第91話
『ビュルギャよりスキルが贈られました。特殊スキル【嵐の中の静けさ】【波の乙女の
・・・間に合わなかった・・・スキルが【ストッカー】に贈られてしまったか。
はぁ、どうするんだこれ?
もう初っ端から特殊スキルだぞ、それも二つも。
その上に聞いたことも無い称号って何だよ?
ああー、鑑定できる人間と会うのが怖い、怖い、怖い!
『良いなぁ。称号って、どうやって渡すのぉ?』
アンバーはご両親から聞いてないの?
『まだ聞いてないのぉ』
じゃあ教えてあげるわ。こうやって、こうして、ここで何て称号を与えるか決めるの。でね、最後にこうすれば良いわ。
『そっかぁ、こうだね!』
俺がビュルギャより送られたスキルや称号に悩んでいる間に『アンバーより称号【アンバーの友】が贈られました』と更に追加で悩みの種が降って来た。
・・・もういい、どうにでもなれっ!
もう知らないぞ!
・・・何で誰も俺の言う事を聞こうとしないんだ?
俺が困るって考えは無いのか?
はぁ、無いんだろうな・・・人間に配慮なんて・・・
衝撃的なことばかりで、思考が麻痺しかけている。
こんな予定では無かった!なんて言ってられない。
俺は他にも聞いておかないといけないことがあったんだ!
面倒事は後で考えることにして棚上げし、島に来る前から疑問に思ってたことを確認する事にした。
普通の人間が眷属に強制的に変身の魔法を掛けることができるのですか?
「・・・普通は不可能ですよ。基本的な能力に差があり過ぎますから。でも、〈神の宝具〉があれば可能でしょう」
〈神の宝具〉って何でしょうか?
「神が作った道具のことです。極稀に褒美として人間に与えることがあるのです」
眷属を強制的に変身させられる〈神の宝具〉なんてあるんですか?
「分かりません。神は一人ではありませんから、全てを知ることはできません。しかし・・・」
しかし?何です?
「一度、遠い昔に聞いたことがあります。悪戯好きの神の一柱が、他の神に変身の魔法を掛けたことがあると。その神なら〈変身の神の宝具〉を作れるかもしれません」
その神が〈神の宝具〉を渡した可能性はあるのですか?
「流石に考え辛いことですね。昔に人に渡った宝具が流れ流れて、あの者達の手に渡ったと考えるほうが自然ですよ」
なるほど。
ならば、やはりその者達をあなたに近付けさせないことが最良かもしれません。
俺が聞きたいことは聞けた。
これからやっておくことも想定できた。
ならば、後は帰るだけだろう。
帰るためにアンバーを呼ぼうと思ったのだが、話相手ができたアンバーは彼女との話に夢中になっていた。
・・・こりゃあ、帰ろうって言っても帰りそうにないなぁ。
結局、アンバーの楽しそうな彼女との会話を止める決断ができず時間だけが過ぎてしまい、空が白み始めてしまった。
これでは、アンバーに空を翔けてもらう訳にも行かない。
朝まで止められなかった俺の責任だろう。
俺は、もう一日ここで過ごす覚悟を決めたのだが、彼女は違った。
「話し過ぎましたね、朝になってしまいました。今から戻るには問題もあるでしょう。私が街に送って差し上げますよ」
その言葉に、俺の中で浮かんだ疑問をぶつけてみた。
目立ちたく無いのですが、それでも可能なのでしょうか?
「ええ、問題ありません。他の人からは見えませんよ」
いったいどうやって?
「説明できるものでもありません。信用してくださいね」
これは何を言っても説明はしてくれなさそうだ。
彼女の力を信用するしか無さそうだと心を決める。
よろしくお願いします。
ですが、直接街では無くて街の外にお願いします。
「ああ、なるほど。街の中に突然人が現れるのは混乱を招きそうです。分かりましたよ」
そう言った彼女は何やら手を振って、一言「転移」と呟いたのだった。
そして次の瞬間には、俺は何度か野営をした湖の湖岸に立っていたのだった。
何か、色々と言いたいこともあるけど、もう疲れた。
取り敢えず、彼女と湖を救えたことだけを喜んでおこう。
俺に起きたことは・・・もう考えたくない。
それよりも重要なのは、新神教だ!
何が目的なのか知らないが眷族に手を出し、湖の周辺に混乱を巻き起こしたことに責任を取らせる必要がある。
俺はポケットの中のシンボルを握り締める。
それに彼女から聞いた〈神の宝具〉のこともある。
あれは危険だ!
誰にでも変身できるとすれば、色々な面で脅威になる。
単純に考えても、王や帝王を暗殺して成り代わるなんて馬鹿げたことでも可能になってしまう。
とても一宗教が持っていて良い物では無い!
だが、それをどう説明すれば良いのか?
難しい問題だ。
まずは、ゆっくりしたい。
一度落ちついて頭の中身を整理してから、侯爵家に話さなければならない内容を考えたい。
少なくとも、新神教を相手にするなら侯爵家の助けが必要だからだ。
まずは街に戻って、動物の憩い亭に行こう。
話はそれからだな!
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