第42話 潜入! ネオ・カーン
「何だテメェは!」と、金髪の大男、バーンが叫ぶ。地面に刺していた大剣を引き抜き、肩に担ぐ。
地面に降り立った七三分けは、「私はケイティ。ふむ。やはりレイプ現場でしたか……」と言った。その目は、複数の少年を同時に相手している領主夫人に向けられていた。少年達の大半は、感電して地面に倒れている。
バーンは無言で大剣をケイティに向ける。
ケイティは、その殺気を意に介さず、「私の夢の一つに、レイプ現場に颯爽と助けに入ると言うものがありました。一つ叶いましたね」と言った。
バーンはそのまま大きく踏み込み、目の前のケイティに斬りかかる。
パァン!
空気を切り裂く破裂音。強烈な音と光で、バーンは斬りかかるのを躊躇した。
「うお!? 雷か! おもしれぇ。エアスランの俺に雷で勝負しようってか?」と、バーンが言った。
「ふむ。私は、男と汗臭く遊ぶ趣味はありません」と、ケイティが言った。
バーンは、大剣を持ち直し、「はっ! お前が何者か知らねぇが、殺してやんよ」と言って、再び大きく踏み込んだ。
握り締めるその大剣は青白く輝き、バチバチと放電していたが、対する七三分けの両腕も、同じ様に青白く輝いていた。
◇◇◇
ケイティがレイプ嬢を助けに行くと言って、バターを飛び降りてしまった。俺と小田原さんの二人は、疾走するバターの背中にしがみついている。
「ケイティ大丈夫かよ!」と、後ろの小田原さんに言った。
「あいつは不死身だ。後で回収すればいいだろう。死にはしない」と、小田原さん。不死身でも、例えば首を切り離されて遠くに持ち去られたら、流石に活動できないというか、死ぬと思うのだ。まあ、今はケイティを信じるしかない。
「そっか、おいバター! アイリーンはどこにいるんだ?」
「わんわん(今追ってる。あの時の屋敷にはいないと思う。外に出たんだ)」と、バターが言った。あの屋敷とは、少し遠くに見える大きな屋敷で、領主館だとか。バターは、そこから脱出してきた。だが、そこにはもうアイリーン、すなわちナナセ子爵はいないらしい。
「どこだか分かるのか?」
「わんわん(臭いをたどればな)」
バターはそう言って、走るスピードを落とし、臭いをたどっていく。それは、軍区の方に続く道。
俺達は、ナナセ子爵の後を追って突き進んでいった。
◇◇◇
ここ、ネオ・カーンの街の軍区は、平民区と貴族区の間にあり、その奥には城壁と一体となった砦があった。
スタンピード防衛と暴動鎮圧を行うため、一時はバラバラになったネオ・カーン守備隊の一部は、それがエアスランの奇襲だと分かると、直ぐに隊を編成し、守備を固めつつ、最終的には武器や魔道具、そして食料の備蓄がある軍区の砦に籠城するに至った。
籠城している兵士の数は、およそ300人。対するエアスランの奇襲隊は当初200人であったが、奇襲隊の一部は領主館にいた白の軍百人の討伐に向けられ、それからバラバラになっていたとはいえ千人近い守備隊との交戦で3割近くが消耗していた。
だが、ネオ・カーンに潜入していたエアスランのスリーパーや協力する地下組織達と合流し、今は
籠城する300人対攻撃側300人。通常は攻撃側の方が人数が多く必要とされ、奇襲効果もなくなった今、エアスラン側は、砦を攻めあぐねていた。
敵が籠城する砦の前にて、エアスランの将、クメール将軍は腕組みをして、「ふん。ここで無駄に俺の軍を消耗させることもない。数日後には本体が到着する。こいつらは、それまでの運命だ」と言った。
「だけど、何時攻めて来るかも分からないんでしょ? あいつらの火炎魔術は強力よ。舐めてはいけない」と、隣に控えるサイフォンが言った。
クメール将軍は、「だから、お前達ララヘイムの援軍がいるのだ。それに……着いたか」と言って、にやりと笑う。彼の目線の先には、数台の荷馬車が到着したところであった。
中から出てきた兵士が、「出てこいオラァ!」と怒声を浴びせ、ロープを無理矢理引っ張る。
荷馬車の中から無理矢理引き出されたのは、首をロープで繋がれた女性達。5人くらいが一束になって、数珠つなぎにされている。全員が服を着ておらず、顔や体中アザだらけで、土などで汚れている
そして、首を数珠繋ぎにされた一番後ろには、ナナセ子爵、アイリーン・ジュノンソーがいた。彼女も例外なく全裸にされ、顔や体が腫れ上がり、体中何かで汚れ、悪臭を放っている。両腕は後ろ手で縛られているようだ。
「ああ、臭いなお前達。兵士に散々犯されたか。だが、まだ終わっていない」と、クメール将軍が言った。
数台の荷馬車から、15人ほどの同じ境遇の女性が引っ張り出されると、ティンガロンハットに鞭を持ったオレンジ色の髪をした女性が歩み寄る。
彼女の後ろには、巨大な黒いトラと、大きな猫。そして、数十匹の犬がいた。犬は野良犬のようで、毛並みもボサボサで栄養状態も良くないようであった。
クメール将軍は、「こいつらを砦の前に連れて行け。そしてパイパン」と、鞭を持った女性に声を掛ける。
声を掛けられた女性は、少しビクッとなるが、直ぐにニコニコと笑みを浮べる。
「分かっているな。こいつらに、犬を
「はい……」と、鞭の女性が応じた。
数名の兵士が、数珠つなぎの女性らを引きずるようにして、ネオ・カーン守備隊が籠る砦の前に連れて行く。女性達は一列に並ばされ、ライトの魔術で照らされる。
そして、テイマーであるパイパンが、「貴方達、いいわよ」と言った。
黒いトラと黒い猫に追い立てられる様にして、野犬の群れが虜囚の女性達に向かう。
「オラァ! ちゃんとケツ出せコラァ!」
兵士達が、縄で首と両腕を縛られた女性達を地面に伏せ、腹を蹴り上げて無理矢理お尻を上に向けさせる。
その時、砦から火炎弾が数発飛んで来るが、それはララヘイムから来た水魔術士がウォール・アイスと呼ばれる障壁で防いでしまう。
クメール将軍は、「くくく、パイパンよ、その貴族には大きいヤツを入れてやれ」と言って、自身は隣に侍らせていた、GGと呼ぶ女性の胸を触り出す。
パイパンと呼ばれた女性が何か命じると、大型犬がのそりと動き、ナナセ子爵の後ろに付く。
クメール将軍は上機嫌で、「あ~ははははは! お前達、砦の兵士に良く見せつけろ! ちゃんとやってるところが見えるようにな!」と言った。彼の手はすでにGGの股に伸びていた。
再びライトの魔術で女性らが照らされ、兵士らが、砦から良く見えるように女性達の角度を調整していく。
犬が女性らを犯し始めると、上機嫌になったクメール将軍が、ナナセ子爵の前まで歩いて近づき、「今どんな気分だ? グリフォンの君よ」と言った。
ナナセ子爵は、子爵位を継ぐ前は、アイリーン・ジュノンソーという公爵令嬢で、ウルカーン第二王子のフィアンセだった。
彼女は、生まれつき目付きが悪く、社交界では少々誤解されることはあったが、武闘派のジュノンソー公爵家出身であったことから、紋章に描かれるグリフォンに因み、グリフォンの君と呼ばれていた。
ナナセ子爵は、その目付きの悪い目でクメール将軍を見上げ、「……あまり、気持ちよく無い」と言った。
その瞬間、ガボ! という音と共に、ナナセ子爵の口の中に、クメール将軍のブーツの先が入る。
「あはは。お前達貴族は、捕虜交換されるまで、毎日拷問だ。全ての歯を抜いて、両腕両足の腱を切る。体中に侮辱的な入れ墨を入れて、脳の一部を焼き切ってやろう。お前が両親の元に帰る時には、別人のようになっているだろう」と、クメール将軍が言った。そのまま、口から引き抜いたブーツで、ナナセ子爵の頭を踏みつける。
「おい、やりたいヤツはヤっていいぞ」と、クメール将軍が、ニヤニヤしながら周囲の兵士に言った。
「いえ、自分は、犬の後は嫌です」と、兵士の一人が言った。
「くかかかか。まあ、お前達には、これから毎日この国の女を犯し続けるという任務がある。しっかり溜めておかないとな」と、クメール将軍が言うと、周りの兵士達から笑い声が起きる。
その時、黒く巨大なトラが、『ゴア!』と鳴いたかと思うと、『わん』という音がして、一陣の風が吹く。
「ん?」と、上機嫌なクメール将軍がその方向を向く。
そこには、巨大な黒いトラの首を抱えた、一人のおっさんがいた。真っ白い巨大な狼の上に跨がって。
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