生きてゆく

 わたくしはきっと、ただ誰かに「生きろ」と言って欲しかっただけなのかもしれませぬ。わたくしも生きていてよいのだと、許しが、欲しかったのかもしれませぬ。

 生きることに、誰かの許しなど要らないのでしょう。されど、わたくしは誰かの許しがなくては、生きていてよいのか、とんとわからなかったのです。ですから、貴方様に「生きろ」とただ一言そうおっしゃっていただいた時、霧の立ち込めたわたくしの未来には、一筋、蜘蛛の糸のような光が差し込んだのでございます。

 ああ、生きていてよいのだ。わたくしが生きることを望んでくれるお方がいらっしゃるのだ。それはなんと、なんと、幸福なことであろうか。

 きっと、生きてみせます。わたくし生きてみせますから、あなた、見ていてくれますか。人に許しをもらわなければ生きていて良いのかさえわからない、こんな愚かなわたくしめを、最期まで、見ていてくださいますか。

 最期まで見ていてくださるのなら、それはなんと幸福なことであろうか! 

 きっと、生きてみせます。きっと。

 ああ、許しをいただけた今日は、なんとめでたい日であろうか!

 わたくしはやっと、生きてゆける。

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