第3章 第六天魔王の覇業
第14話 尾張に生まれた魔王
−1567年3月−
俺は、長年世話になった信綱さんの下を離れて、1人、旅に出た。旅と言っても、大和国から尾張国までだ。この旅の目的はそう、俺が唯一この戦国時代で生き残ることが出来る可能性が高い、織田家に仕えるということだ。恥ずかしいが、俺は歴史に関してあまり知識が無いが、織田信長や武田信玄、上杉謙信、豊臣秀吉、徳川家康などの有名な武将なら知っている。そこで、一度会ったことのある、信長に仕えるのが一番良いと思った。最後に天下を統一したのが、徳川家康だということは知っているが、商人から聞く三河国(家康の本拠)の現状は良くなく、新参者を受け入れてくれそうにない。一方、信長は能力のある者は、身分を問わず召し抱えてくれるそうだ。そのため、俺は尾張に向かうことにした。
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織田信長、この男は尾張の一地方領主織田弾正忠家の当主織田信秀の次男として生まれる。信長は、父の跡を継ぐと、尾張守護代の織田大和守家、織田伊勢守家を滅ぼし、弟の織田信行をも排除して、尾張一国の支配を徐々に固めていった。その後は1560年に駿河の大名「今川義元」を討ち取り、名を全国に広めた。1565年には尾張最後の敵である犬山城の織田信清を破り、尾張統一に成功し、日本を制覇するための、覇業を進めていく。
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−尾張国小牧山城−
「信長さま、仕官したいと申す者が城に。」
「見てみようぞ。」
この時、信長はここ、小牧山城で休息を取っていた。信長は、その者の姿を見るため、城門まで見に行った。すると、そこには見たことのある男が居た。そう、上泉信綱が自分の下を訪れたときに、付き人として、付いてきた者であった。
「お主は、信綱どのの門下の者か。」
「はい。」
「信綱どのは、どうなさった。」
「師は、大和におります。私に印可を下さり、私の旅を認めてくださりました。そして、私は、信長さまの下で仕えるために、参りました。」
「お主は、何ができる。」
「私は、師より、剣術と兵法を学びました。必ずや、織田の為に役立つでしょう。」
「ならば、この者を倒してみよ。この者は織田随一の剣士よ。」
双方に木刀が渡された。すると、信長が
「待て、真剣にせよ。」
そして、俺らは真剣で勝負させられる事となった。
「では。」
「かかってこい!」
俺は、相手が飛び込むの待った。相手は俺が攻めてこないとわかると、俺の方に飛び込んできた。俺は、その瞬間に左に避け、相手の刀を取り上げた。これは、信綱さんが相手を傷つけないためによく使う技であった。すると、周りで歓声が巻き起こった。
「名は何と言う。」
「一郎です。」
「一郎、そなたは禿鼠の寄騎となれい。」
「はっ。織田のために必ずや、武功を挙げてみせましょうぞ!」
「おぉ、頼もしものよ。」
俺は、自分がまだ相手から奪った刀を持っていることに気が付き、返した。
「お主、名は。」
「亀谷左衛門じゃ。不甲斐ない。お主、中々の者よのう。」
「では。」
ところで、信長が言っていた「禿鼠」っていうのは、誰のことか分からなかったので、近くの人に聞いた。
「すいません、信長さまが言っていた『禿鼠』というのは誰のことでしょうか。」
「あぁ、そいつは、木下秀吉っていう奴だ。信長さまから偉い気に入られている。じゃが、あやつは農民の出ぞ。」
俺は正直、有名な武将ではなくてがっかりした。俺の知っている豊臣秀吉とは、多分名前が一緒なだけだ。しかし、生き残れるならば良いかと考えることにした。俺は、とうとう、織田家の木下秀吉という者の寄騎として織田家に仕えることとなった。まずは、新しい主に挨拶をしなくてはならないと思い、住民に聞くと、彼は小牧山城付近に今はいるらしいので、早速木下秀吉どのの家に向かった。着いてみると、想像はしていたものの武士の家とは思えないものだった。農民のような家で、2人の男が作業をしていた。
「木下秀吉どのはおられますか。」
「儂がそうじゃ。どなたじゃ。」
信長さまの言っていることは正しかった。彼の見た目は、明らかにネズミのような、出っ歯で、禿てもいた。
「信長さまより、秀吉どのの寄騎となれ、と申され参った、竹田一郎にございます。」
「聞いておらん。帰っていただきたい。」
「兄上。殿に登用されたということはよほどの方にございましょう。」
藤吉郎どのと、作業をしていたのは、弟のようだった。
「一郎どの、すまないが、兄がこうなので、日を改めて、来ていただきたい。」
「分かり申した。しかし、私は寝る場所がなく、困っておりまして。。。」
「そうですか。。。ならば、儂が宿の代金は払います故、そこにしばらく泊まっていただきたい。」
「かたじけない。」
そうして、俺は近くの宿にその日は泊まった。次の日、秀吉どのが信長さまに俺についての確認し、俺は呼び戻された。
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