第49話

結局のところ、サレスティアさんの言いたいのは「俺が追われる事は無い」って事だ。


ついでに「辺境伯様は、君に「領内で襲われたら返り討ちにしても良い」と言われてたらしいよ」だって。


いやいや、駆け出しの新人冒険者にソレは無理ってもんでしょうが。

何か評価基準がおかしくないか?


俺は、もう色々言いたい事をあきらめて棚上げする事にした。

まあ、追っ手に神経磨り減らすよりは断然良いから、これで納得しとこう。


「ところで、ここまでに何か売れる物は採って来てないの?」

彼女に言われるまでも無く、各種魔物の買取部位は持ってきてた。


「アサルトラビットの角と魔物石、ブッシュウルフの爪と牙と魔物石、狼の牙、蛇、それぞれの皮。結構あるわね。街道沿いに来たのに、こんなに狩ったの?」

当然の質問に、ゴルーブでのロックベアーの話をする。


「そんな事があったのね!それは街道でも魔物に出会う可能性が高い訳だわ。ちょっとごめんなさい、その情報を知らせてくるわ」

そう断って、彼女は買取素材を持って受け付けに向かった。



暫く待たされて、戻って来た彼女から布袋に入った買取金を渡された。

「中身、多くないか?」

本来なら無いはずの金色の光を見て聞く。


「さっきの情報料よ。商隊が高値で買ってくれたの」ってウィインクされる。

内心でドキッとしながら、やり手だなと感心した事を伝えた。


「で、何時までここに滞在する予定?」

その問いに、食糧や消耗品の補充ができたら出発する予定だと告げておいた。


「じゃあ、出発前にもう一度顔を出して。渡す物があるから、絶対よ!」と念を押された。




ギルドを出て、別れ際に聞いたギルド公認の食料品店を目指す。

買うのは干し肉、干し野菜、干しパンという安定の三点セットだ。


買う物を考えながら歩いてたけど、背中に嫌な視線を感じるなぁ。

不穏な感じもするし・・・不味いかも?


「おいっ!そこの新人!」

あっ!当たったよ、嫌なんだけどな・・・


立ち止まって振り返ると、如何にも「俺達何も考えてません!」て感じの三人組が立っていた。


「お前、新人だろっ!」

「新人にしちゃあ、立派過ぎる槍を持ってるよなぁ」

「お前が持ってるより、俺らの方が有効に使えるからよぉ。それ俺らにくれやぁ」


はっ!やっぱり馬鹿だった。

槍聖スキルのある俺より有効に使えるって、あり得んし!


「やるって、意味分からんわっ!馬鹿か?だいたい、お前らが有効に使えるわけ無いだろ!」

すっぱり切り捨ててやったぜ!


「この新人の星無しがっ!星二つの俺らに逆らいやがって!」

「痛い目みねぇと分かんねぇみてぇだな!」

「大人しく渡しゃぁ良いんだよ!」

三人が三者とも武器に手を掛ける。


トリニードの時はデズットさんと知り合いだったから関係無かったけど、これが世に聞く新人イジメ?タカリ?かな?

まあ、どっちにしても武器に手を掛けた以上正当防衛が成立。

俺が反撃しても問題無し!


あっ!冒険者らしき人がギルドに走ってったぞ。

誰か呼びに行ってくれたのかな?

まあ来るまでに終わるだろうけど。


そういえば、弱点看破スキルって人にも使えるんだろうか?

試してみるかな?


ああー見えるわ・・・弱点だらけ。

どういう基準なんだろ?この弱点って・・・


三人を無視して考えてたら待ちきれなかったみたい。

「すかしてんじゃねぇぞ!」「くらえっ!」「後悔しても遅いぞっ!」って三人同時に仕掛けてきた。


槍は穂先にカバーを付けてるとはいえ、流石に危ないだろうな。

って事で、クルリっと手元で廻して石突で突く。

俗に言う、三連突きってやつだね。

勿論、弱点看破で見えた弱点狙い!


三人とも剣だったから、狙ったのは剣を持ってる手首を突く。

槍の扱いに慣れてきたのかな?良い感じに早い突きを出せたと思う。

ちょっとだけ、自信!


三人はって言うと、「ぎゃぁー!」とか「ぐおぉー!」とか「いでぇー!」って手首を押さえて騒いでる。

当たりが良かったみたいだし、もしかしたら折れてるかも?

まあ、どうでもいいや!

悪いのアイツらだし!


あっ!サレスティアさんが来た。


*** *** *** *** *** ***


リザベスからの手紙を持って来たエドガー君をギルドから送り出してから考えた。

リザベスが冗談や嘘なんか吐かないと思うけど・・・後天的にスキルを得たのが一ヶ月未満ってあり得るのかしら?

そのせいで領主に追われたみたいだけど、追われるって事は嘘じゃないんだろうなぁ。

私は、さっきまで話していた彼を思い浮かべる。


まあ、嘘でも本当でもどっちでも良いわ。

リザベスに頼まれたんだから、協力してあげるわ。


「サレスティアさん!大変です!」

ギルドに飛び込んで来たのは、去年冒険者になったばかりの新人君。

名前は?何だったかしら?


「さっきサレスティアさんが話しててた新人が、いつものヤツらに絡まれてます!」

さっき話してたってエドガー君じゃない?

いつものヤツら?って、あの問題児なの!

不味いわ、よりによってエドガー君に絡むなんて!

リザベスが知ったら、嫌味言われるの私なのよ!


急いでギルドを出ると、それほど離れてない場所に人だかりができている。

人だかりに走り寄り「ギルドの者です!通して下さい!」と人を掻き分ける。

やっと、人だかりの向こうが見えた時には、いつものヤツら三人が剣を振りかぶってエドガー君に襲い掛かるところだった。


「あっ!エドガー危ない!」

思わず呼び捨てで叫んだけど私自身が呼び捨てにしたのに気付いてなかった。


エドガー君は特に慌てるでもなく、手元でクルリって槍を廻して穂先じゃ無い方で構えたと思ったら、素早く突きを繰り出していた。

『速い!えっ!嘘っ!私が見切れないなんてっ!』

エドガー君の槍捌きが速過ぎて、私混乱してるわ。

ホント、一瞬で勝負がついてるしっ!


えっ!どういうことなの?

後天的に槍系のスキルが生えたって事?

でも、それだと領主に追われてる意味が分からないわ!

一体全体何がどうなってるのよ!


「あっ!サレスティアさん!」とエドガー君が私に気付いたみたい。


*** *** *** *** *** ***


人だかりを抜け出てきたサレスティアさんに質問!

「あのー、これって俺は何か罪になったりします?」

たぶん大丈夫だけど、確認は大事!


「私が見てたから、問題無いわ。ただ切っ掛けは分からないから、話は聞かせてっ!」

何か腕を掴まれて逃げられないし、サレスティアさんの圧が凄いんだけど・・・



あれっ!何で俺引き摺られてるの?

えっ!ちょっと待って!

サレスティアさ~ん!

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