第13話 傷

「夕食です」


「あっ……ああ……」


 ゆっくりと瞼を開くと、目の前に猫耳がある。


 俺はいつのまにか寝ていた様だ。


 ミーニャの声で目がさめた。


(色々あったからな……)


 ベッドの淵に座り周囲を見渡す。


 板と藁で作られた貧層で狭い個室だった。


「じゃ、ここに置いておきますね」


 ミーニャは食器をカチャカチャ言わせながら、ボロボロの木の机の上に食事を置いた。

 硬そうなパンと、冷めたスープ。

 あとは、ミルクだけだ。

 ま、この値段だ。

 文句は言うまい。


「あ、ちょっと待って!」


 俺は気付いたらミーニャの手首をつかんでいた。


「何? ……ですか?」


 眉根を寄せ、怪訝な顔で俺を見るミーニャ。


「その傷……もしかして俺のせいで……」


 ミーニャの頬は赤く腫れていた。


「いえ……大丈夫です。階段から落ちただけですから」


 俺の手を振り払い、去ろうとする。

 俺は振り払われた手を見た。

 そして、猫耳少女の両肩を掴んだ。


「何するんですか!」


 ミーニャは俺を睨みつけた。


「さっきは半分獣とか言って、ごめん!」


「……言われ慣れてますから……」


 悲しげなミーニャの横顔。

 美麗のやつ、どうしてるかな……

 俺は彼女を助けたくなった。


「俺のせいで旦那様に殴られたんだろ」


 ミーニャは奴隷だ。

 この世界では、亜人と人間が共生している様に見えたが、どうやら上下関係があるらしい。

 この猫耳少女は、どこかから売られて来たのだろうか?


つづく

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