ノーカロリー・ノーライフ

@ju-n-ko

第1話 ハイカロリー・ハイテンション

 私、アンはお笑い芸人だった。


 なんで過去形?

 そりゃあ、勿論死んだからさ。

 いや、自分でもそろそろやばいと思っていた。

 33歳、早逝だね。


 お笑い芸人の世界は大変だ。

 夢を持って、夢を見て入門するも、鳴かず飛ばず。

 バイトに明け暮れる人間もある。ひっそり舞台を去る人間は星の数。


 そんな中で、私と相方ユリとのコンビはたまにはテレビに出られるくらい、通りすがりのガキに絡まれるくらいは有名になった。


 お笑いの女性コンビには鉄則というか、パターンがある。

 2人共可愛いよりも、2人共不細工なほうが良い。

 だってアイドルじゃないんだし。

 2人共痩せぎすならいいけど、スタイルがいいのはいただけない。

 アイドルじゃないんだから。


 対照的であることが理想だった。


 で、私達のコンビは、ユリが痩せぎす、私が大デブ。

 ユリが突っ込み、私がボケで、突っ込むとボヨヨンと跳ね返る。


 お陰で29歳の時糖尿病と診断された。

 体重3桁あるんだからさ。

 身長も3桁なのにね。

 

 ……

 いやいや、死んでまでボケなくてよい。

 身長は150センチなかった。


 ただ世の常として、家族の中でそこそこの成功者が出ると、めっきり働かなくなる人がいる。

 ハイ‼うちの家族‼

 私が、

 「このままだと死んでしまうよ」と町医者に脅されている時、父も母も、2人の兄までパラサイトだった。

 

 デブは飯のタネ‼

 ノーカロリー・ノーライフ。

 痩せたいとか、言える状態じゃなかったね。


 一応血糖をコントロールする薬は飲んでいた。

 でも、血糖をコントロール、イコール、痩せることだ‼

 そういうわけにはいかないのだよ、明智君。


 だから薬を飲みつつ暴飲暴食と言う、史上稀にみる不良患者となった。

 決して真似はしないで下さい。

 喫煙より、飲酒より、何ならいけないお薬より、あなたの寿命を縮めます。


 お陰で……

 33歳の誕生日、2度と目を覚ますことはなかった。

 寝ている間の心筋梗塞。

 ある意味眠るように逝けて良かったけれど、ユリのことは少し心配。

 あいつ、ピンになって大丈夫かなぁ?

 ユリ自身も痩せぎすを維持するために、欠食児童もかくやの生活だったから、引退するのもいいかもね。

 

 まあ、死んだ私が心配しても仕方がない。

 家族の方は……

 病気の欠片も無い頃入った生命保険があるし、早逝だからそれなりに貰えるだろう。

 無くなるまでに真人間になれよ、貴様ら。

 

 ……


 散々なことを考えていた。

 思考が切れないのは、こういうものだと……

 誰も死んだことはないのだから、意外と死ぬって軽いなぁと思っていた。


 違いました。

 皆様期待しないで下さい。

 死とは『終わり』です。

 普通考えることも出来ません。

 『無』なのです。


 どうやら私、転生したようです。


 「流行りもんかーい‼」(←突っ込んでみた)

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