第18話 六角攻め

 織田信長が1668年9月7日に足利義昭と合わせる形で、尾張、美濃、北伊勢の15000の軍勢を率い、岐阜を経った。そこに、織田の盟友である徳川から松平信一軍1000、浅井長政勢3000が加わった。翌日9月8日には、近江高宮に、9月11日には愛知川北岸にまで迫っていた。この時の織田軍は50000〜60000程度も居た。

 対する、六角軍は本陣を観音寺城とし、当主・義治、父・義賢、弟・義定と馬廻り衆1千騎を、和田山城に田中治部大輔らを大将に主力6千を、箕作城に吉田出雲守らを武者頭に3千をそれぞれ配置し、その他の軍も18の支城に配置した。この布陣で六角軍は、織田軍が和田山城を攻撃した際に、観音寺城と箕作城の軍で織田軍を挟撃しようとした。


-9月12日-

 敵の動きを読んだ織田軍は、軍を3つに分けた。稲葉良通率いる第1隊が和田山城に、柴田勝家、森可成率いる第2隊が観音寺城に、そして、信長、滝川一益、丹羽長秀、木下秀吉等の第3隊が箕作城に向かった。戦は箕作城で最初に戦闘が起こった。


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 俺はとうとう、デカい戦に参加している!俺は、秀吉さまの部隊の足軽大将に抜擢された。木下隊2300は秀吉さまが大将で、そばには半兵衛どのや長秀どのが付いていて、権兵衛が馬廻り衆の1人として、近くにいる。足軽隊は3つに分かれており、1番隊を小六どのが、2番隊を俺が、3番隊を小右衛門どのが率いている。


「禿げ鼠よ、そなたの隊は北の口をせめ、長秀(丹羽長秀)は、東の口より攻めよ。」

「はっ。」


一度、攻勢を掛けた織田軍であったが、守将吉田出雲守の守りに阻まれ、城を落とすことができず、逆に攻め返されるはめになった。そのため、木下隊では、軍議が開かれた。


「此度の箕作城攻めは、敵の守りに阻まれたが、その守りを崩せる策を持っておるものはおらんか。」


俺は、今回の攻めを見ていて策を思いついたため、進言した。


「秀吉さま、当たり前のようですが、夜襲はいかがでしょう。」

「夜襲か。。。じゃが、ただ攻めては、勝てぬぞ。」

「そうですね。。。」


すると、半兵衛どのが口を開いた。


「私も、一郎どのの夜襲に賛成します。そこで、『兵は詭道なり。故に能なるも不能を示し、用なるも不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、実にしてこれを備え、強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓し、卑にしてこれを驕らせ、佚にしてこれを労し、親にしてこれを離す。その無備を攻め、その不意に出ず。』。」

「なんじゃそれは。」

「孫氏にございます。戦とは騙すことにございます。つまり、兵がいなくてもいるように見せれば良いのです。そこで、3尺の松明を数百本用意させ、中腹まで50箇所に配置し一斉に火をつけ、これを合図に攻撃します。すると、城内の兵は昼に戦った敵がせめてくる筈はないと思っております故、篝火の数で敵が全軍で攻めてきたと勘違いし、混乱します。」

「おぉ。そうか。半兵衛の策を採るぞ。」


俺はこの時、信綱さんから教わった兵法はこのような時に仕えばいいのだと知った。


-その日の夜-

 木下隊のみが、夜に箕作城の付近に忍び寄っていた。秀吉の合図で一斉に松明に火が付けられると、木下隊は突撃した。箕作城内では、何事かと思い、起きた守兵は外の様子を見て、驚いた。半兵衛の思惑通り、敵は織田軍が全軍で攻めてきたと勘違いし、逃げ惑った。逃げ惑う敵兵を次々と討ち取っていった。


「我こそは、木下家臣足軽大将竹田一郎なり!そこの御仁、待たれよ!」

「。。。我こそは箕作城城主吉田重高なり。お相手いたす。」

「では。」


俺は、馬上から槍を振るい、敵の首だけを狙った。


「お主、中々やりおるのう。」

「。。。」


しばらくすると、敵将の声が聞こえなくなった。振り返ると、敵は地面に倒れていて、俺は馬だけを追いかけていた。我に返り、敵の首を取った。気がついたら、戦闘は終わっていて、木下隊が勝利を収めていた。俺は、敵将の首を秀吉さまの元に持って行き、首実検をした。この戦で敵の首級が200も上がった。


 昼頃には、信長などの隊も入城した。木下隊は城を落とした褒美を与えられ、その褒美は敵城主を討ち取った俺にも周ってきた。


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 一方、箕作城落城の知らせを受けた和田山城は戦わずに落城。箕作城、和田山城落城を聞いた六角義治は、観音寺城の防備が弱いことを悟り、甲賀へ逃走した。当主を失った日野城以外の17の支城は織田軍に下り、大勢が決した。


-日野城降伏干渉-

 日野城城主蒲生賢秀は当主逃亡の知らせを聞いてもなお、城に籠城し、抵抗を続けていた。


「賢秀さま、織田の使者の神戸具盛どのが参られました。」

「な、すぐにお通しせよ。」

「はっ。」


しばらくして、男が連れてこられた。この神戸具盛こそ、蒲生賢秀の妹を妻とする織田方の武将である。


「具盛どの、久しゅうのう。」

「えぇ、義兄どのも。」

「降伏干渉であろう。」

「えぇ。今なら、信長さまは義兄どののお命は取らぬとのこと。その代わり、人質を出していただきたい。」

「。。。正直、儂も六角さまには諦めかけておった。良いであろう。人質は我が3男の鶴千代でいかがか。」

「分かり申した。では、その旨で伝えてまいります故、城を明け渡す用意を。」

「うむ。」


こうして、日野城が開城すると、近江における織田の対抗勢力は消えたに等しかった。


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「そなたが、蒲生賢秀の子息の鶴千代か。」

「はい。」

「そうか。蒲生が子息目付常ならず、只者ではないのう。我婿にせん。」

「はい。」


 鶴千代こそ、後に蒲生氏郷となり、会津91万石の大大名となる者である。

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