第10話 怠惰の強者
20階層へと降り、地獄門を開く。
部屋は紫と黒が基調となっており、壁や床には血管の様な模様が見える。
壁や床の血管は脈を打ち、生きているのかと見紛う程で、これがダンジョンだと知らなければ圧倒的なスケールの超巨大生命体のお腹の中だとすら錯覚する。
少し歩くと4メートルはあろう巨体が見える。
目を凝らすと生き物のお腹の様だ。
巨体はこちらに気づくがお腹をポリポリと引っ掻くとまた眠りに落ちる。
「ふざけた奴だな。んまぁ、とりあえず鑑定するか。」
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【
種族:大悪魔
存在格:A[69]
状態:怠惰、睡魔
HP:4444/4444 MP:2424/2424
物攻:999
防御:666
魔攻:999
魔防:666
敏捷:2444
幸運:0
【大罪スキル】
『
【ユニークスキル】
『
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『
・七つの大罪の一つ【怠惰】を司るスキル。
周囲のあらゆる生物の意欲を削ぎ、堕落させる。
『
・その拳は全ての存在を破壊せんとする。
拳に魔力を纏い時に攻撃力、魔力操作、身体能力が大幅に加算される。
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「出ました…チートモンスター。なんなんこのダンジョンは。怠惰って大罪の?まさかこんなんがまだまだ出てくんのか?大悪魔ってやつはよぉ。」
牙の鋭い牛顔で巨大な体は真っ赤な皮膚で覆われている。
肉体は筋肉と脂肪で覆われ、まるで重装兵の様に体を守っているのだろう。
目の前まで来ているのに余裕な態度でイビキをかいて寝ている大悪魔にとりあえず攻撃を仕掛けてみることにした。
「喰らえや!!鬼剣・
(これで終わるだろ。大層な名前のくせによぉ!!)
黒い魔力を纏った斬撃が怠惰牛鬼に当たる寸前に、音も無く牛鬼の姿が掻き消えた。
「はぁ!?どこだ!?ぐはぁっ!!」
必中距離での攻撃、油断もなかった。
…なのに見失った。
敵は油断して寝ていたはずだった。
なのに、まるでそこに居なかったと錯覚する程の速度。
放った大技後の僅かばかりの硬直にカウンターが飛んできた。
その大きな拳から放たれた掌底が不動の身をふき飛ばす。
(ってぇな!!何だよあの威力と速度!!絶対当たったと思ったのによぉ。体力もかなり削られた……。)
立ち上がってこちらを気怠そうに見てくる怠惰牛鬼。
(くそがよぉ。余裕かまして怠そうにしやがって。)
瞬間、目の前に現れ、既に拳は握られている。眼前に拳が迫る。
何とか腕をクロスさせガードするが、衝撃は不動の体を突き抜ける。
更に吹き飛ばされたが、怠惰牛鬼はその場で動こうとしない。
(ってぇ。あの速度…厄介だな。しかもまだ大罪スキルは使ってねぇ。あぁ。本当に厄介だ。)
絶望する程の速度に太刀打ちが出来ない。
心が折れたかの様に見えた不動の顔は狂気の笑顔に染まる。
(そうそう。これだよこれ。戦闘ってのはこういうもんだ。前世でもそうだった。あの龍人は厄介だった。あのクソ速い龍人はどうやって倒したっけな。)
覚えていないはずの前世の記憶が、戦闘によって朧げに甦る。
怠惰牛鬼が攻撃モーションに移行しようとしている。
(あぁそうそう。そうだったわ。)
「ここだ!!」
ガキィイイイイインン!!
不動の刀と怠惰牛鬼の魔力を纏った拳が大きな音を立ててかち合う。
「後の先ってか。」
その後も何度も打ち合う。
「もう慣れたぞお前の拳と速度は。」
かつて闘った龍人はこの倍は速かった。
何度も何度も闘って、何度も何度も手を焼かされた。
その苦戦の末に編み出した武技。
名を『
相手の予備動作、癖、反応、五感全てを読み取り、究極の先読みを実現する。
更に、自分の動きで相手の動きを誘導する事でまるで未来が見えている様に錯覚するほどの後の先を体現する。
「もう通用しねぇよお前の拳はよ。」
挑発と受け取った怠惰牛鬼の気怠そうな顔が能面の様な無表情へと変化し、怠惰を司る魔物は圧倒的なプレッシャーを放った。
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