第11話 猫耳少女

 おお、俺、すげー!

 

 選ばれし勇者じゃん、俺!


「よしっ! この名鍛冶屋のゲオルギウス様が、特別に聖剣を治してやろう!」


「え!? でもお金が……」


「いいってことよ。選ばれし勇者のために俺がタダでやってやる!」


 力こぶを作って見せるゲオルギウス。

 すげぇ、筋肉。


「肩にちっちゃいジープ乗せてんのかいっ!」


「は?」


「いえ、なんでもないっす」


 思わず呼び掛けてしまった。

 ボディビルの大会じゃないんだから。


「あ、兄貴……いいんでやんすか?」


 武器屋の店主はゲオルギウスの弟か。

 兄貴を恐れてる感じだ。


「おお! 聖剣の錆びを取れるなんて、鍛冶屋冥利に尽きらぁ!」


 嬉し過ぎて江戸っ子ぽい口調で応える兄貴。

 キャラ設定ブレまくりなんですけど。


「じゃ、お願いしまーす!」


 俺は聖剣を預けた。

 物事が軽く進むな。

 ま、サクサク進むのはタイパ的に悪くない。


「そだな……」


 手ぶらになっちゃった。

 何も武器が無いのは、心もとないので銅の剣を買った。

 その後、防具屋にもより、銅の鎧を買った。


「さて、休める場所……宿屋でも探すか」


 宿はすぐに見つかった。


 道沿いに大小様々な宿がある。


「クゥン!」


 豆柴もやっと休めるのが嬉しいのだろう。


「よーし、よしよし。一緒に風呂に入ろーな」


 俺は宿の扉を開けた。


「あの、一泊いいっすか?」


「はぁい!」


 店員であろう少女が頭を下げている。


「可愛い……」


 俺の目は確実に今、♡マークだ。

 少女の大きな目、前髪をたらした肩までのボブ、そして--


 猫耳!


 猫耳少女!


「あの、お客様……私の耳がどうかしましたか?」


「あっ、ああ……ごめん」


 取り乱しちゃだめだ!

 取り乱しちゃだめだ!

 まだ、好きってことがバレちゃだめだ!


「えと……部屋空いてる?」


「はい! 何泊されますか?」


 君となら、何泊でもできる。


「とりあえず、一泊で」


 初対面でいきなりお泊りに誘うのは、非常識だよね。


「銀貨5枚になります」


 俺は金貨1枚を渡し、お釣りの銀貨5枚を貰う。


 さ、部屋でくつろぐか。


 豆柴を思う存分モフモフするぞ!


「あ、お客様」


「はい」


 ん?

 俺に惚れた?


「……ペットは禁止されてるんです」


つづく

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