第55話

・・・えっ!ええっ!


・・・神獣トリエグルとベイグルの子供?


・・・神獣?


神獣って、神獣だよな?

間違ってないよな?

神の使いって言われてる、神獣だよな?

ってか、それ以外に神獣を知らないよっ!


何で、人に捕まってんだよっ!

子供って、親がいるって事だろ!

つまり子供を攫ったヤツがいるって事で、探してんじゃないか?子供・・・


うわー、ヤバ過ぎる問題が湧いて出たぞ。

どうすりゃあ良いんだ?


・・・ここで放してしまうか?

・・・でも、生きていけるのか?子供だぞ。

・・・意思疎通でもできれば、方法も考えられるんだが・・・


どうするにしても、寝ているのを放置はできねぇな。

取敢えず連れて行こう。

あとは起きてから考えるぞ!


神獣の子供に何かあれば最悪な展開になりそうなので、行きよりも速度を落として安全第一に二の村まで戻る。

俺の過剰なまでの気遣いは功を奏したのか、二の村に到着するまで眠ったままだった。


森の切れる手前、木々の間から二の村が見えたことで移動を徒歩に切り替える。

てくてくと歩いて森を出ようとした時、檻が揺れるのを感じた。

視線を向ければ、神獣の子供と目が合う。


「みゃー『誰?』」

『意思のある高位の魔物を感知しました。魔法言語スキルを有効化しました』


何?何?何?何?何っ?何が起きたんだーーー!

えっ!ええっ!『誰?』何っ!

意思のある高位の魔物って、何っ!

どうなってんだーー!


心の中で叫びつつ、何が何だか分からずにオロオロするばかり。


「みゃう『大丈夫?』」


・・・やっぱり言葉が分かる・・・のか?

魔法言語スキルの効果?

元はハズレスキルだったよな?


いやいや、落ち着け。

神獣の子供を放置はダメだ。


「俺の言葉が分かるか?」

「みーみぃー『分かる、凄い!』」

あぁー、やっぱり通じてる。

高位の魔物って確定じゃん!

つまり、それって神獣の子供って事だろ、どうすんだよ!

取敢えず質問して、状況を把握しないと!


「少し聞きたい事がある。どうしてコレに入ってるんだ?」

『コレに入ってれば、良い所に連れて行ってあげるって言ってたよ』

・・・誰だ、神獣の子供を騙したヤツは!

何で、その後始末を俺がする事になってんだーー!


「お父さんやお母さんは何処にいるんだ?」

『ずっと会ってないから、分かんない。いつも一人で遊んでたの』

・・・神獣って放任?放置?それとも育児放棄か?


「何処から来たのか憶えてるか?」

『う~ん~、あっち』

前足で指してるのは・・・南?

帝国の国内か?

でも、神獣の事なんて書いてある本無かったぞ。


・・・まさか!ヘソ?

そんな馬鹿な!ありえない!

自分で思いついて、自分で否定する。


あそこは誰も帰って来られない魔境のはず。

でも、そこ以外に神獣がいそうな場所が思い当たらない。

何か思考が支離滅裂になってきてる。


「そこって人間はいなかったろ?何処で会ったんだ?」

『父も母もいなくて、ウロウロしてたら面白そうな所見つけて、行ったら、そこで会った』

さっぱり分からん。

分かったのは、移動した事、そこで人に会った事ぐらいか。


「これからどうしたい?帰りたいか?それとも一人で何処かに行くか?」

『良い所に行きたい』

ああー、そう言われて着いて来たんだったな。

でも、良い所って・・・何処だよ!


「その人は死んじゃったみたいでさ。何処に連れて行くつもりだったか分かんないんだ」

『えー、死んじゃったの。じゃあ、代わりに良い所に連れて行ってよ』

だから分からんつーの。

どうするかなー。


「・・・俺と旅をしてみるか?」

『旅って何?』

そこからか。


「旅ってのは、色んな所に行く事。人の一杯いる所や、沢山花が咲いてる所や、高い山の上や、砂が一杯ある所や、雪や氷がある所とか見たことの無い物を見たり知ったりできるぞ」

『・・・それ、面白そう!見たことの無い物見て見たい!』

そうか、そうだよ子供だったよな。

好奇心が旺盛だわな。


「分かった。じゃあ今から俺の相棒だな」

となると、呼び名がないと面倒臭いなぁ。

何か・・・綺麗な蜂蜜色の目をしてるんだよな、確かこんな色の宝石があったような・・・アンバーだったか?

いや、もっと赤っぽかったかも・・・まあ良いか、俺が分かってれば良いだけだしな。

「アンバーって名前で呼ぼうと思うけど良いかな?」

『名前って何?』

そうか、それも分からないか。


「例えば沢山人がいたら、みんな人だろ。どの人の事か分からなくなるよな。だからそれぞれに名前をつけて区別できるようにするんだ。ちなみに俺はエドガーって名前がある」

『エドガーが名前・・・名前欲しい!』

「決まりだな、君の名前はアンバーだよ」



何だか、一気に疲れたような気がするが、何か凄い相棒ができたぞ。

神獣だもんな・・・

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