第15話 織田の禿鼠と稲葉山城
−小牧山城城下木下邸−
「信長さまから聞いたわ。お主が儂の寄騎となるとのう。」
「はい。」
今日は秀吉どのの弟はいなかった。聞くと、彼はすごい人物らしい。聞いたと所、一夜にして、城を築城してしまったらしい。
「お主の名を聞いておらなかったのう。」
「竹田一郎にございます。上泉信綱さまより、剣術、兵法を学び、印可を頂いて、個々に参りました。」
「何!上泉どのに習っておったのか!」
「はい。箕輪より参りました。」
「そうか。長旅であったであろう。」
「弟君のお名前は。」
「あぁ、あやつは長秀じゃ。」
「長秀どのには世話になった。」
「そうか。して、お主、戦えるか。」
「はい。7年で私も成長しました故。」
「そうか。」
「貴方様、何処におられますか。」
女性の声がした。
「寧々、待っておれ。あの者は儂の嫁さんじゃ。」
「そうですか。ならば、私は待っておりますので、どうぞ。」
「すまぬのう。」
そう言い、秀吉どのは席を外し、寧々どのの元に行った。しばらくすると、戻ってきた。
「すまぬな。子供たちが喧嘩をしていてのう。」
「いえ。」
「今から、お主に会わせたい者がおる故、付いて参れ。」
「はい。」
馬に乗り、しばらく走ると、港に来た。俺が辺りを見回していると、秀吉どのが、俺を呼んだ。
「一郎、この者たちじゃ。」
紹介されたのは、長身で盗賊の様な見た目をしている男性と凛々しい顔をした男性だった。
「一郎、この者が蜂須賀小六じゃ。こっちが前野小右衛門じゃ。」
秀吉どのは、長身の男性を蜂須賀小六と紹介し、凛々しい顔の男性を前野小右衛門と紹介した。続いて、その2人に俺のことを紹介した。
「お主等、この者が竹田一郎と言うて、信長さまより登用されたのじゃぞ。今は、儂の寄騎じゃぞ。」
「はっは!信長さまは、秀吉に寄騎を付けられたか、まぁ、儂等も秀吉の配下故、仲良くしようぞ。」
小六どのが、大声で笑いながら、そう言った。
「はい。」
こうして、俺は秀吉どのの配下武将2人を紹介された。その日は、木下邸に戻った。俺はしばらくの間、ここに住ませてもらうことになった。
-1567年8月15日-
俺はこの日、木下秀吉部隊の馬廻衆として、長秀どのや小六どの、長康どのと共に落城寸前の斎藤方の居城稲葉山城に打ち入った。木下隊の足軽部隊は兵数約300人で参戦した。俺は、とにかく敵を殺さないために、逃げるように諭した。そんな中、15歳ほどの少年が槍を持ち、味方が逃げる中1人、織田軍に立ち向かう者がいた。
「我こそは、斎藤家臣仙石家当主仙石権兵衛なり!我が首が欲しい者はかかって来い!」
「小僧!中々やるじゃねえか。」
小六どのは仙石権兵衛という少年兵を倒すのに手こずっていた。
「長康!一郎!来てくれ!」
俺と長康どのは小六どのに呼ばれて、駆けつけた。見ると、大人6人掛かりでも、近づけずにいた。俺は、その姿を見て、昔稽古をした胤栄さんを思い出した。
「小六どの、無理に倒そうとはせず、捕らえましょう!」
「あぁ。」
「長康どのは右から、小六どのは左から向かってください。私は中央から行きます故。焦らず、ゆっくりと。」
俺たちは少年を徐々に、部屋の隅に追い込んだ。すると、少年が俺に向かって、飛び出す動きを見せた。俺は、咄嗟に左に避けると、すぐに槍の先を蹴り上げた。槍の刃が天井に突き刺さったが、少年は刃がなくなっても槍を振り回したが、すぐに小六どのに取り押さえられた。その後、5人掛かりで縄で縛り付けると、藤吉郎どのに差し出した。
「中々の者よ。そう居る者ではないぞ。まぁ、信長さまの元に連れて行かねばならん。」
-織田軍本陣-
「信長さま、捕虜にございます。」
「おぉ、禿鼠か。この者は。」
稲葉山城落城の後、信長の本陣の下には多くの捕虜が連れて来られた。
「城に籠っていた、仙石権兵衛と申す者にございます。」
「そうか。ところで、禿鼠よ龍興めは、逃げおったぞ。」
「いゃ〜、信長さまに龍興如きが敵うはずがありませぬ。」
「はっは!そうであるか!」
信長は高笑いした。
「よし、その者はお主に預ける。」
「信長さま、またにございますか!」
「あぁ、お主は神泉信綱の弟子を飼い慣らしているそうではないか。」
「あれとこれでは別にございます。この者は先程まで、敵であったのですぞ!」
「儂を、ここで働かせてくれ!」
少年が叫んだ。
「儂は、お主等に大切だった者を殺された。もう儂の居場所はここしかないのじゃ!」
すると、信長が
「のう、禿鼠よ、この者を飼い慣らしてみせよ。」
「。。。はっ。この禿げ鼠にお任せ下さいませ!」
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「秀吉さま、どうでございましたか。」
「一郎、飼い慣らして見せよと言われたわい。」
「そうですか。しかし、あの様に強い者が、味方に付くのは心強いですぞ。」
「あぁ。。。」
俺の主人である木下秀吉どのに新しい部下が入った。名は仙石権兵衛、武勇に優れる武士であった。
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