第32話 ボクちゃん 32 年末年始
ボクちゃん 32
年末年始
そうこうしているうちに、早くも忘年会の時期がやって来た。
例によって、例の如く、校長の挨拶から、忘年会が始まった。
そして、幹事が教頭を指名する。
乾杯の用意である。
一同起立して、乾杯と言って会が始まる。
酒が回り出すと、二十畳ほどの部屋で、あちらこちらバラバラに声が聞こえ出す。
年忘れの会場で、この一年の出来事やら、お互いの労苦の思いやら、様々な会話が乱れとんでくる。
そして、忘年会は山場へと移っていく。
ほろ酔い気分の校長曰く。
「佐々木君、よくがんばってくれた、ひとつ来年も頼むぞ」
と、命令するかのように、僕に話しかけてきた。
黙ってきいていた、が少しは憤りも感じないことはなかった。
第一、バレーボール、模範水泳などのことが、尾を引いて頭に残っていたのである。
校長としての実力はあるのかも知れないが、僕としては、いささか苛立ちを感じていた。
隣同士話をする女教師達、ひとりで酒を嗜むくも助、酒を飲んだら話上手になり、演技をも披露する空手先生、社会風刺をする山岡先生、人間評価の教頭、とてつもないホラ話のくも助、、、、会話、会話で盛り上がり、話に花が咲き乱れ、宴会は異様なほどに盛り上がっいく。
そのうち、山岡先生が、カラオケのマイクを持って歌いだした。
「芸のためなら女房も泣かす」と、下手とも上手とも言えない音程で、、、
そして、これを皮切りに、次から次へとカラオケがかかってきる。
流行歌やら、演歌やら、お気に入りの歌やら、、、、まるで本物の歌手になったかのように歌い出す。
原田先生などは「ロンリーチャップリン」を歌い始めた。
室井先生は「ちっちゃな頃から悪ガキで、、、」である。
こうなってくると、男女入り乱れての歌合戦である。NHKの紅白歌合戦のような様相である。
どうもこの町の先生方は歌が好きらしい。
心いくまで歌を歌う。
歌いだしたら切りがないほど歌うのである。
室内は最高潮に達して熱気さえも帯びている。
女性陣、男性陣、拍車をかけたように歌が乱れ飛ぶ。
ストレス解消に歌いまくる猫男先生、踊り出すくも助、、、人様々で、、正に年忘れの忘年会である。
そこで幹事の先生が「宴たけなわではございますか、、、」とマイクを取る。
続いてまたもや「万歳三唱」である。
この「万歳三唱」も年に何回あるかわからないほど多く聞こえてくる。
そして次に二次会へと進んでいく。
そこでまたまたカラオケ大会である。
この時期になると、この町の中心にある繁華街は、教師集団で一杯になる。
近隣の町からも、この繁華街に教師集団が訪れて、この繁華街は教師て満ち溢れるのである。
そして「よう」「やあ」と声を掛け合うのである。
教師集団はみんながみんな知人関係なのである。
「元気か」「オース」と言っておたがいの声のやり取りをするのである。
そして中には他校の宴会席に入って、共にビールを飲む先生も見受けられる。
「一気!一気!」と盛り上がった声が、料亭中に聞こえてくる。
その声は、料亭の側を通りかかった人にはもちろんのこと、50m四方にも聞こえるほどの声量である。
そして、午後11時頃が終了時間である。
時には日が変わることもしばしばあると聞いていた。
この年忘れの忘年会で、年に一度の無礼講を感受しつつ、教師集団は、この町を屯するのである。
聞くところによると、マイクを持ったら離さないという先生もいるという。
またこの頃の夜になると、目がギラギラと輝いて、一向に自宅へ帰ろうとしない先生もいるという。
そもそも僕は宴会が不得意だった。
場馴れしてないせいか、恥ずかしさが先に立ってくる。
言うなれば苦手意識を持っていた。
もちろん僕も歌うことは歌った。しかし、心いくまで楽しむ方法を知らなかったのである。
まあ何はともあれ、こうして忘年会も終わった。
12月25日、終業式の次の日のことである。
話はまた横にずれるけれども、実は僕も音楽が大好きだった。
大学時代にはジャズに浸っていろいろな音楽を聞いていた。
モダンジャズがとても好きだった。
ジャズというのは、聞いてて落ち着く感じがする。
ウイスキーのオンザロックがお似合いで、時間とか空間を感じることができる。
またロックも良く聞いていた。
ロックは自然と身体が動いてきて、リズムにのりやすく、テンポがいいので踊りたくなってくる。
みんな誰しもがが知っている通りである。
ある時山岡先生も呟いた。
「最近では、ビートルズとか、エルビスプレスリーとか、サイモンとガーファンクルの曲が、音楽の教育として、登場してきている、音楽教育も変わったものだ」と。
正月、またなつかしき故郷へ帰った。
父と酒を酌み交わした。
母は、おせち料理をテーブルの上に並べていた。
家族仲つつましく家庭のお正月の時間を過ごした。
何処の家庭でもある、ごく普通のお正月だった。
初詣にも行った。
お正月特有のひんやりとした空気が流れていた。
が、常日頃の忙しさを忘れて、安堵の気持ちがした。
落ち着いた気分も味わえた。
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