第3話 ボクちゃん 3 校長との対面

ボクちゃん 3



校長との対面



そんな様子で午前中がすぎた。そして赴任校へ車を走らせた。


町の中心から5kmほど離れた学校である。



ます初めに学校の建物の玄関から入った。

校長室へと進んで校長と対面したわけである。



僕の先入観として、校長というのは威厳があり、堂々とものを申すというような態度で、威圧してくると予想していた。


校長とは初めての対面である。


ところが何と、その校長の最初の一言は「どうぞ どうぞお入りください」と妙に低調なもので「どうぞ どうぞ どうぞお入りください」と言うのである。



これには僕は面食らってしまった。


校長ともあろうものが、こうもペコペコと低くなって、こんなに低姿勢で対応してくるとは、、、、、


少し唖然とした。



物事は何事もまず一番最初が肝心だ、とは充分心得てはいたが、この校長の態度には面食らってしまったのである。


その校長が僕に言った。「次は職員室へ行って全職員に挨拶をお願いします」




虚を突かれて感が狂った僕は、拍子が抜けて困惑してしまった。


調子を崩してしまったのである。



そして先生方との最初の対面である。


校長室の横のドアから職員室へ入っていくと、全職員が起立していた。そして全員の視線が僕に向けられた。



まるで僕の登場を待っていたかのように、全職員が立ち並び、僕を注目している。



僕は、校長との対面が尾を引いていた、そしてためらってしまった。


少しの緊張感もあって、「よろしくお願いします」この言葉しか出てこなかったのである。


普通なら、「新任ですので何も知りません、ご迷惑をおかけするかも知れません、またお手数をおかけするかも知れません。非力ではありますが、一生懸命がんばりますのでよろしくお願いいたします。」


この程度の挨拶はしなければならないところである。



ところが初めてのこの校長との面識で、呆気にとられてしまっていた僕は、本来言うべき言葉、挨拶が出てこなかったのである。





後になってわかったことである、この僕の挨拶が、どうも他の先生方からの反感を呼んだらしい。


「生意気な奴だ、プライドが高い」と教師集団は解釈したらしい。


というのは、僕は、一年ほど前から近隣の町で、臨時教師として教師生活を経験していたのである。



その間、「よくやる人だ、よく仕事をする人だ」と、前評判があったそうである。



そんな意味で最初のこの僕の挨拶が、印象を悪くしたらしい。



またこの学校の校長も、そんな評判を気にしていたのか、初対面の時、僕に対してペコペコと、低い姿勢で出てきたようである。




もともと評判というのは実に当てにならない。


先入観が入るし実直に人を見ることができない。


本当の人間性などわかるはずもない。



ところがこの町の人々は、誰がどうした、こうしたと、論評するのが大好きな気風の土地柄だったのである。



ごく小さなことでもすぐに知れ渡ってしまうところがある。


言うなれば世間狭いのである。


噂、評判というものが、「悪事千里を走る」というように、すぐに流れてしまうところがあったのである。





どこの地域でも同じようだとは思える。が、この評判というものは全くもって人に害を与えてしまうところがある。



昔から言われているように

「人の口には戸がふさがれない」という言葉があるけれども、この町でもいろいろと何かにつけて評判することが、大好きな土地柄のようだったのである。




また人の悪口を言うのはとにかくおもしろい。



人をやり玉にあげて、「悪口」をたたくほど面白いものはない。


人間にとっては最も楽しい会話だと思える。




会話の中でも、自分のことは別にして、人の悪口を言うほど面白いものはないと思える。








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