第26話 闇王シルヴァとの戦い-後編

 闇王との戦いは熾烈を極めた。

闇化の能力がえげつない性能を誇る。


 闇化の能力の正体は力の阻害または無効化。

それは多方面に効果を発揮し、物理、魔法、スキルに及ぶ。

 

 デバフという生半可なものではなく、

1だろうが100だろうが等しく無へと帰す。


 不動の攻撃も例外ではなく、絶級魔法も武技も全て無効化される。


 何とか闇王の攻撃を防いではいるが

このままではジリ貧なのは明白。


 暗黒武闘自体にはもはや恐怖はない。

しかし、闇化した状態では厄介極まりない。


 刀剣での攻撃も魔法での牽制も全て無効化。

触れる事も出来ない。


 状況は悪くなる一方。

打開する事が出来るとするならば神級魔法のみ。

 

 しかし、先ほど神級魔法を試みたが、闇化の阻害能力で魔力を練っている時に霧散した。


 神級魔法を使うのに今のMPだと到底足りない。


 その為、集気法で魔力をチャージしながら上限突破を無理矢理行なっている。


 今の技量では阻害されながらの魔法行使は不可能。

 実際のところもはや打つ手がない。


「我が闇の力に屈せよ侵入者。もう諦めろ。」


「諦めねぇよ。その余裕のツラをボコボコにしてやる。」


 つっても、殆どの攻撃は試した。

可能性としては、神級魔法レベルの威力を持つ闘技。

 鬼剣でも通用しないからにはそれを超える剣威を今ここで編み出さなければ。


 剣に神級魔法レベルの魔力を込めるか?

いや、吸い出され阻害されるか。


 奴の無効化能力のキャパシティを超えなければ。どうすれば良い。考えろ。


 その時、前世の記憶が蘇る。


(一瞬で威力を高めたいけどどうすれば良いかって?そんなものこうすれば良いのだよ。)


 蘇る記憶。

 その銀色の長髪を束ねた丈夫は、前世の俺に教えを説いた。


 その丈夫の刀剣には凄まじいほどの魔力が一瞬で高められる。

 神々しいまでのその魔力に目を奪われた。


(貴様は刀剣に魔力を込める時、どんなイメージをしている。)


(イメージ?できる限り大きく激しくだな。魔力なんて多ければいいんだろ?)


(だから貴様はだめなのだよ。刀剣を体の一部と考えてみたまえ。刀剣と一体にならなければ剣神への道は踏み出せもしまい。)


(一体ねぇ。お前みたいな剣バカとは剣そのものの捉え方が違うんだよ。天才を超えてるよお前は。)


(天からの才能のみに頼っている貴様とでは剣への覚悟が違うのだよ。人生を剣へ捧げ、剣で死に、そしてゆくゆくは剣そのものになる。それが剣神への道なのだよ。)


(訳わかんねぇよ。)


          ●


「刀剣と一体か…。まずはイメージする。」


 剣との境界線を壊し、自分が剣そのものになる様なイメージを行う。

 超極度の集中力を維持し、幾度も幾万とも行う。

 

 (少しだけ分かったぞ。霧雨。お前の覚悟が。)


 その瞬間に、不動と剣から白銀のオーラが噴き出す。


 闘気と剣気が混ざり合い、そこに神級の魔力を込める。


 白銀のオーラに純粋な黒が螺旋状に上空へ昇りゆく。


 「鬼神剣きじんけん震天羅生しんてんらしょう!!」


 神々しくも禍々しいオーラが闇王を飲み込む。

 闇化の能力を以てしても、剣神の一撃は

到底抗う事の出来ない権能であった。


 闇王の体は虚空へと消え去る。


 「ほんの少しだけだが、霧雨剣バカに近づけたか。さて。」


 30階層へと続く階段。

そこへ通ずる扉が開かれた。


 今までの経験上、0フロアは大ボス。

闇王でこれだけ苦戦したのだ。

 一体どれだけの強敵が待っているのか。


 不動の顔が狂気の顔に染まっていた。


記憶解析度…49%

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「鬼剣」→「鬼神剣」となりました。


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剣神、霧雨。

前世の世界での最強の一角。

剣においては、闘神である前世の不動ですら

敵わなかった。

総合的な戦闘能力では前世の不動の方が強かったが、剣においては全くもって歯が立たない。


 後に、前世のエピソードも深掘りしていきます。 


 そして、30階層クリア後、一先ず現代に戻ります。これまでは大いなる災いへの修行編と言ったところでしょうか。現代無双への足掛かりとしては欠かせなかったのです。














 

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