最終話 金子ひなたの感慨
私は屋上でお弁当を食べながら紗理奈の話を聞いていた。
彼女は普通に話しているつもりのようだが、これはもうはっきり言って惚気である。聴くに堪えないので適当に返事をしておくことにした。
「うー、『私の初めてを貰ってください』って迫ってたのに、実はヤリマンだったのが淳史さんにばれちゃったよー」
「嘘をつく手間が省けてよかったんじゃない」
「童貞かと思っていたら、ちんちんは大きいし、セックスも超絶うまいんだよ。あれは絶対いろんな女と遊んでるな。許せん!」
「紗理奈がそれを言う? どの口で言ってんだって感じだよね」
「でもさ、昨日なんか、山へ行こうっていうから、外だとどんな体位でやるのかなって楽しみにしてたのに、ただ一緒に山に登って降りただけなんだよ。さかりの終わったクマの夫婦かって」
「で、楽しくなかったの?」
「え、楽しくなくはなかったけど、、、」
「そんなことよりさ、いつ私と淳史さんとやらせてくれるの? 紗理奈がそんなにうまいっていうなら、楽しみだなー」
紗理奈の表情がこわばって、口をパクパクさせている。これはマジ面白い。
「冗談だよ」
たちまち彼女の表情が緩み、涙を浮かべている。
「ねこちゃんの馬鹿!」だってさ。
「紗理奈、今すごく幸せだよね。よかった。よかった」
「・・・ん」
私は、泣きだしそうになるのをこらえて唇をかんでいる紗理奈の肩を抱いて、頭をよしよしと撫でてあげた。
「めでたし、めでたし」
(完)
9
紗理奈の初恋模様 廣丸 豪 @rascalgo5
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