑って、「私は、朝餉の支度があります。起きませんと」と言って、少し手足の力を入れる。
俺は、名残惜しいが彼女を抱きしめる腕の力を抜く。
すると、彼女はするりと水のベッドから抜け出して行く。ああ、名残惜しい。一気に体の体温が下がったような気がした。
と、思ったら、そのスペースにするりとアイツが入って来た。
オオサンショウウオ娘のギランは、俺と体を密着させると、「おお~暖ったけぇ」と言った。
ギランの体は少しひんやりとしていた。こいつ、変温動物じゃあるまいし……いや、両生類は変温動物だったっけ? まあいいや。
ギランは、俺の胸に顔を埋めると、俺から体温を奪うように体、腕、足、そして尻尾を俺にぴったりと引っ付けてくる。なんだか可愛い。
「ギラン、お前達、これからどうするんだ?」と、聞いてみる。まだ、キャラバンの身の振り方を聞いていない。しばらくは俺が馬車を引っ張らないといけないから、一緒にいることになると思うけど。
ギランは、「知らない。このキャラバンの責任者はジークだし、任せてる。でも……いや、なんでもない、かな……」と言って、眼を閉じる。
さて、これから俺達はどうなるんだろうな……
俺は、何となく無言でギランの頭やら背中やらをなでなでしてあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます