第97話
昨日アンバーに提案された、収納スキルを持っていそうな魔物を調べるためにギルドにやって来た。
二日に亘る聞き取り調査と資料からの情報収集で、それらしい一種類の魔物にあたりを付けた。
魔物の呼び名は"スロー・モンキー"と言う。
スロー・モンキーは遅いのでは無く、投げる方である。
お腹の所に袋を持ち、そこに石を入れていて、石を相手に投げつけるのだ。
見た目大きくも無い袋なのに何倍もの石を入れられることから、収納スキルを持っていると言われているらしい。
生息域は広く、帝国、王国、連合の何処でも見つかるらしい。
基本は森の中で、川が流れている所を好むらしい。
この街の近くで目撃例があるのは、ここから東南東の森の中の川辺らしい。
とまあ、ここまで調べたんだが、じっさいのところは見つけて斃してみないと目的のスキルを持ってるかは分からない。
俺みたいな特殊な事ができるヤツなんて他にいないだろうから。
何も当てが無いより良い程度に考えておくのが良さそうだ。
侯爵の言ってた件が、そっち方向だと都合が良いんだが、それは運任せかな?
調べ物で二日が潰れ、残り二日が余っていた。
そこで思いついたのは、この街を歩いて見ることだった。
出たり入ったりを繰り返していたので、この街のことで分かっていないことの方が多いのだ。
そんな感じで、何か面白い物が見つかったり、美味しい物を食べれたりしないかと期待しながら街巡りを始めたのだ。
屋台の軽食を歩きながら食べつつ、ウロウロと街を巡る。
なかなか美味い屋台も見つけたし、知らなかった雑貨屋も発見した。
雑貨屋では、旅で使えそうな小物が充実してて色々と購入した。
他にも古くなってきていた荷背負い用の袋を皮製に交換しようと思ってたのだが、良さそうな皮製品の店も何軒か見つけた。
これは割りと高い買い物になるので、別の店と比較して検討する予定だ。
鍛冶屋も見つけていて、槍の整備をお願いすることにしている。
鍛冶屋は割と沢山あるのだが、どこが良いのか分からなかったのでギルドでドワーフ族のやってる鍛冶屋を教えてもらったのだ。
二軒あるそうで、どっちが良いかは自分で決めろと言われた。
取り敢えず両方に顔を出して、ドワーフ族のドモルガーを知っているか?と聞いてみた。
二軒目の鍛冶屋はドモルガーのオヤっさんを知っていたので、整備はこっちに頼んどいた。
そんな感じで色々勝手に楽しんでいたんだが、一番の発見は魔道具屋だった。
魔道具って誰が作ってるのか知らなかったんだが、どうやら錬金術師スキル持ちの人間が作ってるらしいのだ。
俺も持ってるが、俺の持ってる錬金術師スキルには魔道具を作るための知識は無かった。
それっておかしいと思わないか?
同じスキルなのに、できたりできなかったり差があるって変だろう?
なので、色々聞いてみたのだが、どうやら錬金術師スキルには何種類かの方法でなれるのでは無いかと考えた。
最終的に錬金術師スキルになるのだが、調薬スキルからなるのと別のスキルからなるのとで、同じスキル名なのにできることが違うと思ったのだ。
と言うのも、その魔道具屋で魔道具を作っている人物は、元は鍛冶屋で働いていたらしいのだ。
その人の最初のスキルが何かまでは調べようが無かったが、そんな経緯があるならと考えた俺なりの予測である。
他にも色々聞き出したのだが、この店は金属製の魔道具を中心に扱っていて、別の場所には布製の魔道具を中心に扱ってる店もあるらしい。
明日はそっちの店にも行って、色々聞こうと思ってる。
他にも、別の所では違う素材でできた魔道具を販売している所もあると聞いた。
つまり、俺の持つ錬金術師スキルは、同一名で色々なバージョンが存在する可能性が高い。
これは何となく面白そうではないだろうか?
様々な方向から錬金術師スキルに至った場合、何か特別なスキルとかになりそうな、そんな期待感がある。
ちょっと色々聞いて回って、情報を集めようと決意したのだった。
そんなこんなで時間を潰しつつ街での滞在を楽しんでいたら、侯爵との約束の日になっていた。
宿には、明日の朝に侯爵邸に来るようにと連絡が来たので、侯爵が言っていた情報が集まったのだろう。
となれば、俺は問題の場所に移動しなければならない可能性がある。
できる限り今日中に準備をしておかなければ、急ぎだった場合に対処が遅れることになりそうだ。
昨日までに集めた街の情報で、必要になりそうな物を調達するように動く予定を立てたのだった。
まずは整備を頼んでいた槍の回収、採取用の予備のナイフと予備武器として短剣の購入、次に荷背負い用の皮製の袋を購入して中身の入れ替え、不足しそうな食料の調達に調味料の追加。
やることは多いから、急がないとな!
バタバタと買い物をしていると、所々でアンバーの要望が入る。
『肉はいっぱい買っておいて』とか『辛い調味料は少なくて良いよ』とか『寝心地の良い毛布が欲しい』とか非常に自分の欲に忠実な要望だった。
まあ可愛いので許すが、急いでいる今『あそこの肉串美味しかったから、また食べたい』や『あの屋台良い匂いがしてる、寄ってみよう』は流石に許可できなかったよ。
目星を付けていたとはいえ、広い街の中を動き回ったので時間は掛かったし、疲れもした。
特にアンバーの食い意地には参ったが、基本的に必要な物は全て揃えられたと思う。
腹も減ってたし宿の夕食は多目にお願いし、女将に『明日から依頼で他所に行くかも知れない」と言っておいた。
さて、あとは明日になって侯爵の話を聞くのを待つのみだな。
俺にできる事なら良いのだけど、どうなることか?
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