第21話 まさかの水中戦

 26階層へと降りてきた。

階層を隔たる扉を開けて中に入る。

 中は一面が大きな湖の様で、まさかの水中戦を余儀なくされる。


 「嘘だろ。環境適応って言っても水中戦をしなきゃ行けないなんてな。」


 まぁとにかく水の中に入らないことには進めないので思い切って入る。


 水温は各種スキルによって適温に保ち、動きも身体能力でなんとかなる。

 しかし、呼吸だけはどうにもならないので

水面を泳ぐ。


 目は魔力膜で覆い、水中を観察しながら進んでいくとやはり魚型や蛇型、軟体生物型など

普段の海や湖と似た様な生物体系をしている。


 天眼でステータスを把握していく。

ほとんどの魔物が存在格がB級で、水属性魔法を得ている。


 魚はエラ呼吸が有名だが、他の生物の呼吸事情はどうなっているのか観察してみた。

 海蛇型の魔物なんかは鼻から空気を吸い、鼻の表面に空気の膜を作り、そこから空気を供給している様だ。

 尚且つ、純粋に呼吸を止めておける時間も相当長いのだろう。

 人間でも24分間も呼吸を止めたギネス記録もあるくらいだ。


 今の身体能力と魔力膜による空気の供給で

何とかなりそうだ。

 突然、かなりの速度でこちらに向かってくるのを感知した。


 人型?いや魚人のような。


 三又の槍で刺突攻撃を仕掛けてきた。

刀で斬ろうにも水の抵抗で上手く捌けない。

 寸前で躱そうとするが、避けきれない。

左肩に槍が刺さるが、力で槍を奪うことに成功する。


 (流石にお前に分があるか。まぁ動きは理解できたし、ここからは俺の番だな。)


 水中戦において最速で動く方法は泳ぐ事ではない。なぜならそれには生物としての限界が早く訪れるから。

 ヒレを使う事で水を押し出すことより、

水の抵抗をも打ち破る圧倒的な出力を魔力で実現すれば良いだけ。


 体全体に魔力を帯び、四肢や背中、お腹など複数からまるで魚雷の様にエネルギーをバーストさせる。

 最初は感覚に慣れていなかったが、すぐに慣れた。

 水中で自身より圧倒的に早くそして自由に動く不動を見て魚人は敵わないと思ったのか逃げに転じる。


 (逃げるのは良くねぇぜ。お前には実験台になってもらわねぇとな。)


 そう言うと逃げていた魚人に一瞬で追いつき頭を掴む。


 (まだお前のステータスも見てないな。ほら見せてみろ。)

 

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【水王兵】

存在格:B[50]

状態:健康

HP:1500/1500 MP:800/800

物攻:600

防御:580

魔攻:600

魔防:600

敏捷:500

幸運:15


【環境耐性スキル】

『水圧無効』


【魔法】

『水属性魔法』[中級]


【通常スキル】

『槍術』[中級]

『水中呼吸』

『水撃』

『水泳快速』



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 (水中戦じゃなきゃケガすらしないな。もう慣れたけど。)


 水王兵の頭を掴んでいた手を離し、刀に魔力を纏い、水王兵に刺突で攻撃する。

 あまりの威力に沸騰し、周囲の水を巻き込み爆発した。

 

 上半身が諸々無くなり、一撃で絶命した水王兵。

 

 (こんなもんだろ。水中戦は大体掴んだ。化け物だろうが巨体だろうが大丈夫だな。)


 戦闘時の爆発に気づいた他の水王兵もやって来た。数は20人ほど。


(次は魔法だな。水属性魔法か、自爆ありきで雷属性魔法か。)


 水属性魔法の為に魔力を込める。


(領域を破壊せよ。

『水属性魔法絶級、激流怒ゲルド』!!)


 解き放たれた魔法は、水中生物すら絶望する激流を起こした。

 不動自身は巻き込まれない様に魔法を制御し、水王兵は体の自由が効かない勢いに頭が混乱した。

 激流と激流がぶつかる。

水王兵の体は魔法による水圧の為、環境耐性スキルを持っていてもその体はグチャグチャに千切れる。

 20もの水王兵が一瞬で圧死し、辺りは真っ赤な水で視界が濁る。


 その後も次々とやって来る水王兵を始末し、階層の果てに到着。

 水王兵の巨体版の様な偉そうな魚人が腕を組んで立っていた。

 かなりの強さを感じるが……。


(見るまでもないな。とっておきを試すか。)


 不動は体を雷化する。雷は水中では拡散するが精密な魔力制御で指向性を持たせる。


 魔法という不思議な原理にもはや慣れた。

現実には起こり得ない事も起こせる。


 水王に対して、最大級の雷撃を放つ。

バチバチと水王へと向かうが阻まれる。


(超純水?そりゃ水属性魔法もかなりの練度だろうな。関係ねぇ。)


 不動の体から紅い雷が迸る。

真紅の雷は少しずつ黒く染まっていく。


 (ただの神雷じゃあ面白くねぇ。魔神功も混ぜてみるか。)

 

 (跪き後悔せよ。『雷属性魔法神級、雷獄天槍』!!)


 巨体な水王が鼠ほどの小ささに感じるほどの紅黒い禍々しい雷槍が水王を押しつぶす。

 巻き込まれないように魔神功でバリアを張る。


 水王の肉片すら残らず消え、半径10キロメートルの水が蒸発した。


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『雷属性魔法』が[絶級]から[神級]へと進化しました。



『レベルアップしました。現在のレベルは73です。』


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 地形すら変わり、周囲には隕石が落ちたようなクレーターができた。


 魔神功のバリアを解く。周囲には水すら無い。


 「やりすぎた。ま、いっか。」


頭をぽりぽりかきながら、次の階層へと向かう。









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