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「もしもし
犬養がスマホを耳に当てると、聞き馴染のある声が聞こえて来た。
万引き犯を警察に引き渡した直後だ。犯人を乗せたパトカーが大通りを走り去っていくのを見送りながら、犬養はあごにシワを作った。
「ヒマだと思うかよ。商店の修繕作業中に万引き野郎を見つけて鬼ごっこしてたとこだぜ。そっちが投げて来た仕事じゃんか」
「そうだけど、万引き犯と鬼ごっこは頼んだ覚えがないな」
「言われた仕事ばっかやってんじゃおもしろくねぇだろ、
電話の向こうで便利屋所長が笑っている。
「ちょっと予定が変わった。いまから中央駅に向かってくれ」
「駅に?」
商店へ戻ろうとしていた足を止める。
片側三車線、街の主要道路である大通りを車やバスが行きかう。昼前にも関わらず流れが途切れることはない。街路樹が並んだ歩道にも通行人の姿がある。
大通り沿いに建ち並ぶビルの谷間を抜けて行けば、十分ほどで中央駅に到着する。
「商店の修繕には他の所員を向かわせている。お前はそのまま駅に行ってオレと合流だ」
「了解だけど、急だな」
すると牛尾はすがりついてくるような口調で「だろ? そうだろ?」と繰り返し、
「母さん……前所長からついさっき連絡があったんだ」
「
犬養は目を見張りながら言った。
ため息のなかに笑いを織り交ぜて牛尾は呟いた。
「昼の電車で依頼人がやって来るぞ。オレたちでお出迎えだ、誠」
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