第24話 実感。成長チート

 とりあえず、俺は草むしりクエストを受注することにした。

 一回目の転生の時はやってないクエストだ。

 何事も経験してみないと。


「おい。新人」


「あ?」


 振り返ると、禿げ頭で髭面のゴツイ男が立っていた。

 その両脇に馬面の男と、豚面の男が子分の様にいる。


「何か用か?」


「お前新人だろ? 弱そうだな。やっていけんのかよ」


「余計なお世話だ」


 俺は無視して出口へ向かう。


 だが、回り込まれる。


「俺らが躾けてやんよ」


 禿げ髭男はボクシングの様にファイティングポーズをとった。


「はぁ?」


 何だこのイライラ来る展開は!?


「遠慮する」


 避けて出口へ向かうが、いつの間にか人だかりが出来て、進めなくなっている。

 くそっ……

 何なんだこいつら?


「俺はジャックに銅貨10枚」


「俺は新人に銅貨1枚」


 いつの間にか、賭けが始まっていた。


 まったく、しょうがねぇ奴らだ。


「おら、やれよ」


 むかつく。

 冒険者の一人が俺を小突きやがった。

 だが、無用な争いは避けたい。


「ガルルルル……」


 豆柴が目を吊り上げ、唸り声を上げる。

 そうか、お前も腹が立つか。

 もうこんなところ出ていこうな。


「なんだ、この汚い犬っころは?」


 禿げ髭が俺の豆柴の耳を掴んで引っ張った。


「やめろ!」


 俺はその汚い手を叩いた。


「お、やるか!」


「おお! やってやるとも!」


「うおおおおおおおおおおおおお! いいぞおおお!」


 沸き立つ観客達。


 ギルド内は、熱気に包まれた。


「名前を聞いておこうか。俺の名はジャック」


「俺はアオイ」


「アオイ……。伝説の名誉Sランク冒険者と同じ名前とは。名前負けしてるなお前」


 名前負けも何も、俺なんだけど。


 ま、ツッコミ入れても分からんよな。


「ところで、お前、レベルいくつだ?」


「77だ」


 隠す必要も無い。

 馬鹿正直に言ってみた。


 案の定、ジャックはきょとんとした顔になる。


 モブキャラには、俺のステータスは見えないらしい。


 そこは一回目と同じみたいだ。


「ふはははは! 冗談キツイぜ! そんなヒョロい新人がレベル77なわけねえ!」


 豚面も馬面もつられて笑う。


「本当だ」


「いや、嘘だ。レベル77なんて、20年修業してなれるかどうかだろ? お前、どう見ても二十歳いってないだろ?」


 ジャックは成長チートのことはもちろん知らない様だ。

 成長チートは時間の壁を飛び越える。

 俺は、ジャックとのやり取りで、それを実感した。


「まぁ、いい。その虚勢打ち砕いてやろう。俺はレベル50だ! うりゃあああああ!」


 俺の目にはジャックの拳が止まって見えた。


つづく

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