第15話 触りたい
それにしても金が要るなあ。
聖剣の錆び取りに金貨100万枚。
ミーニャを引き取るのに金貨500万枚。
……って、この世界の金銭感覚ってどうなってるんだろう?
そりゃ、一回目の転生の時もおかしいと思うことは大いにあった。
だけど、今回はさらに拍車がかかってるぞ、これは。
ま、物の値段は、売る人と買う人がいて決まる。
例えば、ポケモンカード。
中には1500万円するカードもあるらしい。
ただの紙だぞ。
だけど、欲しい人が沢山いて、それだけの値段を出しても欲しいから紙切れに破格の値段が付く。
この例を俺に置き換えると……
俺がミーニャを強く欲すれば、旦那はミーニャに高い値を付ける。
当たり前だが……
まったく。
どいつもこいつも足元見過ぎだぜ。
そんなことを、俺は宿屋のベッドに寝っ転がり、天井のヒビ割れを見ながら考えていた。
「クゥウウウン」
俺の腹の上には、豆柴が気持ちよさそうに丸くなって寝ている。
コンコン……
「はい」
ノックの音に俺は反応した。
軋む音と共に、扉が開かれる。
「あ……」
入って来たのは猫耳少女。
なに!?
逆夜這い!?
「……あの、さっきはありがとうございました」
そいう言うと、机の上にミルクを置き、去ろうとする。
「これは?」
「さっきのお礼です」
ぐうううう。
「にゃう!」
ミーニャの耳がピン立ちした。
恥ずかしそうに平らなお腹を両手で抑える。
恐らく、ミーニャは自分の食事であるミルクを俺にくれたのだろう。
「いいの?」
「いいんです」
頬を赤らめたまま、くるっと踵を返すミーニャ。
尻尾がフルンと弧を描く。
「ありがとう……。あっ、ちょっと待ってくれ!」
肩越しにちょっとだけ振り返るミーニャ。
「はい、なんですか?」
よく見ると、彼女のボロボロの服から出ている二の腕は、あざだらけだった。
また旦那に殴られたのか。
俺は、猫耳少女が……
可愛くて……
可哀そうで……
たまらなくなった。
「猫耳、触らせてくれ」
「へっ!?」
猫耳少女が素っ頓狂な声をあげる。
あ、しまった。
慰めの言葉を考えていたら、思わず願望が出てしまった。
つづく
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