第140話 おっさんは、サファイアと二人っきり
家に帰ると、いつものように出迎えてくれたのは
今日は少しだけ早い帰りで、家には部活中のコールンさんはともかく、ガーネットも帰って来てないようだ。
「お帰りなさいませ、
「ただいま、ルビーは?」
「ルビーは現在外出中です」
ということは、今はサファイアと二人っきりか。
一つ屋根の下に男女が……間違いが起きない
「なんだ、ルビーはなにか用事でもあるのか?」
「それがルビー
「街? ああ、もしかして収穫祭か」
「収穫祭?」
サファイアは収穫祭を知らないのか?
いや、考えてみれば無理もないか、ここに来るまでずっと
「収穫祭ってのは秋のお祭りだ。厳しい冬を迎える前のどんちゃん騒ぎだな」
一年に四つのお祭りがある。
春には草花の
「サファイアは収穫祭は初めてか?」
「はい、お祭りはあまり経験出来ませんでした」
そう言うと、サファイアはシュンとした。
やっぱり
うむり……やはりおっさんはサファイアの
「なあサファイア、良かったら一緒に収穫祭、その、二人で楽しむか?」
我ながらすっごい恥ずかしい
サファイアは目を丸くすると、石のように固まってしまった。
そして
「も、
「うおい!? 泣くほど!? 泣くほど嬉しかったの!?」
「それはもう、きっと星の神の祝福にも勝るとも劣らず、知恵の実を食さず
うん、今日もサファイアは平常運転だな。
相変わらずよく分からん
「けれど、本当に私でよろしいのですか?」
「どういう意味だ?」
「ガーネット様が聞けば黙ってはいないと思うのですが……」
「ああー……そうだったな」
おっさんは
絶対食いかかるし、超不満顔で一週間は口を利いてくれないに決まっている。
うーん、おっさん小心者だから義妹に嫌われるのだけは耐えられない。
とはいえ、サファイアにも普段から働いて貰っている以上
「では、ガーネット様もお誘いしましょう」
「いいのかサファイア?」
「主様を
「むしろサファイアは欲が少ない方だと思うぞ」
サファイアはわがままも言わないし、いつも
奉仕種族ショゴスの
「サファイアは良い女過ぎる」
「えっ、私が良い女?」
「悪い男には絶対に
「人を見る目はあるつもりですが……」
どうだろうな? クソ外道の魔王に
そりゃ
それだけに
「主様、収穫祭の事はともかく、中へお入り下さい。それと荷物はこちらへ」
「忘れてた……玄関で何やってんだか」
おっさんは我に返ると頭を
サファイアは荷物を受け取ると、おっさんはリビングに向かう。
「二人っきりですので、とびっきりのお茶も
そう言うとサファイアは微笑を浮かべた。
くそ、やっぱり可愛いよな。
サファイアに奉仕して貰えるって時点で勝ち組なんだよなぁ。
「いや、お茶はいつものでいい、上振れは
「そうですか? 主様がそうお望みであれば構いませんが」
「平坦、平坦であれ」
おっさんはそう自分に言い聞かせた。
上振れしたら、絶対下振れで痛い目を見るから、おっさんは上振れも下振れもいらない。
「収穫祭ですか、ふふ」
サファイアは楽しそうに
街の商店街で売っている安い紅茶だろう。
「ちなみに、とびっきりな紅茶ってなんなの?」
「ブンガラヤ共和国ロンセイ島で栽培された最高級乾燥茶葉、一
「一
想定どころじゃない超高級品に思わず
三百ゴールドでおっさんの好きなコカトリスの焼き鳥二本も買えてしまうぞ、たった一
「ち、ちなみにそれはどこで買ったの?」
「いえ、買ったのではなく貰ったのです。流石に申し訳ないので少しですがお支払いしたのですが」
「貰った? 誰に?」
「グールーと名乗る貴族風の商人様でした。美味しい紅茶をいただき、どのような品か聞きますと、プレゼントすると」
おっさん、あの学園祭でテンにぶっ飛ばされたおっさんを思い出すと、
相変わらずあの
「変なことはされなかった?」
「……? 会話に少々付き合っただけですが」
「紅茶を飲んで体に
「ありません、というより多分ショゴスに
うん、どうやら本当に貴族が美少女と楽しくお茶したかっただけみたいだな。
ショゴスの状態異常耐性は知らなかったな。
「とってもフルーティーで、
「ああ、説明はもういい、そういうお茶は特別な日にな?」
「
サファイアは紅茶の入ったポッドを持ってくると、いつもの
「ビスケットもいかがでしょうか、こちらは私が焼いたものですが」
「ああ、いただこう」
サファイアの得意とする焼き菓子の一つだな。
「晩御飯に
「そうだな」
おっさんは紅茶をいただくと、ビスケットを
ほんの少しだけ甘いビスケットは食感も風味も良い。
特別な物ではないが、こういうのがおっさんも好きだ。
「うん、美味しい」
「
「サファイアなら店も出せるな」
「お店ですか……しかしそれでは主様のご奉仕が十分に果たせません」
サファイアの困った顔もやっぱり可愛いな。
別に本当に店を開けと言ってる訳じゃないが、やっぱり奉仕活動が最優先なんだな。
「主様、収穫祭とは、どんな事をするのですか?」
「食べ物イベントが多いぞ、後は踊ったりするんだ」
「踊るのですか?」
「そう、少なくともバーレーヌなら、皆で踊ってたな」
ブリンセルだとどんな規模なのかおっさんには想像も出来ないが、
サファイアは収穫祭の話を聞くと、楽しそうに何度も
きっと彼女は脳内でもうお祭りを楽しんでいるに違いない。
見ているだけでも、きっと彼女は楽しいのだろうな。
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