第12話 ボクちゃん 12 練習

ボクちゃん 12

練習



毎日の練習計画を立てながら、、、放課後ひとりで、、、運動場の片隅で、、、コートをならし、、、ポールを立て、、、水を打ち、、、ネットを張り、、、練習が終われば、、またポールを外し、、、ネットを整理して、、、と、こんな繰り返しの日々が始まった。



毎日毎日、こんな作業と、練習の繰り返しである。



練習前の準備、練習、練習後の整理と、毎日が、繰り返しの日々が続いた。


苦しい日々が待っていたのである。


くじけそうになった時もあることは、あった。が、児童とともに、余念を欠かさず練習に励んだ。



児童も僕の言うことを良く聞いて、熱心に、夢中になって、取り組んでくる姿勢が伺えた。


僕も児童も一生懸命だったのである。






が、この状態では、勝てるはずがない。


別に勝つことが目的ではない、、、僕はそんな風に思っていた。





ところが、この土地柄も、試合というものに対しては、勝つことが一番の喜びである。


また、一番の成果だという慣習が強く流れていた。







近くの学校には、体育館がある。しかも。指導者が、三、四人いる。



僕は、最初からわかっていたが、勝つバレーボールはできない。


勝ちにいくバレーボールは、できるはずがない。



もちろん、勝つことに越したことはないが、こんな条件である。


勝てるはずがない。


であれば、どんなバレーボールをすればよいか、少々悩んでしまった。




が、勝つことはさておき、自分達のバレーボールをすればよい、そう考えた。




そして、練習に励め、練習すれば成果は上がる、自分たちの力を、出しきって精一杯がんばって、プレーすればそれでいい。


と、児童に言い伝えた。


そして、卑劣な方法をとることは、教えなかった。


常に、正攻法を身に付けさせようとしたのである。



また、精神的に強くなり、チームワークの良い仲良しバレーを目指した。



そして日々の練習に、

力を投入した。









大会に参加することに意義があり、、、




この精神で、毎日の練習に励んでいた。








そんな時、例のペコペコ校長が言った。


勝たなければ意味がない、勝ちに行け、、、


黙って聞いていたが、心中呟いた。


こんな状態で勝てるか、、、と、、、




第一、この校長に対しては、愛想をつかしていたので、まともに対話する気はなかったのである。




しかし、ある日、この校長の教育目標を聞いた時には、賛同するものも、なきにしもあらず、だった。




自立の精神、自律の精神、自主的精神の育成、児童の人格の尊重、仲間意識を持ち連帯感を育む、基本的生活習慣の定着、等々、



ありふれた目標であるが、校長としての、識見、資質も持っているのか、とも思われた。










全くバレーボールを知らない児童達には、実にてを焼いた。



サーブ、アタック、レシーブ、練習に励んだものの、技術が一向に上達しない。


基本的プレーが全然身に付かないのである。



驚くほどの児童達の状態だった。








こんな僕の学校での生活を、猫男、カマ男、くも助達は、冷ややかな目で、見ていた。




猫男などは、「僕はスポーツは苦手なので、何とも言えない」



くも助は「バレーボールを指導しても、役には立たない、もっと重要なものがある」という声が上がっていた。




カマ男などは、全くおかまいなしで、空吹く風のていで、何も気にせずマイペースで過ごしていた。



女教師達は、僕のことがよくわからなかったのか、無言のままで、僕を観察していた。





山岡先生は、陰ながら「佐々木君、がんばれよ」と、応援してくれていた。暖かい眼差しまで、見てくれていたことが、後でわかった。



用務員の松田さんも「先生、がんばって」と励ましてくれていた。


この用務員の松田さんには、苦しくなった時、心寂しくなった時は、本当に助けられるような思いがしたものである。

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