第2話

異世界転移してから1週間が経った。

俺たちは、まだ、森の中にいた。


何故かというなら、安易に想像出来るだろう。そう、彼女が、ゴブリンを見つけては襲い、腰布を奪っていた。


野生の動物も結構臭う。

そして、近づこうとするのを全力で止めていた。


といっても、動物たちも危険察知能力?で、彼女が突撃する前に逃げていくんだけど。


それほどまでにやばい存在ということか。


そんな地獄みたいな日々を俺は過ごしていた。


夜の心配?

そんなもの皆無だ。心配することは何一つとしてない。


彼女は腰布を肌身離さないのだ。

沢山奪れた日には、腰布ベッドとか言って、腰布を下にひいて寝ていた。

臭すぎて、近づきたくても近づけない。

そんな日々だった。


俺たちは、ゴブリンと出会わない限りは、太陽の位置を確認しながら北に向かった。


そうして、1ヶ月後。

やっと森の外に出られた。


町の名前は「はじまりの町」。

どっかのゲームかよ!適当に決めただろ!!


でも、見る限りとても綺麗な町だった。

風呂に入りたい…。

この臭いからの解放に俺は嬉しさのあまりスキップ気味になっていた。


「やっと、出られたね!」


返事がない。振り向くと、彼女の足は止まっていた。


「どうしたの?」


不服そうな彼女。

あー。綺麗な町だから?臭いが消えるかもしれない。そんなとこかな。


俺は彼女の手を引いて、

「臭いなんて、また付け直せばいいじゃん」


といい、町に入ろうとしたその時、


「ちょっと、待てー!!」


町の門番に止められた。


「お前、何持ってんだ」

「腰布」

「腰布?ゴブリンのか!!今すぐ捨てろ!」

「やだ」

「何だと?それを持ったまま町へ入るのは許さんぞ!」

「いいよ、別に」


「嫌だよー!!」


とっさに出た言葉だった。

1ヶ月間、臭いと戦いながら歩き続けて、やっと見つけた町。何がなんでも中に入る!!


腰布を捨てたくない彼女 vs

腰布を捨てさせて町に入りたい俺 vs

何でもいいから腰布だけは入れたくない門番


の図が出来上がっていた。

言い争いは止まらず、騒がしくしすぎたのか、

もう1人門番がやってきた。


「どうしたんすかー?」

「ん?あぁ、こいつがゴブリンの腰布を町に持っていこうとするから止めてるんだ」

「ふーん。君たち、見かけない服装してるっすねー」


チャラそうな門番だ。


「君ら、暗黒街出身すか?」


あ、暗黒街?


「ここらじゃ、ゴブリンの討伐の証明書は耳じゃないすか。でも、暗黒街は腰布が証明書なんす」

「あぁ、3年前に行ったって言ってたな」

「もう、二度と行きたくはないっすけど」


チャラい門番の顔が曇った。

そんなにやばいとこなんだろうか。


「で?お前らは暗黒街出身なのか?」

「は、はい!」


や、やっちまった~

とっさに「はい」と言ってしまったが、暗黒街ってどこだよ。


「はぁ。じゃその腰布はこの袋に入れとけ。絶対に町では開けるなよ」

「は、はい!!」

「中で開けたら、すぐに追い出すからな!」

「はい!絶対に開けません。…開けさせません!!」


どうにか、町に入れてもらうことに成功した。


ありがとう。チャラい門番の人。

あ、チャラくない門番の人もありがとう。

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