第3話 黒崎奈々の場合

田中は俺と殆ど話さず引き篭もった。

俺は額に手を添えながらそのまま横の黒崎先輩を見る。

黒崎先輩は、まあ仕方がない。こういう事もあるだろう、と言いながら苦笑する。

それから俺達はそのまま歩く。

そして黒崎先輩の部屋に着いた。


「私は趣味としてゲームが好きでね。ゲームを集めるのも好きだ。部屋はゲームだらけだがすまない。見苦しいかもしれないが勘弁してくれ」


「ゲームって見た事しかないけど任天堂スイッ○とかですか?」


「私が好きなのはその様な新たなゲーム機ではない。先程も見せたがVit○とかな。セガサター○とかWi○とか古い機種だな」


「ああ。そうなんですね。楽しいですか?」


「ふむ。楽しいぞ。特にプ○ステ2など」

 

「古い機種ほど面白いって言いますしね。噂では」


ふむふむ。よく分かっているじゃないか、と笑顔になる黒崎先輩。

それから、君の世代ならゲームキュー○か、と言ってくる。

ちょっと古すぎですね、と言う俺。


「多分世代的にD○ぐらいですよ。任天○の」


「ふむ。D○は良いよな。なんたって充電持ちが良い」


「ですね。聞いた噂では」


「3D○は好きかね」


扉を開けながらそう聞いてくる黒崎先輩。

部屋の中を見ると。

そこはゲーマーの世界だった。

色々なカセット。

ディスクが置かれている。

当然だがゲーム機体も、だ。


「これは圧巻ですね」


「隣人から貸してくれ、と言われるぐらいだ。200、300は有るだろう。私はゲームに助けられた人生だったからね」


「.....?」


いや失敬。そんな暗い話じゃないが暗くなるよな、と話した。

俺はその言葉に、いえ。色々ありますよね、と言いながら少しだけ複雑な顔になる。

それから話題を切り替える様に聞いてみる。


「先輩は何のゲームが好きですか?」


お茶の様なものを淹れてくれる先輩に聞く。

戸棚に触れてから、それはまあ.....マリ○かな、と笑みを浮かべて俺に向いた。

俺は、難しいですよね。昔のマリ○、と言うと。

黒崎先輩は、だな、と答えた。

それから昔はあまりコンティニューが効かないからな、と苦笑いを浮かべる。


「例えばグラディウ○。チート使わないといけないからなぁ。あれは面倒だな」


「熟練のゲーマーでも難しいって聞きました」


「スターフォック○も難しい。昔の分はね」


「とにかく昔のゲームは難しいって事ですね。俺は殆ど関わり合い無かったので.....ゲームとか。何かこうやって何気にゲームに関わり合いが出来るなんて嬉しいです」


ゲームをやった事が無いのか?君は不思議な人だな、と黒崎先輩は目を丸くする。

俺は、親を失っての孤児院育ちだったですから。お金無かったんです、と苦笑する。

すると黒崎先輩は、あ.....そうなのか、と眉をそのまま顰める。


「すまない。配慮が足りなかった」


「先輩。謝る事は無いです。有難う御座います。優しいですね。先輩」


「私は優しい姿じゃないとやってられない。だがこの気持ちは本心だから。安心してくれたまえ」


「ですか」


ああ、と返事する黒崎先輩。

俺はその言葉に母性を感じた。

母性って歳上の.....しかも女子高生に使って良いものかは分からないが。

俺は少なくとも魅力を感じる。


「まあとは言え私は昔はいじめっ子だった」


「?.....そうなんですか?」


「ああ。だからこそ今はしっかりしないと、と思うんだ。私に残された償いだ」


「以外ですね。まさか先輩が、なんて」


お茶を見つつ。

持って来ながら、だろう、と苦笑い言ってくる黒崎先輩は、お茶菓子は何が良いか、と聞いてくる。

俺は、お構いなく、と答えながら黒崎先輩を見る。

黒崎先輩は、そうか。ならばせっかくだ。ゲームでもしないか、と言ってくる。

俺は、でもした事無いっすよ?、と話す。


「まあその割には豆知識はいっぱいじゃないか。大丈夫。直ぐに出来る様になるぞ」


「ですかね。まあそうやって先輩が言うなら大丈夫かもしれないです」


「久々に相手が居ると腕が鳴るな。有難う。最近は苺も忙しいものだからなかなか付き合ってくれないから。そしてみんなもね」


黒崎先輩は俺を見てくる。

それから笑みを浮かべてからニヤッとする。

そしてコントローラーを渡してきた。

俺はそのコントローラーを受け取りながらテレビの前に腰掛ける。

黒崎先輩は俺の前に立ってからゲームを起動させる。

恐らくだが64?っぽいのを。

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