第14話 命の価値

「ミーニャ、あんなヒドイことを言った俺だけど、聞いてくれ」


「……」


「俺がお前をここから連れ出してやる!」


「え!?」


 ミーニャの大きな目が更に、大きくなった。


「ワン、ワン、ワン!」


 豆柴も応援してくれている。


 俺はミーニャの手を掴み、旦那のところに向かった。



「ミーニャを譲って欲しい? お客さん、何言ってるんですか? ミーニャはうちの大事な労働力なんだ。簡単には渡せねぇ!」


 こいつ、やけに威圧的だ。


 そして、何かニヤニヤしている。

 まるで何かを期待しているかようないやらしい顔だ。

 禿げ頭がテカり出している。


「タダでとは言わない! いくら欲しい?」


 俺は有り金払ってもいいと思っている。


 側で豆柴を抱きながら震えるミーニャを、救うためなら!


「そうですねぇ……。ま、これくらいなら」


 旦那はゴツイ掌を、俺に向けた。

 毛むくじゃらの五本指がピンと伸びている。


「金貨5枚か!」


 それなら払えるぞ。


「ちっ、ちっ、ちっ……お客さん、人の命ですぜ。それが金貨5枚な訳ないでしょ?」


 旦那は白い歯を見せて笑った。


「なっ……、なら、金貨50枚か!?」


 それなら、頑張ってモンスターを倒したりすれば……


「そんなバナナ。お客さん。ミーニャが欲しいんでしょ? 欲しいものは苦労して手に入れたほうが嬉しいもんですよ? だからそんな安い値段じゃありません」


 旦那はヘラヘラ笑いながら、俺をからかう。

 そして、急に真顔になって、


「金貨500万枚だ!」


「え!」


 場が静まり返った。


 聖剣のメンテナンスより……高い……


つづく

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