第58話 戦女神の剣舞-1

 羽柴あおい。23歳。金髪ミディアム。172センチという女性にしては高身長で、どことは言わないが、Dはある。


 その見目麗しい姿に友坂真桜と並び、日本の女性探索者の人気ツートップである。 


 不動に声をかけた理由は対戦相手という事もあるが、その強さに惚れたのだ。


 恋愛感情はなく、強き者は強き者を呼ぶ。

彼女は強き者だったのだ。


 武闘場へと上がる前の準備時間。


 「不動くん。あの約束忘れないでね。」


 「あぁ。」


 「ほんと無愛想ね!そんなんじゃ女の子にモテないわよ?こんなに綺麗な女性の前でそんな態度取っちゃって。」


 「弱い者に興味はない。俺を楽しませてくれるなら魔物でも人間でも神でも悪魔でも構わない。」


 「出ました戦闘馬鹿。そんなんだから怖がられるのよ。」


 「……………。」


 「さっきの意趣返しは出来たかしら♪」


 ニコニコとしながら不動に話しかけるあおいに、周囲からはカップルなのかと勘違いされるが、ここに恋愛感情は無い。


 かけらも。


 「二回戦4組目、最強の男、阿空不動‼︎衝撃的な一回戦の決着に人々は畏敬の念に囚われた。」


 「相対するは、その美貌と剣術はさながら剣舞姫。戦う姿は戦女神‼︎羽柴あおい!!」


 「お互い準備は良いですかー!?では、レディーーーー!ファイッッッ!!」


 スタートの合図のすぐに、あおいはユニークスキルを発動する。出し惜しみは無し。



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戦女神降臨ヴァルキュリア

・戦女神をその身に降ろす事で、身体能力上昇、剣技、全武器支配力上昇、空中への飛行を可能にする。

 世界にただ1人だけのスキル。


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 戦女神をその身に降ろし、意識を手放す。

その体からは神聖な気が溢れ出し、会場の人々は一斉に拝み始める。


 「神気か。面白い。」

 

 不動の顔が狂気に染まる。


 悪魔、否、地獄の力。

その膨大な魔神功によって、神気への侵食を開始する。


 漆黒の力は、やがて神聖な力を脅かし、支配していく。


 それもそのはず。

あおいはユニークスキルを使い始めたのも最近の事であり、出力自体は30%も出ていない。


 苦悶の表情を浮かべる戦女神。


 しかし、気を失っている筈のあおいが少しずつ魔神功への抵抗を見せ始める。


 「へぇ。抗うか。」


 少しずつ少しずつ魔神功からの支配から脱却していく。


 会場は眩い神々しい光に包まれる。

魔神功からの支配から逃れたのだ。


 この一瞬で、凄まじい成長を見せたあおいに少しだけ驚いた顔をする不動。


 「ふはは。予想を超えたか。」

 

 ニコニコ顔であおいを褒める。

会場モニターに映るその笑顔に人々は驚愕する。


 (え?不動くんて笑うんだ。)


 (不動さんが笑ったんだけど。)


 (あいつあんな顔も出来るんだ。良い物を見た。)


 酷い感想である。


 「だが、まだスキルに支配されてるな。武器に扱われてる様ではまだまだ。」


 魔神功の出力を20%から40%へと上げる。


 あおいは必死に抵抗し、再度支配から逃れた。


 「重畳。じゃあやるか。」


 次は剣技への試験。


 ユニークスキル『戦女神降臨ヴァルキュリア』の本領はここから。

















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