第33話 ボクちゃん 33 三学期

ボクちゃん 33

三学期




続いて三学期の始まりである。


子ども達は、一段と成長している。


あからさまな頼もしい姿が見受けられた。


冬休みの経験が肥やしになったのか、六年生などは、最早大人以上の風格さえ感じられる。


体格も立派になり、大人顔負けの容姿である。


そして、六年生にとっては、小学校生活、最後の学習発表会を向かえる。



寒い寒いこの時期に、子ども達は、最後の思い出となる行事に、熱心になって取り組むのである。


その姿勢と意気込みには、すごささえ感じられる。



小学校生活最後の時期となり、活気と希望に満ち溢れた輪郭を見せている。




もちろん、子ども達は、勉強もしないことはない。


常に、毎日の日常生活で、充分各教科を勉強している。


勉学とスポーツを十二分にこなしている。



とにかく、この町は何事に於いても熱心なのである。



小学生で、勉学とスポーツの両立を目指している。



僕の高校時代さながらで、小学校でここまでやるか、、そんな気もしたものである。





それはさておき、学習発表会の練習である。



きめ細かい案が提出される。


職員会議でも、担任教師共々、充分連携を図り、共通理解を深める。



各教師が手法を凝らした構想を練って、10日間ほど練習に励むのである。



子ども達は、僕達、私達の演技を見てほしいとばかりに張り切っている。



六年生は特に真剣である。










カマ男先生などは、自分て脚本を書いている。


そして、音楽効果も整えている。


如何にも、僕はやっているんだ、熱心なんだ、と父兄にアピールするように、力を入れているようにも見える。





講堂の近くにいると

「それ、あかん」「そうや、そうや」「もっと大きく声を出せ」


演技の指導が大きく聞こえてくる。



くも助先生から言わせると、カマ男先生は、この劇に命を賭けているとのことである。





職員会議と幕間何分、ここで照明、ここで音楽と、、、全職員が意志の疎通を図る。



そして、綿密に計画を立てて、児童共々一体となってこの時期を過ごす。





一歩下がって考えてみると、とにかく細かいのである。



きめ細かすぎるのである。


運動会にしても、学習発表会にしても、何分何秒まで計算する。


何もそこまでしなくても、、とは思う。



が、この町の先生方は、微に入り細に入り話し合う。


とにかく大変なものを感じるのである。



所詮小学校とは思うが、全員が一生懸命なのである。










そんな三学期のある授業中に、僕は、忘れ物をしたので、職員室に戻ろうとした。



何気なく廊下を歩いていると、隣のクラスの原田先生の声が聞こえてきた。



「先生、美しいと言って、先生、綺麗だと言って」と、大きな声が聞こえてきたのである。


原田先生がそう叫んでいるのである。


一体どうしたのか、何があったのか、わからなかったけれども、そう叫んでいるのである。




僕は何か欲求不満のような、フラストレーションを感じた。



何かいやなことがあったのだろうか、とも思った。



何とも言い様のないアクセントが聞こえてきたのである。





また、五年生の理科の授業を臨時で行ったことがある。




僕は、天気図のプリントを児童に配布して、図面を見ながら説明した。



雲の様子を調べる学習である。


高気圧、低加圧の図面が書かれてある。


そこで僕は

「雲はどこにあるのですか?」と、質問した。


すると、ある児童が

「空の上にある」と、、、




この返答には、僕の頭も錯覚に陥ってしまった。





どう説明したらいいのか、話のしようがなかった。



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