吹き抜ける俊足

昔を懐かしむたび、風が身体を通り過ぎた。

風が私を呼んでいた。

脚が動く。軽やかに、動く。

砂を蹴る、風を泳ぐ、音が聞こえる。

身体の芯から湧き出してくる。

痛くない。痛くない脚だ。

爪先で蹴り出した地面のかたさが、私の胸を泡立たせるから。

もう何も聞こえないよ。何も。

跳ねる心臓の痛みだけが、私をさらに加速させる。

もつれない。追いつく脚がある。ここに。

膝が折れそうになって、だけど、もうすぐだ。

あと少しで風になれる。

ゆこう。

いまだ、いま。

もっと速く、速く、誰より速く。

走れるぞ私は!

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