第3話 誰も逃れられない

第3話


アレからは地獄だった。


「うっ、や、やめ………」

「ふふ、恐怖に歪むその表情良いよ♪もっと撮らせて♡」


ある日は首を締められて苦しむ様子を撮られたり………


「ほら、気持ち良い?気持ち良いよね?」

「き、気持ち良くなんか………」

「ふふ、嘘つき♡ほら、こんなにも硬くしてるじゃん♡うん、良い顔♪」


口に出すのも恥ずかしい行為も撮られた。


「はぁはぁ、もう無理だ………」


耐えられない。


こんなの、耐えられない。


こんな化け物、愛せる訳がない!


逃げてやる、こんな所から………


☆☆☆


結論から言うと、案外楽に逃げ出せた。


日本からこそ出なかったが、出来る限り遠くへと逃げて行った。


逃げた先では、最初は苦痛な事も多かった。


でも、あの地獄よりは1000%マシだった。


そして、俺は………


「お父さん、遊んで!」

「おう、良いぞ!何して遊ぶ?」

「ふふ、ありがとうございます裕司さん。」


────ちゃんとした、幸せを掴んでいた。


こんな俺を好きになってくれた上に、結婚してくれた妻の木村きむら みやびさん(今は俺と同じ名字)と、娘の花凛かりんが、今の俺にはある。


未だにあの化け物のせいで、写真は苦手だ。


そのせいで、一緒に写真も撮れやしない。


それでも、幸せに行けていける。


俺はそう願いを込め、日々を彼女達と過ごしていった。


☆☆☆


桃side


「────と、思っていた君の姿はお笑い物ですね。」


巫山戯ながら、私はそう呟く。


いやはや、酷い旦那様だよ裕司君。


妻を置いてけぼりにするだけでなく、愛人の所へ入り浸った上に、子供まで作っちゃうだなんて。


「それはそれで良い写真が撮れちゃうし、許してあげてるんだけどね♪」


うんうん、この表情も良いね。


彼は私以外にはこんな表情を向けるんだね。


私にも向けて欲しかったなぁ………


まぁ、今は良いか。


「お母さん、まだお父さんに会っちゃ駄目なの?」

「そうよ、夏鈴かりん。大丈夫、必ず一緒に暮らせる様になるからね♪」

「うん♪それまでちゃんと我慢するね♪」

「イイコイイコ♪ちゃんと守れたら、お父さんに会った時に、しっかりと甘やかしてもらおうね♪」


はぁ、早くその時が来ないかなぁ?


「あっ、お母さん!お願いがあるの。」

「何かしら、夏鈴?」

「私、弟か妹が欲しい!」

「あらあら、じゃあ、お父さんに頑張ってもらわないとね♪」


じゃあ、今夜辺り、また忍び込まないとね。


そろそろ、隠しカメラの点検もしないとだし、一緒にやっちゃおうか。


「再会する時が楽しみだね、旦那様。」


その時は、どんな顔を魅せてくれるのかな、裕司君?


続く

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その被写体は逃げられない クロスディアⅡ @crossdia

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