第4話 ボクちゃん 4 町の様子
ボクちゃん 4
町の様子
それはさておき、このようにして僕は教師生活にはいった。
「教師になったらその地域を探索して、その地域の雰囲気を掴め」と教えられたことがいる。
僕はさっそく、この地域を散歩がてらにブラブラと歩いた。
どう言ったらいいのか、何とも言い様のない気配を感じた。
親近感があるでもなし、かといって違和感とも言えない、何か昔の古めいたような雰囲気を感じた。
所詮、この地域は田舎なのだろう、、、そう思った。
一通りこの町を歩いてみた。
途中、「下駄」を履いて闊歩している人を見かけた。
「下駄」といかうのは、何となく「バンカラ」である。
「下駄」「バンカラ」というのは、今日でいう団塊の世代の人々の流行だったように思える。
この世代以後、「下駄」を履いてぶらついている人の姿はあまり見かけたことがない。
また、この「バンカラ」というのも、この世代が最後の世代だったように思える。
「下駄」にしろ、「バンカラ」にしろ、現在ではこの姿は消えてしまっているように思える。
やはり、この団塊の世代が最後の「下駄」「バンカラ」の世代だったのかも知れない。
何故こんなことを書くかというと、僕もかなり「バンカラ」なところがあるからである。
町は、坂もあり、池もあり、小さな住宅団地も少し立ち並び、海も見えるし山も見える。
どちらかと言えば漁師町で、漁業中心の風景が見受けられた。が、農家もかなりあり、商店も少しある。後で聞いたところによると、サラリーマンの家庭もあるていう。
けれども、やはり漁師が主流を占めて、漁業で生計を営んでいる家庭が多いようだった。
学校の校舎は、町の中心の山あいにあり、比較的自然環境に恵まれて、ほのぼのと、のんびりした風景が伺えた。
校舎からは漁港が見えて、漁船が海沿いに並んでいる。漁港の波止場の先端には、小さな灯台がこの町の象徴のように浮かんでいる。
何処の地域の港にでも見られる風景である。
が、その景色には何か叙情的な雰囲気が流れ出ていた。何故か、哀愁を感じられるような気配さえも感じ取れた。
そして、学校の近くの通学路には、坂があり、橋があり、もちろん平坦な道もある。
小高い山の斜面も眼に入ってくる。
背後には、この地域独特の形をした二つ三つの小山が、小さいながらも聳え立っている。
谷間も所々に見え隠れしている。
学校の眞下には、小さな池があり、春の水面を示している。
小川のセセラギの音も聞こえてくる。
風光明媚な装いもしないことはない。
海もこの地域の特徴を表しているような色を見せている。
清々しい春の感触さえも感じられる。
ところが意外なことに、校舎は木造だった。
現在ではとても考えられないような校舎だったのである。
この木造というのにはいささか驚いてしまった。
現在では、到底考えられないような校舎の姿、形だったのである。
木造の校舎、、
何とも言い様のない気持ちを持たざるを得なかった。
ある種の不安と疑問を覚えた。
(二、三年後に全面的な校舎の改築と、体育館の新設が計画されているということが後々にわかったが、、、)
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