第16話 軍師半兵衛
−1567年8月−
斎藤家は美濃国での力を失い、当主龍興が長良川を下り、伊勢長島へ逃亡したことで、大名としての斎藤家は滅亡した。旧斎藤家臣が織田の支配下に下る中、竹中半兵衛は浅井に3000貫で仕えたが、1年足らずで、旧領の岩手に戻っていた。
−稲葉山城−
織田信長は、斎藤家の居城稲葉山城を落とすと、尾張政秀寺を開山した沢彦宗恩を城に招いた。
「和尚、儂はこの地の名を改めようと思うが、良い名はあるか。」
「では、岐山はいかがでしょう。」
「否。」
「ならば、岐陽は。」
「否。」
「しからば、岐阜は。」
「。。。岐阜か。良い名じゃ。貞勝はおるか。」
「はっ、ここに。」
「すぐに、触れ書きを出せ。」
「はっ。」
「ところで、和尚、岐阜というのはどういう意味で。」
「昔、周の時代に「岐山」という所に都を置き、そこを拠点にして殷の国を滅亡に追い込んだ縁起のいい地名とされているのです。」
「そうか。誠に縁起の良い名じゃ。」
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−岐阜城−
改名をした岐阜城で、斎藤家に勝利したことの祝の宴会が開かれた。その場には、勿論、柴田勝家、佐久間信盛や林秀貞などの織田の重臣も集まっていた。その場には、木下秀吉の姿も見えた。
「禿鼠よ、何かして見せよ。」
「はっ。」
秀吉は猿芝居をして見せた。それが中々うけたので、秀吉も調子に乗り、過激になった。
「田舎猿よ、静かにせい!」
皆が大声に驚き、静かになった。
「これは、柴田さま。申し訳ございません。この猿め、静かにします故。」
「クッ。」
勝家がそう呟いた。そのため秀吉も騒がしくするのを止めた。しばらく、各々が静かに呑んでいると、信長が秀吉を呼び出した。
「信長さま、どういたしましたか。」
「岩手におる竹中半兵衛がおるであろう。」
「えぇ。」
「あの者は昔から儂の配下に加えたいと思っておった故、お主があの者を引き抜いてこい。」
「えっ。」
「褒美は用意する。どうじゃ。」
「。。。分かり申した。」
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−竹中半兵衛の屋敷−
俺は、竹中半兵衛どのを引き抜くために、秀吉さまに権兵衛と共に連れて行かれた。着くと、そこは山奥の小屋だった。
「秀吉さま、居りませんな。」
「あぁ、権兵衛少し、周りを探してみよ。」
「はっ。」
しばらく、権兵衛が小屋の周りを探したが、人影は見当たらなかったそうだ。
「そうか。ならば、文を残しておこう。」
そう言うと、秀吉さまは置き手紙を書かれた。
次の日、俺たちはまた半兵衛どのの小屋に向かった。その日は半兵衛どのがおられた。半兵衛どのは顔が色白で女性のようであったため、俺は本当にこの人が稲葉山城を17人程度で乗っ取れたのかわからないような容姿であった。
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1564年2月に半兵衛は有り得ないような事件を起こした。それは、稲葉山城の乗っ取りである。稲葉山城は山城であるため、強固な城であるが、それを17人で乗っ取ってしまったのである。勿論、正面からの戦闘ではなく、龍興から寵愛されていた、家臣等を討ち取り、斎藤家を正そうとしたのである。その知らせを聞いた信長は「稲葉山城と美濃半国」を交換しようとした。しかし、半兵衛はこれを断り、龍興に城を返したのであった。
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「おぉ、半兵衛どの。儂は織田家家臣木下秀吉にございます。」
「私は、竹中半兵衛にございます。文は読みました。」
「おぉ、そうであったか。ならば、話が早い。織田家に仕えていただきたい。」
「お断りいたす。私は、ここで余生を過ごすと、決めましたので。」
「そうか。。。では。」
-また次の日-
「半兵衛どの!」
すると半兵衛どのは小屋から出てきて、困った顔をした。
「また、来られたのですか。」
「頼む!お主しかおらんのじゃ。」
「。。。困ります故。」
「この通りじゃ。」
秀吉さまは頭を地面に付けて、頼み込んだ。
「やめてくださいませ。」
「頼む!」
「。。。わかり申した。顔を上げてください。」
「真か!」
「しかし、信長どのには、仕えませぬ。」
「儂にか。。。」
「はい。秀吉さまならば必ずや天下を取れると思いました故。」
「かたじけない。。。」
最後は、半兵衛どのが折れ、秀吉さまの傘下に加わることとなった。同時に、牧村利貞どの、丸毛兼利どのも秀吉さまの配下に加わった。こうして、秀吉さまの配下が3人増えた。
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