第6話 ボクちゃん 6 教職員
ボクちゃん 6
教職員
教頭の谷先生もいる。
この教頭は、頭が禿げていて、背丈が低い。
どことなくピヨピヨしていて、その姿を見ると、アヒルのようにも見えてくる。
僕は、この教頭を最初からあまり好きにはなれなかった。
校長には、全くもって頭をさげている。そして一般教師には「良い教師」と呼ばれたいのか、何故か、回りの教師の顔色を見るところがある。
だいたい学校というのは、教頭が実務に励む、というか、教頭の采配で運営していかなければならない、というか、教頭の力で職務が成り立っていると思える。
実際に、その仕事量は、他と比べて総合的に多いのである。
仕事のノウハウを、充分心得て熟知していなければならない。
そのようなことから、教頭は、回りに気を使っているのだろう。
また目配りをして励んでいるのだろう。
そのくせ、時間が来たら、サッサと帰っていく。
いうなれば、サラリーマン教頭のようにも見受けられる。
朝の出勤時間には、すぐに出勤印を押し、他の教師には、印を押すように指名してくる。
考えようによれば、印鑑係のようにも思える。
この教頭には、これから何か、哀れな、醜い態度を見せつけられることが、度々出てくることになる。
また、もう少し悪く言えば、常日頃の授業中に、職員室で何をしているのか、さっぱりわからないところがある。
事務の先生と、たべってばかりいて、仕事をしているのか、いないのか、理解しにくいところがある。
事務の先生とは、馬が合うのか、しょっちゅう、ひっきりなしに話をしている。
とにかく、出勤時間と帰宅時間だけは、しっかりと守っている。
教育に対する情熱などは、あまり感じられない風姿をしていた。
年の功があるのか、巧みに生きていくようなずるさも感じられた。
少しいやな存在の教頭だった。
事務担当の岡田先生は、経験、キャリアというものが十分で、もはや、校長、教頭の次の、一種の管理職のような存在感を持っていた。
事務のことについては、この地域では、右に出るものはない、と思ってるらしい。
確かに実力は持っていると思えた。が、職場のあらゆる方面に口出しして、如何にも自分がリーダーだ、と言わんばかりである。
教育関係諸事情の案件すべての事においてに介入してくる。
世話好きなのかも知れないが、、、
この事務の岡田先生は、何故か電話ばかりしている。
近くの学校の事務の先生と、絶えず電話をするのである。
連絡を取っているのか、油を売っているのか、わからない。
そばにいても、耳が痛くなるほどの長話をするのである。
一体何を話しているのか、わからない。
その上、耳障りな声である。
悪くとれば世間話をしているかのようにも聞こえてくる。
そして如何にも、この学校に君臨しているかのような態度が見受けられた。
夏目漱石の「坊っちゃん」という小説には、マドンナという女教師がいた。
「坊っちゃん」と比べてみるのもおかしいけれど、この学校には、マドンナらしき女教師は存在していない。
女教師は、年齢四十三歳ぐらいの「井上先生」と、年はわからないが、若そうに見える「原田先生」がいる。
二人とも、この学校にはかなり長く勤務しているとのことだった。
子ども達を熟知しているのか、児童の心理を掴むのにも長けている。
児童をこと細やかに見る目も持っている。
またこの学校の児童のこと、すべてに於いて、精通しているようにも見受けられる。
経験豊かで、仕事にも、余裕を持って接している。
また、養護教諭の水野先生がいる。
噂では、夫を交通事故で失くしたらしい。
子ども二人を背負って、懸命に生きているその姿には、心を打たれるものがある。
女手ひとりで、二人の子どもを育てていくには、大変な苦労があるだろうと思える。
僕は、この先生に対して、何となく親近感を抱いている。
何かをしてあげなければらない、と、そんな気持ちも持っている。
これで子どもさえいなければ、マドンナ的存在である。
もう一人の女性陣は、用務員の松田さんである。
この人は、この小さな町出身の人で、この町のことについては、何もかもを知り尽くしている。
どこの家の子とか、子どもの家庭とか、どこそこの兄弟とか、、、何もかもに精通している。
年齢は老いているが、休憩時間がきたら、お茶、コーヒーを出してくれる。
時々教師間の対話の中にも入ってくる。
この松田さんの話を聞くと、この町の実態というものを、全部把握しているようにも思われる。
気さくなところがあり、人を見る目も持っている。
わからないことがあれば、この人に聞けば、、、というようなところがある。
そのくせ、自分は控え目で、自分の立場を十二分に心得ている。
困った時には助けてくれるところがある。
頼りになるような面も持っている人柄である。
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