第61話 準決勝:火神VS白樺

 火神と白樺、両者は国家戦力級探索者であり、顔馴染みであり、サイモンと同じ扱いの探索者御三家と呼ばれている。


 火、水、草。


 お互いに相性が良くも悪く、拮抗している状態である。


 火と草なら火が勝つというのが自然の理だが、スキルに関してはそうとは限らない。


 火神がサイモンに勝った様に、白樺もまた同様に火神に勝つ可能性があるのだ。


 戦績は50戦28勝で火神が勝ち越してはいるが、かなりギリギリの戦いであった。


 白樺颯太のユニークスキル『草術満開オイシゲルモノ』。


 植物を自由に扱うだけのスキルに思われがちだが、果たしてそうだろうか。


 「火神っち。僕ね、今まで黙ってたんだよね…こう言う時の為に。僕のスキルはね、何も植物を自由に扱うだけのスキルじゃないんだよね。」


 「え?今までの戦いだってそうだったじゃないか。違うの颯くん。」


 「それを今から見せるよ。」


 白樺は1回戦2回戦と植物、主に樹木を生やし、操り、その圧倒的な物量による攻撃で勝ち上がったきた。


 ある種のゴリ押し。

その一種類の攻撃しかしていないのだ。


 白樺は魔力を掌に込め始めた。

現れるのは、植物の種。ワラワラと出現し、地面に落とされる。


 「火神っち行くよ。『冥府と死の植物』」


 武闘場の地面にヒビが入り、巨大な植物の蔓が出現する。


 禍々しい黒と毒々しい紫、暗い緑色。


 その巨大な蔓には至る所に悪魔の目がついている。

 

 禍々しい見た目に火神は恐怖を感じた。


 「颯くんコレって……。」


 「コレ?僕の能力だね。今まで見た種を再現し、作り出し、操る事が出来るんだ。勿論、成長もね。」


 「この植物は?」

 

 「コレね。とあるダンジョンの魔物だよ。結構厄介だと思うよ。」


 冥府と死の植物

死気という生物にとって害になるその気は、触れると生気を奪われる。

 そして、最も厄介なのが魔法などの魔力も奪うことだ。


 火神は必死に火属性魔法や最高火力の武技を使い、攻撃していくが、その全ての魔力や闘気を死気により奪われてしまう。


 「颯くん。こ、こいつはどうやって倒したんだ!?無理だろ魔法も効かないし!!」


 「そんなの決まってるよ。ユニークスキルだよ。僕のね。」


 「てことは…俺には無理か。何とかならないのか。せめて、俺の火がもっと強ければ。」


 その間に武闘場内は『冥府と死の植物』が出した死気で覆い尽くされる。


 火神は魔力の底が尽きかけ、もはや戦闘続行不可能。


 「火神っち。もう降参してよ。君じゃこの子には勝てないよ。」


 「諦めてたまるか!!」


 火神の心に火がついた。

ユニークスキル『炎神の祝福』により、引き上げられた炎への適応力はその身を炎神の依代へと昇華させた。


 火神は炎化を超える能力、炎神化をこのギリギリの状態でついに会得した。


 「炎の神よ。俺に神炎を。」


 死気によって侵された武闘場が神気を帯びた聖なる炎によって浄化された。


 「決着だよ。炎神武技『聖天炎十字斬ホーリーフレアクロス』‼︎」


 冥府と死の植物は無数の目から血の涙を流し、悲鳴を上げ、燃やし尽くされた。


 その爆風に吹き飛ばされ、全身を強打した白樺は満身創痍になり、苦しくも仰向けになったまま火神に話しかける。


 「火神っち。さすがだね。ここに来てそんな異常な成長をするなんてさ。」


 「いや、颯くんこそ。こんな化け物を支配するなんて、どうせまだまだ隠してるんでしょ?」


 「ふふふ。まぁね。でももう魔力がないや。僕の負けだよ。」


 全力を尽くし、魔力が底をつき、気絶する様に眠る白樺。


 その後、火神の勝利が確定し、準決勝1組目は大勢の人の拍手と共に幕を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る