第2話 悪魔は一度掴んだ手を離さない

第2話


「うぅ………」


気が付いたら、知ってる天井が上にあった。


いつの間にか、気を失っていた様だ。


「うぇ………」


気持ち悪い。


最悪の悪夢を見せられた気分だ。


「あれは………」


心底嫌だが、あのDVDを探してみる。


すると………


「あれ、無い?」


じゃあ、あれは夢?


いや、きっとそうだ。


あんなの、現実な訳がないんだ!


「ったく、変な夢を見せやがって………」


そう言い聞かせながら、俺はいつも通りに過ごした。


────過ごそうとした。


だが、現実は何時だって非情だという事を直ぐに思い知らされる事になる事を………


────俺は知らなかったし、気が付こうともしなかった。


☆☆☆


ほんの少し、怖かった。


あの光景がもし現実だったらという不安が、俺を蝕んでいた。


だから、久し振りに一人で学校へと登校した。


すると、何故か教室に入った瞬間に囲まれて………


「おい、お前男だよ!」

「井澤さんと幸せにな!」

「う、羨ましい………リア充爆発しろ!」

「内堀くん、格好良すぎて見直したよ!」

「潔く負けを認めるわ。だから、桃ちゃんを泣かせない様にね?」


?????


わ、訳が解らん。


何で、俺はこんなに囲まれてるんだ?


そして、何で励まされたり、羨ましがれたりしてるんだ?


「ほら、皆退いてどいて!」

「あ、ありがとう………」

「ふふ、お礼よりも早く桃ちゃんの所へ行ってあげて?」

「お、おう………」


マジで、何が起きて………


促されて桃の所へ向かうと、泣き腫らした様な顔をした桃が………


「ありがとう、裕司君!!」

「へっ!?」


何!?


いや、マジで何!?


一体、何が………


「こんな穢された私でも愛してくれるって言ってくれてありがとう!私も、裕司君の事を愛してる!愛してるから!!」


え、そんな事は言った覚えが………


ていうか、穢される?


ま、まさか………


「いやぁ、バカだよなあの先輩………」

「無理矢理に襲って、動画撮って脅すのが成立するのはエロ同人誌だけだろうに………」

「実際、井澤さんが警察に言ったせいでお縄なんだろう?」

「あの先輩、酷い噂しか無かったし、残当じゃね?」

「でも、よく来れたよね、井澤さん………」

「そりゃ、そんな目に合った自分さえも受け入れてくれるスパダリ彼氏が居るからだろ、察しろよ。」

「リア充もヤリチンも滅びるべき悪だ」


へぇ、アイツ捕まった…………………えっ!?


じゃ、じゃあ、まさか………


アレは、夢じゃなくて………


「ふふ、大丈夫だよ、裕司君?」

「も、桃………」

「皆にはちゃんと本当の事を言っただけ。」


いや、俺は………


「だって、そうでしょう?私の事を大好きな裕司君は、私が大好きで愛してる裕司君は、とっても撮りたくなる様な顔を魅せてくれる裕司君は、こんな些事で私を捨てないし、私から逃げないもんね♪」

「お、お前、狂ってる………」

「ふふ、君のせいだよ?だから、責任取ってよね♪それに、ほらスマイル、スマイル♪そんな顔をしていると、皆に疑われるよ?」


「だって私達、どんな困難も乗り越える学園一のカップルなんだよ?」と、微笑みながら彼女は言った。


────俺にはそれが死刑宣告に聞こえた。


続く

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