第2話 ハイカロリー・ハイリスク

 私の転生先は、いわゆる異世界貴族だった。

 ハイ、もう1度。

 「流行りもんかーい‼」


 転生パターンは0歳からやり直しじゃない、12歳の体に宿った。

 公爵令嬢、アン・ロッゾ。

 私が目覚めた時、この子、台所でアップルパイ、貪り食っていたんですけど‼


 公爵って、国の最高峰だよね、王族除く。

 そこのご令嬢が何してんのさ‼

 ボケなんだから、突っ込ませないでよ‼

 

 明らかな深夜、台所できっちりアイスクリームまで載せてパイを貪る少女。

 深夜にカップラーメンを超えるハイカロリー。

 これを超えるには、深夜の次郎系ラーメンか、ドミ〇ピザLサイズしかない。


 彼女は、やってることはともかく可憐だった。

 キラキラの金髪で、少しウエーブのかかった髪が腰まで伸びる。

 サファイヤの瞳。

 まだまだ女性らしくはないが(ぶっちゃけ胸はない)、絵に描いたような美少女だった。

 2年連続、『抱きたくない女芸人ナンバー1』をとった私が入り込むには、申し訳ない美人さん。

 

 あー‼あと1回で殿堂入りだったのに‼

 惜しいことをした。

 今初めて、死んで悲しいと思ったね。


 いやまあ、『抱きたくない、云々』はともかく。


 この新しい私、顔面にアイスクリームとカスタードクリームがついている。

 『罰ゲームかーい‼』と思ったが、おそらく意識を失ったのだ。

 盗み食い中に意識を失い、そのままアップルパイに倒れた。

 クリームに溺れ(←多分違う)死にかけて、近くを通った私の魂が入った。

 

 新しくもない転生パターンだが、状況は新しい。

 前のアン・ロッゾ、あんた、芸人かーい?


 でも、なんで『夜中にアップルパイ』?

 新機軸の少女漫画か、これ?


 その疑問は取り合えずパイを平らげて、顔を洗ってひと眠りした、翌朝すべてが解き明かされた。


 「まったく、相変わらず細い子ね」と、蔑んだ目で私を見た、お母様は太っていた。

 身長は、170センチくらいはあるかもしれないが、それよりも増して横に大きい。

 多分体重150キロくらいある。


 「ロッゾの娘が痩せていては外聞が悪い」と吐き捨てた、お父様も太っていた。

 身長は、お母様より小さめで160センチくらい。

 でっぷり5段腹で、体重はお母様より重そうだ。


 「なんでお前だけ太らないんだ?」と聞いた、お兄様も太っている。

 年が離れているのかな?20歳くらいに見える。

 身長は1番大きく180センチくらいあるが、この人も多分150キロくらいありそう。


 「ワン‼」と鳴いた、真っ白な飼い犬も大柄で……


 この世界、金も地位もある人は太っているべき世界だった。

 それだけ贅沢ができる、上流階級の象徴、イコール、デブ。


 前世でもこう言う価値観の国はあったけど……


 とんでもない世界に来てしまった。

 私、糖尿病の合併症で死んでるんだけど……

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