第11話 大罪スキル『怠惰』の力
「ほら、来いや。怠惰スキルとやらを使え」
挑発を受け取った怠惰牛鬼のどす黒い魔力がその巨体を這う。
次の瞬間、不動の体から力が抜けていく。
「ははっ。これが怠惰の力か…。なるほどな。」
全てのステータスの数値が軒並み半分に下がる。この世界ではステータスが絶望的な差を生む。
大人の男性の物攻のステータスが5だとして
子供の女の子の物攻のステータスが10だと
女の子が力勝負をすると勝つ世界なのだ。
厳密には体格や筋肉、細胞一つ一つに存在する魔力量によって物攻の高さは変動するので
実際は考えられないが、それ程にステータスとは、戦いにおいて一つの比較とされる。
それが半減なのだ。
誰しもが圧倒的に不利だと判断できるだろう。
そうこの男以外は。
「ちょうどいいハンデだ。ぶっ殺してやるから本気で来い!!」
その言葉の後に、怠惰牛鬼は掻き消える。
挑発と受け取ったのだ。言葉の意味は分からぬが不遜な態度に激怒したのだ。
怠惰な魔物が本気を出す。
「くははは!そうじゃなくちゃなぁ!!」
不動の背後に現れた怠惰牛鬼は既に攻撃モーションを完了させている。
当たれば即死は免れない。
「
迫る拳に不動の刀が撫でるように絡みつき、
拳の力を受け流す。
差し詰め、雲の中に正拳を打つかの如く
無力化する。
「もう慣れたからなその速度には。」
「シャベルノメンドクサイ。オマエモメンドクサイ。ハヤクシネ。」
「なんだよお前喋れるのか。てか言葉もわかるんだな。」
「……メンドクサイ。」
「じゃあ生きてるのも面倒くさいだろ。さっさと殺してやるよ。」
(っても、速すぎてこちらの攻撃は当たんねぇ。こいつの怠惰スキルの真理を理解しねぇと……。)
不動の脳内は、フル加速し、前世も含む経験を思い出す。
(そう。たしか…あの時にも似たようなスキル持ちが居たな。聖皇国の神聖騎士に……。)
考えながらも、怠惰牛鬼の強烈な拳を受け流す。
(名前は確か…【忠義】の神聖騎士ミトス
元徳スキルの保持者だったな。)
【忠義】の神聖騎士『ミトス・マーベル・クライン』
・七つの元徳スキルの一つ、『忠義』の保持者。
聖皇国の第三神聖騎士団の団長であり、その忠義は聖皇国の聖皇と国民たちからは絶大な信頼と尊敬を受けていた。
『忠義』スキルは自身と味方への強力なバフと敵への恐怖や死への恐れを無くす。
(奴は厄介だった。何せ死への恐怖が無い強力な兵士を量産出来たからな。種類は違うがあの時と同じ魔力ではない力を感じる…。)
天眼スキルを使い、思考を組み込む。
奴の魔力は黒紫、だが、怠惰スキルを使う際は完全な黒になる。
(『忠義』スキルの時は完全な白に輝いていたな。あれは聖なる力を感じたが、今回は邪な力を感じる。そう。魂へと直接干渉するような厄介極まりない力だ。)
不動は過去を辿り、対抗策を思い出す。
「魂への干渉ならこうすれば良い。」
魂への直接干渉は禁術の一つとして前世では定められていた。
死者蘇生、ネクロマンス、
(前世の俺は、禁術の一つ、輪廻転生への干渉を会得した。まぁ、
怠惰スキルに抗体が出来、全てのステータスが元通りになった。
「さぁ幕引きと行くか。もうお前の怠惰スキルは俺へは効かない。消え去れ牛野郎。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます