第4話 ハイカロリー・ノーリターン

 異世界で、かつての相方が落ちていました。

 全く人生、油断も隙も無い。


 「うー、ひどい目にあった。」

 グズグズ文句を言いながら、ユリはオーク肉の角煮を齧る。

 これ、結構な自信作。

 脂までトロトロで、酒に合う。

 角煮も酒も魔法を使っているから、通常時間も手間も掛かるところが一瞬さ。

 12歳が飲酒していいか?問題は、異世界だから棚上げする。


 「で、なんであんたまで転生してるのよ?」


 ユリは、私が死んで1ヶ月半で死んだらしい。

 別にコンビ愛がどうのとか、感動的?な理由はない。

 相方が死のうが生きようが、生活していかなければならない。

 久しぶりの出演依頼にテレビ局に向かっていて、階段落ちした。

 タクシーなんて使えないから、駅の階段を。

 ユリの体も限界だったのだ。

 芸のために無理矢理痩せて、直接の死因は外傷性ショックだが、要は栄養失調でふらついた。

 階段を転げ落ちて、首が無理な曲がり方をしていて、

 『こんな終わり方をするなら、好きなもの食べておけば良かった』と思って。


 ???

 思考が切れない⁉️


 「で、気がついたら、こっちのユリになってた。」

 ユリの転生先は、木こりの家のユリ。

 庶民なんで苗字はない。

 家を追い出され、空腹でさ迷っていた。

 倒れて(多分死んだ)、そこにユリが転生。

 で、今に至る、っと。


 私達はそのまま酒盛りに突入する。

 「ひどいと思わない⁉️」は、ユリ。

 「この体、水を飲んでも太るのよ‼️」

 家族に盗み食いを疑われ、追い出された。

 庶民は1日1日の生活が精一杯。

 そこに1人燃費が悪いやつがいるだけで、人生がつむ。

 「母さん、痩せすぎだった?」

 「?まあ、痩せてたね。」

 「なるほど。」

 ユリは私の逆パターンだ。

 公爵家に生まれれば幸せになれた。

 病気で早死にだろうけど。


 「もう、どうでもいい‼️」

 ガツガツ食べて飲むユリは、前世は芸のために食うや食わず、今世は食べないで痩せようにも、食べなくとも太る体質で。

 大変だなぁと思った私は、そこら辺に生えていた野草を原料に、あるものを製作する。

 異世界テンプレ、魔法はイメージ‼️

 来たれ‼️

 食欲女子の味方‼️

 カロリ◯ットファンケル‼️


 異世界のカロ◯ミットファンケルは、やたら効き目が素晴らしかったとお伝えしよう。

 以後はカ◯リミットとお友達、好きなだけ食べても太らない、少しずつ痩せ始めたユリと楽しく暮らしていた。

 ある日、

 「ん?誰か来る」と、ユリが言う。

 足元がおぼつかない。

 大樹の前で倒れ意識を失った大福は……

 また少し太ったらしい、私の兄だった。



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