13年間思い続けた彼女はただの変態でした

夕霧

第1話

俺は小さい頃から好きな人がいた。


彼女とは幼稚園の頃からずっと同じクラスで、嬉しいことに家も近かった。


彼女はマドンナ的存在で、眉目秀麗、頭脳明晰、運動神経抜群で非の打ち所がなく、誰もが1度は振り向くような絶世の美女だった。


俺は明日彼女に告白する!

俺たちは、明日、高校3年生になる。


高校生活最後の1年、彼女と楽しく過ごしたいじゃん!

夏は一緒に海に行ったり、夏祭り行ったりして、


「あの、ぬいぐるみ欲しいな~」

「任せな!!」


つって、それでやっぱ文化祭は外せないよな~。2人で校内を歩き回るんだ。皆が振り向き、恋に落ちるなか、彼女の隣には俺が立っていて、皆が落胆していく。

そんな奴らを横目に俺は堂々と歩く。


あー!楽しみだー!!


でも、振られる可能性もあるんだよな…


心が落ち着かなくて、なんかしんどくなってきたから、コンビニに行くことにした。


入店して1歩で気づいた。彼女が居る。彼女も俺に気づいた。何か言わなくちゃ、


「よ、よう」


って、ん?足元が突然光だした。


そして、目を覚ますと森の中にいた。


「何、ここ」


彼女は俺の隣で倒れていた。


「ちょ、大丈夫?」

「ん…」


反応があった。良かった。


「ここは、どこ?」

「分かんない」

「夢とか?」

「いや、違うと思う。夢なんかじゃない。だって、風を感じて、土の臭いとかもリアルで、夢なんかじゃ、こんなの再現出来ないと思う」


彼女が黙った。何か、言わないと。

心配いらないと言えたら…どんなに良かったか。でも、そんなこと言えるような状態じゃない。


「ん…」

「どうしたの?怪我した?」

「ううん。大丈夫」

「立てる?」

「うん」

「ここで一夜を過ごすのは危険だし、安全なところを探そう」

「そう、だね」


…待って、一夜を、過ごす?

俺と2人で???


そんなことしちゃっていいんですかー!!

だって、俺たちまだ付き合ってもないのに!

そっから一線を超えて~


って、何考えてんだ!!俺は馬鹿か!!!

こんなよく分かんねぇ状態で!


ふぅ。


一旦落ち着こう。


彼女も怖がっているはずだ。

暴漢から守るシミュレーションは沢山してきたからきっと大丈夫。


ガサガサ。ガサガサ。


何!?

そこに立っていたのは、緑の人?

…俗に言うゴブリンというものなのか。


「ハァハァ」


ん?ちょっと待ってよ。何だよ、その顔。

こんな状況でなんでそんな顔が出来るんだよ!


「あは、あはは、あーはっはっはっ!!」


突然、笑いだす彼女に俺は戸惑いを隠せなかった。目の前には見たことがない化け物がいて、隣には何故か興奮している初恋の人。


「私ね、臭いフェチなの」


は?臭いフェチ?


「それもと~っても臭いやつ」


え?だって君は超人みたいな人で、何でも出来て、非の打ち所がない…。

でも、その表情はどうみても本物だった。


俺とゴブリンは動揺していた。


そして、一定の距離を保ちながら、一斉に走り出した。


ここは森の中。はぁはぁ。上手く走れない。

…普通、逆なんじゃないのか!

ゴブリンが人間を襲うんじゃないのか!

何故、俺たちがゴブリンを襲っているんだ!

はぁはぁ。

てか、彼女速いんですけどー!!

俺、置いていかれそうなんですけどー!!


彼女を死ぬ気で追いかけ、

遂に道が開けた。


その瞬間、彼女の声が響き渡った。


「取ったどー!!」


彼女の手にはゴブリンの腰布があった。


俺は…いったいどうなってしまうのか。



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