第50話 ハンターズバトルトーナメント-2
いよいよ始まったハンターズバトルトーナメント。
実況は羽島アナウンサーが、解説はまさかのハンターズギルド日本支部の支部長である藤堂だった。
テレビ局は野外地にかなり大きな武闘場とステージを準備した。
ステージは探索者を紹介する為と探索者が待機して戦いを観る為のものだ。
武闘場には鹿羽サイモンと門前紫音が相対し、両者相手の様子を見ている。
空気がピリつく。
「実況の藤堂さん。かなり緊張した重い空気を感じますね。」
「ですね。探索者のユニークスキルは強力で唯一の力ですから。相手の出方次第では簡単に形勢が決まりますからね。」
「なるほど。ユニークスキルというのは個人個人で種類や効果が違うものなんですか?」
「えぇそうです。恐らくは生まれや育った環境、個人の資質から影響を受けて、強い思念や想いを持っている探索者がユニークスキルを持つのでしょう。」
「深いですね。ユニークスキルが無いとハンターランキングを上げるにはかなり辛そうな印象を受けますが、実際の所はどうなんでしょう?」
「厳しいと思いますね。英雄級以上の探索者は必ずユニークスキルを持っていますから。必須ですね。もっと上のランクの人は複数持っているみたいですから。」
「なるほど。ユニークスキルの数が多ければそれだけ有利ということですね。」
「それが全てではないですけどね。おっと動きますよ。」
膠着状態だった2人が共に動き出す。
鹿羽サイモンは双剣を構える。
一切の油断なく自然な構えであり隙がない。
門前紫音もまた弓を構え、サイモンを狙っている。
サイモンが動いた。
双剣使いは手数とスピードが命。速度強化スキルを使用し、速度が上がる。
恐らくこの時点で人間のカメラワークでは追いつく事は出来ない。
最新AIと魔道カメラによる撮影の自動化でこの戦いを撮る事ができる。
実際に見たら一般人の目では何が起こっているのか分かりづらいだろう。
それを最新AIと魔道カメラで探索者の動きを一般人にもかなりわかる様に修正している。
これは生放送でもだ。
高速で移動するサイモンは門前の背後へと周り、横薙ぎで首を狙う。
門前は直感スキルで剣筋を感知し、しゃがんで避ける。
そのまま門前はバック宙で距離を取り、弓を引く。
矢先に魔力を込めて、威力と速度を上げる。
放つとサイモンの胸へと迫るが、魔力を纏った双剣をクロスさせガードする。
会場にいる一般客はレベルの高い戦闘に釘付けになる。
もちろん、現場の観客も大きなスクリーンに映る探索者を観ているわけだが。
そして、まだほんの小手調べ程度でも一般人からしたら高レベルな戦闘に感じるのだろう。
口を開けポカーンと目を見開き驚嘆する。
それから五分が経過し、お互いにダメージは無い。
門前がユニークスキルを発動させる。
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『
・弓術操作系能力。
撃ち出した矢は自動で目標を影の如く追尾する。矢の速度と威力に大幅に補正される。
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門前は更に『同時撃ち』、『連射』スキルを発動させる。
合計20本の矢を一瞬で撃ち、そのどれもがサイモンへと向かう。
躱そうと速度を上げるが、全ての矢が追尾してくる。避けられないと思ったサイモンは双剣で全て斬り落とそうとする。
双剣に魔力を纏い、双剣から擬似的な刃を二つ作り出すスキル『魔双剣』と手数を更に増やす『連刃』スキルを発動させる。
門前はその行動を観察し、更に矢を射るために矢を魔力で作り出す『魔法矢』スキルで次々に矢を撃ち出す。
サイモンの周囲には千本近くの矢が撃ち出される。
あり得ない光景に一般人観客は絶望し、同時に憧れや興奮を覚えた。
流石に通常スキルでは対応不可能と感じたのかサイモンはユニークスキルを発動する。
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『
・水属性操作系スキル。
蝶の様に背中から水の翼を生やし、水を凍らし、その強度は鉄をも穿つ。
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サイモンは背中から水の翼を生やすと魔力をどんどん込める。
体に対してかなり大きな翼が出来上がる。
翼を操作し、向かってくる矢を次々と打ち落とす。
水の流れを操作し、攪拌させる事でかなり強度を高められる。
千本の矢は次々に打ち落とされ、門前は更に撃ち出すも魔力が尽きたのか最後の矢を撃ち出すとサイモンから距離を取る。
好機と見たサイモンは水翼を凍らせ、紫音へと氷の矢を撃ち、スタミナが切れた門前に全ての攻撃が被弾する。
戦闘不可能だとAI審判は判断し、これにて戦闘終了。勝者は鹿羽サイモン。
さすがは国家戦力級探索者という結果を残した。
✳︎
不動は今の戦いを見て、少しガッカリしている様な表情をする。
少しずつモチベーションが低下していくのを感じた。
「日本の探索者は今まで何をしてたんだ?」
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