第22話 アンデットの群れ-前編

 27階層へと降りてきた。

扉を開くと、月夜の荒地に墓だらけ。


 腐敗した臭いと獣の臭い。


 一応謎の鉱石による光で辺りは視認出来るが、とんでもなく臭い為、嗅覚はダメそうだ。


 少し歩くと、墓地公園の様に壮大な光景が見える。

 綺麗に整えられた墓の並びに、思わず感嘆の声を吐いた。


 「これはこれで絶景だな。地球にもあるが、誰がどんな目的でこんな手入れをしたのか。」


 おそらく千を超える墓の集合体から殺気がした。生者への怨みや妬みなどの複雑な負の感情が場を支配する。


 「そんなハッキリと殺気を出さなくても分かってるよ。でも屍ごときが俺に敵意を向けるんじゃねぇ!!」


 その言葉を皮切りに、次々と墓からグールやゾンビ、ヴァンパイアなんかも飛び出してくる。


 しかも、ただのアンデットではない。

一体一体が全て悪魔と契約し、混ざっている。

 肉体に痛みを感じない分、リミッターは無いのだろう。

 身体能力ではかなり強い部類。

映画の動きの遅いゾンビとはなんだったのか。


 次々と不動に襲いかかるアンデット。

ゾンビとグールは素手で殴ってくるが、かなりの威力。

 ヴァンパイアとリッチーは遠くで余裕の鑑賞か。


「舐めちゃってぇ。まずはてめぇらだ腐肉ども。」


 本来であれば、聖属性魔法で弱体化させてから討伐するのだが、格が違いすぎる。

 目の前のゾンビやグール達は一瞬で不動にバラバラにされる。

 刀で木っ端微塵に斬り裂かれた腐肉は激臭を伴い、地面に朽ち果てる。


 「今回の環境の試練はこの臭いか。臭すぎて涙が出てきやがる。」


 数はゾンビが三百体、グールも三百体、ヴァンパイアが百体でリッチーも百体、スケルトンが五百体ほどか。


「一応天眼で見ておくか。」



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腐肉死闘鬼マスターゾンビ

存在格:B[58]

状態:腐敗

HP:1800/1800 MP:200/200

物攻:830

防御:260

魔攻:250

魔防:250

敏捷:1050

幸運:0


【通常スキル】

『肉体限界突破』

『速度強化』

『物理攻撃強化』

『聖属性被弱体化』


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常闇食人鬼ダークネスグール

存在格:B[59]

状態:腐敗

HP:1600/1600 MP:200/200

物攻:850

防御:650

魔攻:200

魔防:200

敏捷:750

幸運:0


【環境耐性スキル】

『暗闇無効』


【通常スキル】

『肉体限界突破』

『速度強化』

『物理攻撃強化』

『聖属性被弱体化』


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上級吸血鬼アークヴァンパイア

存在格:A[61]

状態:健康

HP:2000/2000 MP:2500/2500

物攻:1000

防御:500

魔攻:800

魔防:600

敏捷:1000

幸運:10


【環境耐性スキル】

『暗闇無効』

『腐臭無効』


【魔法】

『闇属性魔法』 [上級]


【ユニークスキル】

『血気術』

『血液操作』

『吸血強化』



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死魔天導師リッチー

存在格:S[71]

状態:不死(MPが切れるまで)

HP:2000/2000 MP:5000/5000

物攻:100

防御:100

魔攻:2500

魔防:2500

敏捷:100

幸運:0


【環境耐性スキル】

『暗闇無効』


【魔法】

『闇属性魔法』 [絶級]

『火属性魔法』[絶級]

『水属性魔法』 [絶級]

『風属性魔法』 [絶級]

『土属性魔法』 [絶級]


【ユニークスキル】

『魔道術』

『魔道操作』

『死気』

『魔道強化』


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「強ぇえな。特にリッチー。S級なのも納得できる。物理に弱いのが幸いか。」


 どいつもただの魔物ではなく、存在進化の果てに最大強化された魔物だろう。


 10階層、20階層のボスが可愛く思える。

ダンジョンは俺に何をさせようとしているのか。


 まだ30階層にも到達していないのに、この強さの魔物が出るなんて。


 ゾンビ、グールの群れを始末しながら思考する。

 ダンジョンというより説明文にあった神々の思惑なのか?


 このダンジョンを創造した神々は何の目的があるのか。今は考えても仕方ないか。


 リッチーとアークヴァンパイアの魔法を避け、グールとゾンビの群れの始末にかかる。


 雷化し速度を上げた。

刀に漆黒の魔力を纏い、次々とアンデッドの首を刈り、バチバチという戦闘音を響かせる。 


 毛が逆立ち、さながら怒髪天のような風貌の不動に本来心の無いアンデッド達は感じるはずのない恐怖を感じている様だ。

 

 全身から黄色い稲妻が迸り、一瞬で敵の位置に移動する。

 刹那の時間でゾンビとグールは殲滅。

慌ててアークヴァンパイアとリッチーは各々が自身の最大級の魔法を放つ。


 アークヴァンパイアのスキル構成は殆どがユニークスキルで、血を使い戦闘を行う。

 自身に血気という魔力に似て非なる力を使い全身を強化している。

 吸血強化は他種生命体の血を吸う事で自分にバフをかけるスキルだ。

 血液操作はその補助だろう。


 中々めんどくさいが、何せ速度が違いすぎる。余程の戦闘センスがない限り隙はない。


 リッチーの方だが、小手調べに魔法対決をしても面白いかもしれない。

 魔天導師というだけあって、魔法いや魔導というスキルを使う。


 しかし、使うのは魔法である。

天眼で見ると、魔力に導力混ぜるのだろう。

 導力とは世界に溢れる自然の力。

自身が持つ魔力ではなく、マナを用いて、導く力。人という枠組みの不動には使えない力。


 そしてつまりは、自然のマナを用いる事で最大効率で魔法を放てるのだ。

 

 ただでも多いMPを消費させないと不死は攻略できないのに。

  

 長くなりそうだと溜息をつく不動だった。


 

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